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利用者の方の尊厳、おしゃれを楽しみたい気持ちに寄り添いながら、機能を兼ね備えた服づくりに期待  ケアウィルパートナーセッション ゲスト 株式会社航和/株式会社Keeper 代表取締役 佐々木航様

carewillでは、メンバーが集まり全体方針の共有や、チーム間連携をはかるための全体MTGを週次で開催しています。2021年5月からはcarewillの活動をご支援いただいている法人の代表などどをゲストにお招きしし、「パートナーセッション」という名称で実施しています。今回のゲストは、carewillの法人パートナー、株式会社航和 代表取締役 佐々木航様です。メンバーからの自己紹介から始まり佐々木さんのセッションへ。この記事は、パートナーセッションの書き起こし記事です。

佐々木様には以前インタビュー取材もさせていただきました。もしまだそちらの記事をお読みいただいていない方は下記からお読みください。

株式会社航和 代表取締役
佐々木航氏
岩手医科大学大学院修了後、株式会社航和創業、社会福祉法人結和会設立、都内にて介護スタートアップ株式会社keeperを設立。岩手県雫石町、盛岡市にて介護施設や介護サービス事業、障がい者の支援事業所を含む15事業所経営。さらに生涯活躍のまち構想(日本版CCRC)を実現するため雫石町、小岩井農牧株式会社、金融機関とともに町づくり会社を創業し経営



ーー佐々木様からご自身や事業についてご紹介いただけますでしょうか。
佐々木さん:岩手県雫石町を拠点に事業を行っています。笈沼さんとの出会いはTOKYO STARTUP GATEWAY(TSG2019)で、偶然会場での席が近く、ワークショップ中に声をかけたのがきっかけです。私が介護系のアプリを都内で開発していて、笈沼さんがケア衣料に取り組むということで、「ヘルスケア同士ですね」と盛り上がりました。その後、色々話をしていくうちに仲良くなって、TSGが終わったあともお互いに連絡を取って意見交換をしてきました。本業は介護施設の運営です。デイサービスや訪問介護事業所、障がい者福祉施設、全部で15事業所ほど運営しています。

今年の春に笈沼さんから法人パートナーシップを結びたいとお話がありました。僕らが取り組んでいない「衣料×ケア」の部分でしたのでとても興味深く、共感したこと、また、笈沼さんの行動力のすごさ―TSG2019の決勝大会前には「話を聞きたい」ということで岩手まできましたからね、まさかくるとは思いませんでしたよ(笑)すごい行動力だな、すごい熱意だな、無下にはできないな―ということで、当社とケアウィルとのパートナーシップについて経営会議に通して肝煎りで進めさせてもらいました。

この会議に通したときに反対意見が多少出るだろうと予想していたのですが、逆にとんとん拍子に進みました。現場のトップが口々に「おもしろい」「これいいね」と言っているのを聞き、carewillのケア衣料はいいアイデアなんだな、と改めて認識しました。会社としてもバックアップして、笈沼さん、そしてcarewillと一緒にやっていきたいと思ったのが今回のプロジェクト参画背景です。

実は自己紹介でお見せしたかったので、弊社のPVを準備してきたのでご覧いただいていいですか?このPVはスタッフと話しながら作りました。スタッフが作りたい、伝えたいような内容になっています。


ーー佐々木さんが法人パートナーとしてcarewillに参画いただいた背景とは
佐々木さん:先日の取材でもお話した部分ではありますが、衣食住のうち、食と住は当社のサービスで皆さんに提供することができます。衣料については手をつけていませんでしたし、これからも当社ではやりません。笈沼さんのビジネスプランを聞いていて興味がありましたし、利用者の方にとってメリットになることですので、パートナーシップのお話があったときもすんなりと受け入れられました。


ーー株式会社Keeperで進めていらっしゃる、介護×テクノロジーのお話も伺いたいです。
佐々木さん:進めているのは介護クラウドという製品です。以前は介護タクシーのサービスを検討していましたが、時代背景的に実現はまだ早い、マネタイズが難しいということがわかってきたので、今は介護クラウドにシフトして準備を進めています。

具体的には、介護現場の契約について、利用者の方とそのご家族、現場のスタッフ、皆さんの負担を軽減するサービスです。入所する際の手続きと説明には、ものすごい日数がかかりますし、病院、薬局、介護施設など、一事業所ごとに契約しなければならないため、利用者の方はストレスを感じておられます。その点をどうにかできないかと考えたのがきっかけです。また、利用者の方のご家族にアンケートを取ったところ、契約のやりとりの期間が長いという回答が多く、やはりなんとかする必要があると考えました。あわせて、入居手続きの施設側担当者にもアンケートを取ってみたところ、契約のプロセスがとても煩雑という回答がありました。このシステムを使用しますと、平均で7時間程度削減することができますが、いかがですか?と伝えると、ぜひ導入したいという声が多かったので開発に挑戦しています。

契約のプロセスは、だいたい皆さんが施設への電話問い合わせを実施されます。入居申し込みに際して施設側も事前調査や入居判定会議、入居調整、連絡調整などの色々なプロセスがあります。その部分をなくしたり、簡素化することを目指しています。オンラインでの入居申し込みや、担当者会議のオンラインで実施できるようにしたり、、契約書を一元管理するのがサービスの大きな特徴です。利用者・ご家族の方に、書類をご確認いただくプロセスがありますが、それをオンラインで実施し、クラウドサインのように、チェックが完了したらスタンプを押して保存していただくと、契約手続ができるようになります。マネタイズについては、5000円程度のサブスクリプションサービスで実施予定です。開発現場サイドからは、もっと単価をあげていきましょうという話もありますが、僕は多くの施設に利用していただいて、現場の負担を減らしたいと考えていますので、あまり単価はあげないつもりで考えています。介護市場も伸びているし、リーガルテックも市場が伸びていっていますよね。UIなど、お見せできるタイミングがきたらご披露したいと思っています。

研究開発担当 坪田:私もデュー説して契約をとっていた人間なので、手続きの煩雑さや時間がかかることはよくわかりますし、自分がやらなくなったときの社員教育や研修の大変さもあったので共感します。

佐々木さん:介護施設だけでなく、病院でも、入院の手続きが大変とおっしゃっているのを聞いたことがあります。

坪田:介護ほど、保健所の管轄で色々と指示をされたりすることはないので、入院の手続きのほうが自由度は高いのですが、とはいえ面倒ですよね。治験が入ってくるともっと複雑ですよね。デンタル関係も入られようとされているのですよね!リーガルテックをピンポイントで狙われていてすごいと思いました。エンジェルラウンドで僕自身がKeeperさんに投資したいくらい興味があります。

ーー法人パートナーとして実際にパートナーリングを進めていただいてみて、いかがでしょうか。
佐々木さん:実際に動かしているのは施設長の櫻田です。対象者を選定する際の条件が厳しめだったということは聞いています。何名かヒアリングを進行しているとは聞いていますが、まだフィードバックはもらっていないですね。

carewill代表 笈沼:当初、上半身の服の不自由を解消する製品のヒアリングにご協力いただいていました。ただ、この製品は、着用対象の傷病は限られています。その意味では、対象者選定の条件が狭く感じられたのかもしれません。

そこで、方針を変更し、現在は、別のタイプのケア衣料ヒアリングにご協力をいただいています。こちらの着用対象には広がりがありますし、carewillが現在進めている研究調査にも近いです。改めて対象者を選定いただき、櫻田様のお手元にサンプルを届け、既に数名ヒアリングのスケジューリングをいただいています。本当に助かっています。また、櫻田さんのご家族にもご関心をお持ちいただいています。

佐々木さん:櫻田から、お姉さんがまさにこういった服を探していたので、施設利用者者ではないけれどもいいですか?という相談が私のところにもありました。きっと笈沼さん喜ぶと思うよ、ということで背中を押しました。

すごいご縁ですよね。僕がもしこのパートナーリングの担当を違う人にしていたら、このご縁はつながらなかったわけです。実は、当初4人候補者がいまして、その中で最初に打診したのが櫻田です。彼は声をかけてすぐにOKだったので、このパートナーリングの担当になりました。

carewillメンバー一同:そうだったんですか!すごいご縁ですね。佐々木さんを中心につながるご縁、笈沼の周りでつながっていくご縁、いろいろありますね。

ーー今後のcarewillに期待するところをお聞かせください。
佐々木さん:当社にできない「衣料」の部分を担っていっていただきたいですね。実は当社の施設は一般的な介護施設とは異なります。介護っぽくない、施設っぽくないんです。

利用者の方の尊厳を意識しています。認知症だからおしゃれは必要ないわけではないですし、施設に入っていてもおしゃれを楽しみたい方はいっぱいいらっしゃいます。carewiiにはその、おしゃれを楽しみたいという気持ちに寄り添いながら、機能を兼ね備えた服づくりを期待しています。衣料はセンスがいい人しか作れないですからね。

笈沼:入院されている方や、ご自宅と病院や施設を行き来されていらっしゃる方は新しい服に触れる機会がないというお話を聞いたことがあります。以前に岩手を訪問した際、佐々木さんが紹介下さった病院で話を伺った際、売店の片隅の洋品コーナーで月に20着ほどは売れるという話を聞いて、服を選ぶ機会の少なさ、服の選択肢の少なさを感じたところです。

ーー佐々木さんが仲間や利用者の方に対して大切にされていらっしゃることや思いを聞かせてください。
佐々木さん:当社は「シームレスな共生社会へ」というビジョンを掲げています。シームレスは、隔たりがないということです。以前からずっと、介護、障がいのある方、子ども、地域住民の方々が隔たりなく交わることのできる社会を目指しています。その中で当社の事業は、障がい者の方、介護やリハビリが必要な方、地域住民の方との交わり方を考えて事業をやっています。子どもの部分は後輩が施設の隣で学童をやってくれているのでそこは任せています。


一番は利用者の方にとってのサービスですが、介護、医療もそうですが、職員がいてこそのサービスです。利用者の方、職員・スタッフはどちらも欠かせない存在ですのでとても大切に考えており、働きやすい環境を重要視しています。

実を言うと、お恥ずかしいお話ですが、2016年の離職率が28%まで上がりました。全産業の平均が15%、介護もそれくらいなので、飛び抜けて高いですよね。当時、事業展開も進めていたので、色々やめていく方も多かったのですが、なぜやめていくのかな、介護はすごく大変だからなのだろうな、と想像していました。

さすがに離職率28%になると施設の運営にも関わってきますので、残ってくれている職員の方々に何が大変なのか、話を聞いてみました。すると、ある介護士の方から伝えられたのが、介護は大変ではない、事務作業が大変だということでした。

お恥ずかしながら、僕は、3Kといわれるように、介護が大変なのだと思っていましたら全然違っていたんですね。ケアする側は、志を持っているのでそこは大変じゃないと。その後の事務作業がめちゃくちゃ大変なんですと言われて、これなら僕がなんとかできるかもしれないと思いました。

そこから、介護現場の紙ベースでの情報共有をテクノロジーで一元管理する、情報共有をするためにシステムを全部入れ替えることをやりました。期間は3年ほどかかりました。テクノロジーを導入した結果、離職率がどんどん下がりまして、2020年は8%にまで下がり、現在は10%ほどですね。介護士の業務改善をすることを、経営者である僕がやらないといけないんだな、介護現場の方々の負担を減らし、より、介護に集中してもらえる環境を整えることに注力しています。そのためにも、都内で介護アプリを作っているんですね。


ーー多くの事業をされていて、岩手と東京をまたにかけて事業をされていらっしゃる。そのバイタリティの源は何ですか。
佐々木さん:当社のビジョンのお話は先ほどしました。株式会社Keeperでも介護で困っているひとたちを幸せにしたいと言っています。そういったことの根底にあるものは5年前に他界した母の言葉ですね。彼女は「困っているひとを、助けなさい」とずっと言っていました。そこがずっと残っていると思います。


事業展開していますね、といろんな方に言われるのですが、求められれば作ります、という姿勢です。最初が接骨院、そこからデイサービス作ってほしいと言われて作り運営しているうちに泊まるところが欲しいと言われ、有料老人ホームを作りました。するとその有料老人ホームが満床になり、もっと入りたい方がいらっしゃるからどうにかしてほしいと言われまして、どんどん事業拡大していったんです。ですので、自分で狙ってやっているつもりはなかったですね。最近は狙って作ろうとしている部分もありますけどね。

ーー現場の業務改善について、システムを入れたり、シームレスにつないだり、業務改善を行おうとすると一定の抵抗勢力が存在するかと。御社ではどう対応されていましたか。
佐々木さん:現在、施設の記録は、現場にあるiPadを職員さんたちが使って入力・管理しています。下は20代前半から上は70代まで職員・スタッフがいるんですね。70代の方はiPadを今使ってくれていますが、年配の皆様からは、当初猛烈な反対がありました。

もう手書き・紙ではやらない、iPadしか記録はやらない、と決めたので、使ってくれるようになりましたが、3年間はかかりました。とにかく触っていただく環境をつくることですね。少しずつ変えていくしかないですよね。誰かが旗振り役にならないと進みませんので。

ーーcarewillに対して佐々木さんからみた、リスクや乗り越えないといけないハードルを教えてください。
佐々木さん:僕も株式会社Keeperを2019年に立ち上げてスタートアップでやっている中でいろんな谷は迎えました。きっと笈沼さんや皆さんもご経験もあるかと思いますが、仲間ともめること、抜ける人が出てくるところ、資金面など色々でてきますよね。そのあたりはチームで乗り越えていってほしいなと思います。

僕たちもこれから訪れるであろう苦労が今後もあるでしょうから、ぜひ引き続きお話させていただきながら頑張りたいです。プロダクトでいうと、今この段階でいうことは酷かもしれないですが、対象者を絞るのは最初だから仕方ないことではありますが、将来的にはもう少し幅広い対象者向けのプロダクトがあるといいな、というのが僕の希望です。


ーー佐々木さんのビジネスは、対局にある2つを使っていると思います。テクノロジーで効率性を追求する部分と、地域・人間同士のつながりでの付加価値ですね。ここの共存についてどう意識されていらっしゃいますか。
佐々木さん:10年後、20年後は確実に働く人が少なくなるので介護施設にもテクノロジーの力が必要になります。そこを狙っています。テクノロジーと人の共存、人と人との関わりの部分は人でないといけないけれども、雑務は全部テクノロジーでいいと思います。確実に介護・医療の世界で出てくるので、自分たちで作り上げていきたいですね。現在の50−60代の方が高齢者になる頃に変わってくると思いますので、あと20年後くらいですね。

佐々木さんがテクノロジーを介護現場にどんどん入れていかれることで、介護の現場や利用者の方の現在・未来がどんどん変わっていくことを想像するとわくわくします。引き続き、法人パートナーとしてcarewillとの協働をよろしくお願いします。また笈沼が岩手に突撃することもあるかもしれませんね。そのときもぜひ、よろしくお願いします。

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