ユーミンの曲を紹介する①: 「翳りゆく部屋」

「翳りゆく部屋」(1976)

パイプオルガンのイントロから始まり、静かながらも力強い曲調が好きな曲です。「輝きはもどらない 私が今死んでも」と、歌詞もインパクトがあります。

でもやはりこの曲の特筆すべき点は、「時間の流れの描写」だと思います。

窓辺に置いた椅子にもたれ あなたは夕陽見てた
ふりむけばドアの隙間から 宵闇が しのび込む
ランプを灯せば街は沈み 窓には部屋が映る

歌詞が進むとともに、夕陽が沈んで、やがて夜へ変わっていく様子が描かれていきます。

疲れたり気持ちが沈んだ日の夕方。家に帰り、服も着替えず明かりもつけずにベッドに倒れていると、夕陽で明るかった部屋は気づけば暗くなり、外のほうが明るくなっているのに気づくことがよくあります。

この曲を聴くたびに、そういう記憶が苦しかった気持ちと共によみがえってきます。

そして「なげやりな別れの気配を横顔に漂わせ」た「あなた」との関係の終わりを暗示しているようでもあります。プツンと切れるのではなく、「日没」という誰もが知る結末にじわじわ向かっていく…

「翳りゆく部屋」は、関係の終わりとその時の心情を、夕暮れの風景に託した名曲だと思います。


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