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孫のお受験(3)

翌々日には、下の子が合格したという知らせが弟からきた。ついては、制服の仕立てに行かなければならないので、二週間後に、ふたたび母に子守に来てほしいというのであった。

受験はもちろん両親がそろっていなければならず、上の子は連れて行けないから、母に子守を頼んだのは理解できる。制服の仕立てなら、休みの日に家族四人でお出かけすればいいのではないか、と母から話を聞いた瞬間思ったが、面倒臭いので黙っていた。仕立ての日が決まっていて、それが平日で、かつコロナ時代なので関係ない子は連れて行けない、とまあ、そんなことなのであろう、と勝手に解釈して納得した。

どちらにしても母はまた大喜びであるのだから、なにも悪いことはない。

というわけで、再び行くことになった母は、またしても、遊ぶものを買っていかないといけないと言いだした。

「あの子たちは山のようにおもちゃを持ってるんじゃないの?」と聞いてみたが、母は聞こえないふりをして、

「どうぶつかるたは、下の子にはちょうどよかったけど、お姉ちゃんには幼すぎたのよね。もう少しきちんとしたかるたが良いの。それとすごろく」と言うのだった。

「だから、ぐりとぐらかるたを勧めたよね」とわたしは言ってみたが、最後は絵合わせのような文字のほとんどないどうぶつかるたのほうが良いかと思ったのも事実である。わたしもお姉ちゃんの学力を過小評価していたのだ。

今回は、少し時間的に余裕があったので、ネットで買うことにした。

「犬棒かるたっていうのがあったわよね」

「そうだね、いろいろあった。ことわざかるたっていうのもあった。他にもドラえもんかるたとか」

「オーソドックスなのがいいわ」

「じゃあ犬棒かるたかな」

結局母が選んだのは、「ことわざかるた」だった。絵柄がかわいいというのがその理由だった。

「あとは、すごろくがほしいの」と母は言う。「すごろくなら、サイコロを振ってコマを進めるだけだから、あたしにもできるでしょ」

「今どきの子供のいる家なら絶対に人生ゲームがあると思うけど」とわたし。

「なに人生ゲームって?」

「貧乏農場へ行くか大富豪になるか、っていう定番のすごろく、みたいなもの」

「難しいのはあたしはダメだからね、なるべく単純なのがいいの」

だが、結局、アナ雪のすごろくをみつけて、それに決めた。お姉ちゃんがまだひとつかふたつのころに、アナの人形を送って喜ばれたことがあり、アナ雪なら間違いないと思ったのと、ボードの写真を見た限りでは、単純なすごろくのように見えたからである。

だが、もうオチは分かっていると思うが、またしても、これが失敗だったのである。

かるたは、たしかにことわざかるたであり、絵柄も母が一番気に入ったものを選んだので文句はなかったが、なんと、「犬棒かるた」ではなかったのだ。サイトを確認しても、確かにどこにも「犬棒かるた」とは書いていなかった。「い」が「犬も歩けば」ではないからといって大して問題があるわけではないが、頼んだこちらは、そして母もそのつもりだったから、「どういうことなの」と母は明らかに少し怒っていた。だが、わたしはまたしてもやらかしてしまったな、とあきらめつつ(検索を「犬棒かるた」でしたのだが、それ以外のものがいくらでも入り込むのはネット検索の常である)、母に、これはよおく確認しなかったこちらの責任、わたしの確認ミスであって、売っている方には何の責任もない、と説明しなければならなかった。

アナ雪すごろくは、わたしには大して難しいものとは思えなかったが、途中でキャラクターカードを集めていくという設定が、単純なすごろくではないということで、母は最初からお手上げだった。どうして普通のすごろくにしなかったのか、と逆にわたしを責めるので、アナ雪で良いと言ったのはそっちじゃないか、と思ったが、まあいつものこと、わたしは黙っていた。

さて、当日、お受験の日は弟家族と夕食を摂ってきたが今回は(多分、弟が勤めで不在だったので)さっさと帰って来たのでなにかあったのかと思いきや、えらくご機嫌だった。アナ雪すごろくが好評で、母親(弟の妻)が説明書を読んで聞かせただけでお姉ちゃんはたちどころにやり方を理解したという。お姉ちゃんは、それを祖母(わたしの母)に説明しながら、ふたりでちゃんと遊べたという。かるたも、犬と棒こそ出てこなかったが、好評で、ほとんどの札をお姉ちゃんがさらっていったということだった。36枚も取ったのよ、と母は具体的な数字を覚えていた。それくらい印象的だったということだろう。

とりあえず、めでたし、めでたし、なのだった。

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母が住む実家で週末ごとに過ごす日々。 母との大切な時間を綴る。