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初めてのフェリー(4)フィッシュアンドチップス

フェリーが出るのは夜中だったから、時間は十分あったが、初めての外国でどこをどう探せばいいのかもわからなかった。そもそも同行者の妹はフィッシュアンドチップスなんてまったく食べたがっていなかった。というより、むしろ嫌がっていた。

実は、ロンドンに着いて初めての食事のとき、よくわからないまま入った簡易食堂のようなレストランで、メニューが理解できず、パイだから良いだろうと思って、キドニーパイを注文するという失敗を、わたしはすでにしていたのだった。わたしは、三分の一くらいは食べ(られ)たと思うが、妹は一口か二口しか手を付けなかった。

それ以来、レストランに入るのがためらわれ、ホテルの朝食以外、食事はすべてマクドナルドかコンビニで買ったサンドイッチなどに限られていた。そんなこともあって、ロンドンの街では、フィッシュアンドチップスを探せるような雰囲気ではなく、ドーバーに来てもそれは同じだった。

この旅行の間、食事はホテルの朝食以外は、ずっとこんな調子だった。パリのシャンゼリゼ大通りで入ったカフェでは、コーヒーを頼むのに、発音が悪くてコーラが出てくる、といういかにも外国旅行あるあるに出てきそうな失敗もした。

ちなみに、念願のフィッシュアンドチップスを食べることができたのは、はるか二十年も先のことだったが、偶然この時も、ドーバーにフェリーに乗りに来ていたのだった。

それまでにも何度かイギリスに渡航する機会はあり、ロンドンでも他の街でもいくらでも探せばフィッシュアンドチップスの店があったのだろうと思うが、もともとそこまで優先度は高くないうえ、要するに白身魚のフライと太めのフレンチフライに過ぎないものをそこまで真剣に探そうという気はなかった。

元はといえば、坂田靖子のコミックに出てきたのを見ておいしそうだと思ったのが最初だった(と思う)。『マーガレットとご主人の底抜け珍道中』に出てきたからだと思っていたが、この時点(1982年ごろ)ではまだ作品自体が存在していない。実際、単行本をみてもどこにも出ていないようだった(ググってみると、『D班レポート』か『バジル氏の優雅な生活』あたりのようだ)。『底抜け珍道中』は、タイトルの通り、ご夫婦が世界中を飛び回る話だが、しょっちゅうなにかを食べているので思い違いをしたようだ。

それはともかく、二十年後のこのときは、フェリーまでの時間があっただけでなく、最初の時とは違って精神的にも余裕があったので、ゆっくり店を探すことができたのである。

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母が住む実家で週末ごとに過ごす日々。 母との大切な時間を綴る。