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初めてのフェリー(3)コーランを買う

ロンドン行きの飛行機は、キャセイパシフィックで、台北と香港、そして地名は忘れてしまったのだが中東のどこかの都市に寄港して、片道20時間以上かかった。帰りもまったく同じ航路を戻ってきた。

中東の寄港地で、アラビア語のコーランを買った記憶がある(今でも手元にあるが、未だに一言も読めない)。聖書とは異なり、アラビア語で書かれたものだけが真正のコーランだと聞いていたので、もしかしたら売っているかもしれないと思って空港の売店で聞いてみたのだった。だが、「コーラン、コーラン!」といくらいっても通じない。片言の英語と身振り手振りであれこれ説明していると、突然店員さんが「Oh! クルアーン! クルアーン!」と叫んだ。

ロンドンの空港は、西のはずれにあるヒースロー空港ではなくて、南に電車で1時間のところにあるガトウィック空港だった。香港のキャセイパシフィックなので国内線扱いなのだと、まことしやかに語られていたが、本当だったのだろうか。キャセイに乗ると、客室乗務員に対する見方が変わるとも言われていたが、初めてだったし、次に国際線に乗るのは5年も先のことで、比較しようもなかった。

飛行機ではなくドーバーをフェリーで渡ることは当初から予定のうちだった。たぶんビクトリア駅からパリ行きの特急に乗れば、当時はまだ地下トンネルがなかったので、かならずフェリーを経由しなければならず、したがってあまり深く考えなくても、いつのまにかドーバーの町の埠頭に電車が着き、みんながぞろぞろと歩いていく方向についていけば、自然にフェリーに乗せられて対岸の港に着いたのだろうと思う。

ところが、なぜか(というかわたしの個人的な趣味で)カンタベリーに行くことにしたので、あやうくドーバーにすらたどり着き損ねるところであったが、それは親切な駅員さんのおかげで回避されたのだった。

とはいうものの、ドーバーのフェリー発着場に行けばそれで解決というわけではなかった。実は、イギリスに来たら絶対にやりたいことの一つに、「フィッシュアンドチップスを食べる」というのがあって、ところが、ロンドンではどこにいけばフィッシュアンドチップスを売っているのかどうしてもわからなかったのである。フィッシュというくらいだから、港町ならみつかるだろう、とわたしは思った。

だが、結論からいうと、わたしはこの日、どうしてもフィッシュアンドチップスの店が見つけられなかったのだった。

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母が住む実家で週末ごとに過ごす日々。 母との大切な時間を綴る。