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コーラス会、その後

母のコーラス会は、新型コロナが5月に一度下火になりかけると、急速に再開の機運が高まったようで、7月2日にはいつもの公民館で5カ月ぶりの集会が催された。けれど、もうその時には第二波が始まっており、一回集まっただけでまた中断してしまったのだった。

「次回は来年以降」などと半ばやけになって母は言っていたが、8月の後半に再び新規陽性者数が減少し始め、専門家らもとりあえず収束傾向にあることを明言するようになったことから、9月17日にまた集まることになったという。

それに合わせて、母の朝のコーラス練習も再開した。新曲を追加することが決まったとかで、またYouTubeに追加してくれと言い出した。

「えっ?」とわたしは思った。前回YouTubeで曲を探すのにトラぶったことを思い出したのである。

それは、まだコロナが蔓延する前の今年2月のことだった。金曜日にいつもどおりに実家に帰って来たわたしに、母は、新曲をやるのでまたYouTubeでみつけてほしいと言った。まだ楽譜が入手できていないが、新曲の名はたしか、猫のしっぽがどうたら、というものだという。

ところが、「猫のしっぽ」で検索して見つかったのは『猫の尻尾がピンと立ってるように』というアイドルグループSKE48の歌だけだった。聞いてみると途中にラップが入っていて、どう考えてもオーソドックスなコーラス会で唄う歌ではない。もうひとつ『猫のしっぽ、カエルの手』という曲(正確にはそういうTV番組のオープニングテーマ)もあったが、ピアノ曲のようだ。なかなかいい曲だったので、ひょっとしてこれか、と母に聞かせると、

「良い曲だけど、まったく違う」と言われた。

母は実際に先生が歌った(あるいはピアノを弾いた)のを聞いているのだから、間違えるはずもない。だが、それ以上いくら探しても、猫のしっぽという曲名は他には見つからなかった。

「犬だったわ」と、翌週わたしが実家に帰ると母は言った。なんのことはない、犬が猫にすり替わっていたのだった。正確な題名は『犬が自分のしっぽをみて歌う歌』である。検索するとすぐに出てきた。AI検索でけっこう検索の精度が上がってきてはいても、まだ猫のしっぽから犬のしっぽを当てるところまでは進化していなかったとみえる。

それはともかく、こんな具合で、直接聞いてきたものですら間違うくらいなのに、電話で正確な情報交換ができるのだろうか、と一瞬不安になったのである。だが検索するとその曲はすぐに見つかった。よく電話で情報交換できたものだと、逆にわたしは感心してしまったのだったが、すぐに母が楽譜を手にしているのに気がついた。

(なあんだ)とわたしは思った。新曲といっても、すでに持っている楽譜集の中の一曲だったのだ。別に感心するような場面ではなかったのである。

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母が住む実家で週末ごとに過ごす日々。 母との大切な時間を綴る。