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介護現場に彩りを。毎日の装いに変化を。TOKYO STARTUP GATEWAY2019挑戦時から応援してくださっている介護施設長・渡邊さんのcarewillに寄せる期待とは

TOKYO STARTUP GATEWAY2019(TSG2019)にcarewill代表の笈沼が挑戦している頃から応援してくださっている渡邊さん。介護ケア業界にお勤めで、現場目線でのフィードバックがとても的確です。そんな渡邊さんのcarewillに対する気づきや期待についてお話を伺いました。

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渡邊珠代氏
介護付有料老人ホームに勤務。自身の祖母の入院を通し、関わりが人の症状の進行を遅らせるのではないか、という課題感を持ち、福祉業界へ。施設に入居していても選択肢をなるべく減らさず、楽しく過ごしてもらうことをモットーに介護・介助を行っている。carewillとの出会いは2年前、TSG2019に挑戦する笈沼の同級生の紹介から。以降、多くのサンプルに対するフィードバックや笈沼との意見交換にご協力いただいている。

carewillの想いや代表 笈沼の原体験に共感

ーー最初に笈沼さんと会ったのは2年前、TSG2019の選考が進行していた時期ですね。当時、ケア衣料についての笈沼の思いを聞かれて、どんな感想を持たれましたか。

渡邊さん:笈沼さんのお父さんの介護の経験を話を聞いて、私もまさしく同じ思いで、共感しました。最初はお食事用介助エプロンの話をしていまして、私たちも介護職員として、エプロンをすることで、ご本人も「ここまできてしまったか」というショックを感じていらっしゃる様子を介助中に感じることがあります。私自身の家族に対する介護の経験、介護の現場での仕事での経験、双方の背景、立場からも笈沼さんに共感をしました。

ーー渡邊さんはどうして介護の仕事に携わろうと思われたのですか。
渡邊さん:20代前半の頃に、自分の祖母が認知症になりました。当時は自宅での介護が難しく、病院に入院して笈沼さんの原体験に出てくるような「つなぎの服」を着せられていました。いわゆる身体拘束ですね。

入院後、どんどん症状が進行してしまって、祖母のことが大好きだったので、もっと違う関わりを持てば、認知症の進行を遅くすることができるのではないか、どうしたらいいのかしら、ということをずっと考えていましたし、当時本をたくさん読みました。そんな悲しい原体験がスタートです。自分の身内や友人知人に、自分の仕事を通じた経験や知見でお役に立てるところがでてくるといいなと思い福祉の現場を選びました。

また、もともと人を楽しませたり、驚かせるのがすごく好きな性格なのですね。この性格が人の役に立てるんじゃないかな、という思いもありました。ご本人も、ご家族の方もサポートさせていただくのが介護現場の職員の仕事だと考えて、日頃の業務に取り組んでいます。


ーー渡邊さんは今は施設長としてお勤めでいらっしゃいます。施設には多くのスタッフの方、入居されている方、そのご家族など、多数の方とコミュニケーションを取り、チームでお仕事をされておられます。チームみんながHAPPYでいられるために心がけていることはありますか。
渡邊さん:どこに施設に異動しても言っていますが、とにかく入居者の方に楽しく過ごしていただくことを大切にしてほしいと思っています。職員も楽しく過ごしてもらえれば、人間関係をうまくいくと信じています。「とにかく楽しく!」がモットーです。


入居者の方の生活に彩りを、渡邊さんのこだわり


ーーこれまでのお仕事の中で、ケア衣料について考えたこと、いわゆるケア衣料を使用しながら「もっとこうなればいいな」と感じたことなどがありましたでしょうか。
渡邊さん:更衣介助の中で、着せにくいもの、素材や伸縮性など要因は様々ですが、介助の際にすごく神経を使っていました。一般に販売されているお召し物を入居者の方はお持ちになられますが、介護側としてはそれによる苦労が多かったりします。麻痺をお持ちの方の更衣介助の際に、お持ちいただいた際にはジャストサイズだったものでも、時間が経つにつれ、洗濯乾燥で縮んでしまい、どう着せて差し上げるか苦労することがあります。

それに対し、先日見せていただいたcarewillのサンプルは、ゆったりしていて、伸縮性のある素材なのでいいなと思いました。伸びる素材が介護現場の方にとっては介助しやすいですね。また、こちらが着せやすい、ご本人に負担の少ないお洋服を選んでしまうと、着られる服が限られてきてしまい、気の毒だなと思うことも多々ありました。ご家族の方に、お召し物のリクエストは随時お伝えしますので、また新しいものを購入してきてくださいます。

しかし、もともとおしゃれなご本人が、施設にも色々なお召し物をお持ちいただく中で、ずっと同じものを着ていただかないといけないのは、介護する側にも「もう少しどうにかできないかな」という気持ちになるのです。

ですので、私が担当させていただく方は、小物を使って毎日何かしらのアクセントや変化を出すようにしていました。例えば、女性の方はスカーフをお持ちになっていれば、今日はキャビンアテンダント風、と首に巻かせていただいたり、頭に巻いてヘッドアクセとして使ったりします。


ーーご本人はとても嬉しいですね!同じように小物使いで入居者の方のおしゃれに工夫をされている職員の方は、他にもいらっしゃいましたか。
渡邊さん:お召し物を通して、先ほどのように小物でアクセントや変化をつけて差し上げると、ご本人にも笑顔がみえるんですよね。夜勤明けの起床介助の際に、今日はこれを着ましょうね、とお声がけをします。私は着せやすい服に限定せずになるべく色々な服をお召しいただいていましたが、それにプラスして「今日はこの小物を使ってこんなファッションにしましょう!」とご提案して介助していました。そこまでやっているのは私だけでした。

ただ、同じ思いをお持ちの職員の方はいらっしゃるので、今日はこんな小物を使ってみましたよ、という事例の共有や、マネジメント側になってからは、職員に対してなるべく毎日違うお召し物を着させてあげてくださいね、と指示を出していましたので、職員の中には対応してくれる方もいます。


ーー小物使いはおしゃれ上級者が楽しむイメージです。ご本人もおしゃれを楽しめて嬉しい、渡邊さんみたいに楽しんで選んでくださる方がそばにいてくださることって素敵ですね。
渡邊さん:入居者の方は、意外と首元が冷えやすいんですよね。特に夏場は冷房が室内で効いています。じっと座ったりされていると冷えてくるので、肩の周りは冷やさないほうがいいので首元を巻いて差し上げました。

私自身も結構楽しんでやっています。介護職員の方は業務も多いですし、時間も限られていますので、遊び心やこうして差し上げたいと考える部分が後回しになり、飛んでしまいがちです。ですので、私たち施設管理者は、職員の方々に、そういう部分にも気づいて、自分も楽しみながら入居者の方のためにプラスαの遊び心や、日々の変化を取り入れていただくような仕組み、マネジメントを行っています。

今、勤務先で進めているのが「入居者の方の願いを叶えるプロジェクト」です。例えばマニキュアを塗って装う楽しみを味わっていただくなど、ご本人が「何をやりたいか」をお伺いして、施設内でできる企画をします。「旅行に行きたい」方にはオンラインの画像、ストリートビューを使ってまるでその場所にいる気分を味わっていただいたり、「おいしいものを食べたい」とおっしゃる方には、ネットでお取り寄せをしてみましょうか、というご提案をしたりなどですね。スタッフに楽しんでお仕事をしてもらえるように、入居者の方にも楽しんでワクワクしていただけるようにサポートしながら企画を考えています。


ーー施設長自ら企画をされるのですね。びっくりです。
渡邊さん:もともと、サプライズやワクワクする企画を考えるのが大好きなんです。以前いた施設でも、デイサービスでは色々なことを提案してやっていました。例えば「変身」シリーズで、ヘアカットとともに、私の手持ちのアクセサリーを全て持ち寄り、施設内で写真撮影をしていました。

女優ライトも買いたかったんです、ライトをあててメイクができると気分が上がりますからね。でも、予算の都合で女優ライトの手配はできませんでした。今ならオンライン会議用にライトを購入して、撮影のときにも使えるかもしれないですね。


ーーとにかく人と接し、人の心を読み取り、寄り添うお仕事ぶりですね。渡邊さんを指名して施設に入られる方もいらっしゃるのではないでしょうか。福祉業界には指名して入居してこられる方は多いのでしょうか。
渡邊さん:特にデイサービス、通所介護では、ファンが増えると利用者の方が増えると言われています。知人から介護についてのご相談を受けることもありましたし、私がいるからと施設を選んで入居してくださった方も過去にありました。実は娘も、道を歩いていると高齢者によく話しかけられるそうなのです。話しやすい、会いたいと思われる何かがあるのかもしれませんね。


身体の変化によって、着られる服の選択肢が減るストレスへの原体験

ーー高齢者の方も、この人と話したい、会いたいと思えば外に出かけたくなりますものね。ところで、渡邊さんご自身がこれまでにお怪我などで服の不自由を感じたことはありますか。
渡邊さん:ヨガによく行きますが運動が好きなのですね。過去にエアロビクスの大会に出場中に、右足の肉離れをしたことがあります。ブチッと音がして肉離れしたのに、最後まで踊りきりました。でも、その後は歩けなくなって帰り道がとても大変でした。途中までは同じチームの方の車に乗せてもらい、そこからはタクシーで帰宅したら家族に笑われました。休日だったのでアイシングして過ごし、翌日、患部をみてもらって、サポーターで固定していましたが、足がつけないのでとても大変でした。職場でも笑われましたね。ひどい割には、症状がひくのも早くて、肉離れ後1ヶ月以内にはスポーツジムやヨガには復帰していました。

肉離れ当初はがちがちにテーピングをしていて、落ち着いてきたところでサポーターに切り替えました。毎日整骨院に通い、電気を流し、テーピングをしてもらいながら、仕事もちゃんとやっていました。職場に車通勤をしていたので、ヒールのない靴を履いて通い、左足でなんとか歩く日々。施設利用者の方からとても心配されたり、笑われたりしましたね。当時は足が腫れてしまっていたので、ゆったりめのパンツしか履けなかったですね。新たに買い足したものはなかったですが、服の選択肢が少なくなったことにストレスを感じていました。


ーー以降はお怪我もなく運動を楽しみ、お仕事に邁進されていらっしゃるのですね。
渡邊さん:実は、肉離れの後に右足を捻挫したことがあります。仕事の電話を受けながら階段を歩いていたら落ちました。回復までに1ヶ月ほどかかり、そのときも整骨院に通いました。通常、足首を捻挫すると固まってきてしまいます。私は回復後にまたヨガを再開して患部も動かしていたので、今では怪我をする前と同じくらい可動域があります。このときも、サポーターを巻いていたので、細身のパンツなどは履けず、服の選択肢が減ってストレスを感じることはありました。着脱行為に苦痛は感じなかったですね。少しでも怪我をすると本当に不自由なのだな、この部分はこんなときにも使っているのだな、と怪我をして初めて気がつきます。やはり健康一番ですね。


同じ「ケア」に異なる方向から関わるcarewillから受ける刺激と寄せる期待


ーーこれまで2年間、carewill、そして笈沼さんのことをずっと応援してくださっている渡邊さんがなぜずっと応援してくださっているのか、背景にある想いなどをお聞かせいただけませんでしょうか。
渡邊さん:笈沼さんの想いやアイデアに共感ができること、笈沼さんの人柄ですね。笈沼さんはとても真面目で、きちんとされています。TSG2019のファイナルを見に行ったとき、私自身すごく刺激を受けました。介護に関わる仕事、ある意味同じフィールドですが、異業種の笈沼さんのお話を聞いていてすごく面白かったんですよね。私たちは介護の現場で生きていますが、同じ「ケア」でも違うアプローチを取っているcarewillの話を聞くのは刺激になり、ワクワクします。

TSG2019のときに見せていただいた入院着は、病衣なのに、おしゃれだな、普段でも着られそうだな、という印象がありました。笈沼さんのお母様が作られたケープも、普段でも使えそうだなと思いました。それぞれのサンプルに対して、介助する立場から、この紐はもっと短くしたほうがいいな、等のフィードバックをさせていただきました。


ーーずっと応援していただいていますが、逆に、carewillが渡邊さんのお勤め先や、入居者の方やそのご家族のお役にたてることはどんなことがありますでしょうか。
渡邊さん:先日届いたサンプル(カスタムオーダーシステムの開発中の製品)を見て、施設の職員が大絶賛していました。できれば上衣だけでなく、下衣もほしいね、と話していました。介護の現場で働く職員は、入居者の方にもっと色々なお召し物を楽しんでいただきたいという気持ちはあります。一方で、バルーンや点滴などのつながっている管はなかなかお召し物の中を通すのが難しいですよね。管を通す向きや角度によっては、身体に影響が出てしまうこともあります。ズボンだとしても、バルーンやカテーテルを装着していても着脱が楽なものが必要ですし、スカートもあったらいいという意見も出ました。

現在はパジャマのような病衣しかないですから、その選択肢の中でなんとかするか、浴衣のように巻くものをベッドでお召しになられている場合も多いです。そうなると、今度は入居者の方が施設ないでお食事に行かれる際に「部屋を出たい」という気持ちにはつながりにくいです。介助する際にお互いが円滑に、負担が少なくお召しいただけて、ワクワクする服の選択肢が本当に少ないです。ですので、carewillが作れる、可能性を広げられる製品はもっと多いと思います。介助する側は着せやすく、ご本人は選べる自由がもっと広がるラインナップが広がることに期待をしています。carewillは見た目がパジャマじゃなく、おしゃれなのもいいですよね!

ーーすぐには叶えられないかもしれませんがぜひ、引き続きcarewillへのリクエストやインプットを現場視点でいただけると嬉しいです。また、ここまでいただいたご意見は、介護現場の職員の方のフィードバックでしたが、おそらく在宅介護でご家族をみておられる方も気付かれている可能性がありますよね。さらに、施設にご家族を預けておられるご家族の方にも、ケア衣料の価値についてもっと知っていただく機会があるといいなとcarewillは考えています。
渡邊さん:コロナウィルスのワクチン接種が拡大すると、おそらく少し先の時期に施設内でのご家族の面会が増えてくるでしょうね。その際に、お手に取れるケア衣料のサンプルやカタログがあると、より価値をご理解いただけると思います。


ーー最後に、これからのcarewillへの期待を一言お願いします。
渡邊さん:お身体の状態に変化があっても、楽しんで服を選べる、ご自身で着脱ができる、ご自身が持っていらっしゃる能力を最後まで使って日々暮らせるとよいと思います。そのサポートをcarewillができるのではないかと期待しています。

何歳になっても、どんな身体の変化があっても、服の選択肢が多い、自分で着脱できる、おしゃれを楽しめる。そんな機能とファッション性を兼ね備えたケア衣料のラインナップが増えていくことで、介護現場の職員の方の「Will」にも寄り添っていけるよう、引き続きcarewillは前に進んでいきます。渡邊さん、ありがとうございました。

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