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節目~外的な節目と内的な節目 キャリア・カウンセリング/キャリア開発のための人事制度講座(37)

 年末になりました(註:再録して掲載しているので…発行したのは2004年12月22日でした)。
 大晦日、そして元旦。
 ついついこれまでを振り返ってしまいますね。
 暦の上での節目を迎えるこの冬休み、皆さんはどんな気持ちで節目を迎えるのでしょうか?
 さて、この節目ですが、キャリア開発という点からは2つの考え方、見方をとると、とても役に立ちます。
 「キャリア開発/キャリア・カウンセリング」の編著者である横山さんの言葉を借りれば、「外的な節目」と「内的な節目」です。
 ということで、今回のお題は「節目」。

★外的な節目

 外的な節目というのは、誰から見ても分かるような節目です。
 たとえば・・・

異動や転勤などで働く環境が変わった。
転職をした、退職をした。
結婚をした、子供が生まれ、入学し、就職した。
子どもが結婚、孫が生まれた。
成人式を迎えた、30歳になった、不惑を迎えた、定年になった。
親しい人が亡くなった。
年が暮れ、新しい年が明けた。

 これらは、そうと聞けばおおよそこういう出来事があったのだなと周りの人も分かる「節目」です。
  そして、こうした外的な節目は、私たちにこれまでのこと、これからのことを考えさせる要素を持っています。
 元旦に、徐々に明けゆく空を見ていると、「今年はどんな年かなぁ」に続いて、どうしても「これからどうなるのかなぁ」だとか「○年前に家族で見た初日の出は感動的だったなぁ」だとか、将来にあるいは過去に思いを馳せます。
 人によって違うと思いますが、私は仕事を変わるたびに住むところが変わったので、初日の出を見る場所もそのたびに違っていました。
 初日の出を拝むたびに、「自分はどうしてここに立っているのだろう」という思いをいつも抱きます。
 これまでのこと、出会った人や出来事を考えたり、「あのとき別の選択肢を選んでいたらどうだったのだろうなぁ」と考えたりしています。
 やがて「来年の今頃、再来年の今頃はどこで初日の出を見るのだろう」「何回初日の出を見ることになるのだろう。それまでになにをやろうと思っているのだろう」ということに気持ちが向くころには、もう太陽は姿を全部現している-という感じです。

★外的な節目と内的な節目の関係

 転職をしようと思うとき、異動の内示を受けたときには、なおさらこれまでのこと、これからのことに思いを馳せるのではないでしょうか?
 ただ、このときは将来のことの方へ重心が傾いているかもしれません。
 逆に定年の頃や、事情があって好きだった仕事を変わらなければならなくなったとき、そして子どもが結婚するといったときなどには、過去のことの方へ重心があるかもしれません。
 ただ、こうしたことも人によって異なっていて、「私は逆の方へ関心が向いているな」という方もいらっしゃるかもしれませんし、全く何も思わない人もいると思います。

 初日の出にしても転職・異動にしても、外的な節目を迎えたとき、それをきっかけにして思うこと、外的節目に対して抱く意味は、まさに千差万別といえます。

 元旦を迎えるということは誰にとっても同じ「事柄」ですが、そこで感じたこと、考えたこと、外的な節目が自分にもたらした「意味」は決して他人と同じではありません。
 ある人にとっては大きな節目になるようなことでも別の人にとってはなんでもなかったり、ある人にとっては日常の延長でしかない出来事であってもほかの人にはとてもインパクトの大きい出来事であったということもあるでしょう。
 同じ出来事、同じ外的な節目であっても、考えること、感じ取ることは人によって異なるということは、外的節目に結びつく価値あるいは、外的節目から想起される思考や感情は一様ではないのです。
 節目を見る目には、どんな事柄なのかという事実のほかに、どんな意味、どんな価値を持つのかというもう一つの見方が必要であることが分かります。
 節目の意味の面、内的なものに着眼したのが「内的な節目」です。

★内的な節目

 内的な節目とは、外的な節目とは異なり、時間や暦、ライフイベントや出来事で区切られるものではなく、そこに意味を見出す瞬間といってもよいと思います。

 そこで考え方や感じ方が変わった、あるいは何かに気づいた-気持ちや意味の転換点。
 転換とまではいかなくても、切れ目とでもいえる瞬間、あるいはその時-が内的な節目です。

 瞬間とはいえ、文字通りほんの一瞬の出来事に対してのこともあれば、数日間、数週間、あるいは数ヶ月たつ中で、「あぁ、そうだったんだ」とだんだんと気づくこともあるかもしれません。

 外的な節目が内的な節目と重なることは当然多くなります。
 先の例のように外的節目には来し方行く末を考えさせる働きがあります。
 その結果、必ずとはいえませんがその人にとっての内的な変化を引き起こすことが多いと思います。

 同じような外的な節目を迎えても、そこから感じる意味が人によって異なるということを先に記しましたが、それは、外的な節目が、内的な節目を伴っていることもあれば、伴わないこともあるし、その内的な節目の内容も人によって様々だということでしょう。

 また、外的な節目とは関係なく、内的な節目を迎えることもあるかもしれません。
 それはたとえば、誰かの話を聞いたとき、何かを本で読んだとき、あるいは深い意識のそこから浮き上がったようにふと気がつくということもあるでしょう。
 日々仕事を続ける中で、ふと、「なんでこんなことをやっているんだろう」と考えたり、逆に「あぁ、楽しいなぁ」と感じたり、あるいは子どもの顔を見て「よし明日も頑張るか」と考えたりするその一瞬も、外的な節目を伴わない、内的な節目といってよいと思います。

★ 節目はキャリアを考えるとき

 自分のキャリアについて考えるときというのは、どうしても外的な節目になりがちです。
 それが一つのきっかけになるからでしょう。
 しかし、内的な節目にも着眼したいものだと思います。
 先の例でいえば、「あぁ、仕事していて楽しい」とか、「あぁやってらんない」だとか、「やったぁ」だとか「くやし~」だとかという瞬間に、なにがそう思わせるのかを意識化できると、それが自分にとっての大切にしたい価値観を知る手がかりになります。

 「あぁ、今日はいい一日だった」と思って家路につくとき、何が心の中を占めているのか、お客様に感謝されたことなのか、難しい客先から注文をとったことなのか、部下が成長したなと感じたからなのか、新しいビジネスチャンスを思いついたからなのか-何かしら手がかりが得られていると、自分が大切にしたいと思っているものが分かってきます。
 そしてそれは当然、今後の自分のキャリアを考える上での重要な手がかりにもなっていくのです。
 では、よい年末年始を・・

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