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初めてのフェリー(5)学会でF&Cとニアミス

1996年に学会でロンドンに行ったときには、もう少しでフィッシュアンドチップスに遭遇できそうなところまで行った。

学会では、さまざまな催しが行われるのだが、企業などの展示ブースと抱き合わせでちょっとした飲食コーナーな展示即売会などが行われることがある。ロンドンのこの学会のときは、なんとイギリスの名物料理ということで、紅茶やスコーンとならんでフィッシュアンドチップスの屋台が出店していたのである。

わたしは、講演などそっちのけで、エキシビション会場に急いだ。場所はサッカーでおなじみのウェンブリースタジアムの近くだった(確か、地下鉄のウェンブリースタジアム駅が最寄り駅だった)と思う。会場は体育館のような天井の高いホールだったので、あるいは付属施設だったのかもしれない。

正面の入り口を入ると、広い会場の壁にそってぐるっと屋台がもうけられていた。パンフレットにあった案内図でフィッシュアンドチップスは右手にあることを確かめていたので、とりあえず右のほうに歩きだすと、それはすぐに見つかった。

(やった! ついに本場のフィッシュアンドチップスが食べられる!)とわたしは思った。

ところが、店は閉まっていた。常時やっているわけではなく、1時間おきに店を開き、エキシビションなので無料のフィッシュアンドチップスを配って閉めてしまう、というパターンだった。他の店も同じようなやり方をしているようだったがほぼ常時開いているようで、フィッシュアンドチップスだけが異常な人気ですぐになくなってしまうようだった。

(やはりフィッシュアンドチップスは人気者なのだ。これは絶対に食べなくては)と私は思った。

だが、店の張り紙を見て、そうではないことがわかった。フィッシュアンドチップスの店であることは間違いなかった。すぐに売り切れることも間違いではなかった。でも、なんということだろう、売っていたのは、「フィッシュ」ではなかったのである。英国の風物を紹介するのが目的のはずなのに、「魚」が苦手な外国の方に配慮して、今回は、だれでも無理なく食べられる「鶏肉」&「ソーセージ」に変えてあります、と書かれていて、どうやら肝心の「フィッシュ」は用意されていないようだった。

(そりゃあ、フレンチフライ付きのホットドック&唐揚げをただで配れば、客が殺到するだろうよ)とわたしは思った。

わたしは、一挙に熱が醒めて会場を後にした。

なので、他にどんな英国名物が紹介されていたのか全く覚えていない。覚えていないどころか、まっすぐフィッシュアンドチップスの店に行き、がっかりして、ほかのものなど全く見る気もなく、ふらふらと会場を出たので見てもいないのであった。

いや、さすがにそれは言い過ぎだな。たしかティーバックで煎れた紅茶を一杯飲んだ記憶がある、ような気がする。ティーバックも英国名物には違いないと思いながら飲んだが、ちっとも英国の香りがしなかった、ような気がする。ミルクすらついていなかった、ような気がする。

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母が住む実家で週末ごとに過ごす日々。 母との大切な時間を綴る。