見出し画像

面接いろいろ~その2 目標設定面談 キャリア・カウンセリング/キャリア開発のための人事制度講座(23)

 今回は会社で行われている面接について、その2です。
 前回はどちらかというと人事考課を実施する時期に行うものを取り上げました。
 人事考課の前に、期間中の業績を振り返る意味で行うのが考課前面接(レビュー面接)、人事考課が確定してから行うのがフィードバック面接でしたね。
 今日取り上げるのは、このフィードバック面接と同時にやるところが多く、またその方が効果的でもある「目標設定面接」です。
 この目標設定面接は目標による管理(MBO:Management By Objectives and self-controls)を経営の考え方として採り入れている会社ではなじみの深いものですね。

★再確認、MBO

 さて、ここで一つ再確認しておかなければならないのはMBOについてです。
 MBOは「目標による管理」といわれたり「目標管理」といわれたりします。
 勘違いしてはいけないのは、MBOはマネジメントの「考え方」であるという点です。
 ですから「目標による管理制度」と呼んでいる場合は勘違いしている可能性が高いでしょう。
 なぜなら言葉に「制度」がついていることで類推されるように、考え方ではなく単なる仕組みになってしまっているかもしれません(制度とついているものは全て間違っているというわけではありません、念のため)。
 考え方が実体化すれば仕組みになるわけですから、仕組みになっていること-もう少し平たくいうと「目標管理シート」という書式や、目標管理マニュアルといったドキュメントになっていること-は、決して間違いではありません。
 ただ、そのように制度化された途端に、「なぜそうするのか」という目的を忘れて、シートに記入したり面接をしたりすること、そうした行為そのものが注目されるようになってしまうのが危ういのです。
 手段そのものが目的となってしまう、そう「手段の目的化」が起こってしまうのです。
 内容はともかく目標を設定するシートを記入しさえすれば、あるいは面接しさえすればいいということになってしまうのです。
 こうしてMBOの考え方が根付かずに、「あれは手間ばかりかかってよくない制度だ」と、仕組みの煩雑さに愛想を尽かして取りやめてしまうところが後を絶ちません。
 目的、さらにいえば理念を忘れて手続きだけを、決められているからといって実施するのであれば、手間がかかってしょうがないと思うでしょう。
 ましてや他社が導入しているから、人事考課には目標管理が必須ですとコンサルタントがいうからといって導入した企業は、間違いなく「手段」を学習して組織内に取り込もうとするわけですから失敗します。
 大切なのはなぜそうするかという理念、目的なのです(その意味では「目標」を使った人事考課を上手くやるにはどうすればいいでしょうか? と聞いたとき、「目標に難易度をつける」だとか「チャレンジングな目標は加算点を付ける」といったような方法論、手続き論だけで解決しようとするコンサルタントは止めた方がいいかもしれません)。

 MBOの理念、それは平たくいうと、人間はどんなときに創造性を発揮できるかというと自分のやりたいことをやっているときであり、どうせ組織の中で仕事をするなら、そうした没頭できるような、充実感が味わえるような仕事をした方が創造的でいられるよねぇということです。
 だったら会社の方でも、できるだけそんな仕事をしてもらった方が、生産性が高くなってよいです。
 同じ給与を払うのでも嫌々やられるよりも楽しくやってくれた方がよいということになります。
 ここに両者の一致する点があるのだから、それを生かすようにするにはどうすればよいのか? その答えがMBOなんです。
 お互いに、つまり個人としてはどんなことがやりたいのか? 会社としてはどんなことをやって欲しいのか? 必ず合意が得られるとは限らないけれどそこは相談してみようではないか-もしすりあわせて合意できればこれはお互いにとってもハッピーではありませんか!
 すりあわせできないとしても、今年はだめでも来年があるかもしれない。
 翌年もだめなら、その翌年が・・・。
 そうこうしているうちに、これはうちの会社じゃだめだなと思ったら、早めにどうにかした方が本人のためです。
 「どうにか」とはよその組織へ移るというのもありますけど、そこで我慢して働くということもありです。
 食べていく必要もあるんですから、かならず自分にあった仕事でなければならないというわけではありません。
 仕事だけが人生ではないのですから。
 割り切って仕事以外に楽しみを見つけるのも、生き方としては「あり」ではないでしょうか(結局、会社のいうなりに働くなら同じではないかって? 結論は似ているかもしれないけれど、本人が納得して組織に残っているという点では大きな違いですよ)。

 この重要なタイミングが「目標設定面接」なんです。

★目標設定面接は命がけ?

 目標設定面接が、個人と組織のすりあわせと位置づけられると、お互いにやるべきことは沢山でてきます。
 個人の側はまず今期どうしたいのかを言えなければなりません。
 今期どうしたいかというのを言おうとすれば、もっと長いスパンで自分はどうなりたいのかを考えなければなりません。
 キャリア・プランということですね。
 目先のことばかり考えていたのでは、組織の方も協力はしかねます。
 目先のことがクリアできたら次はどこへ行ってしまうか分からないということを意味しますからね。
 また、自分のことばかり考えていたのでは、組織に受け入れられません。
 それでも自分勝手を通すのであれば、それはもう「妄想」です。
 また、現実の社会の動きなども考慮しておく必要があります。
 社内にキャリア上のゴールがあるのなら、会社の状況もきちんと踏まえておく必要がありますね。
 とすれば管理職などから会社の情報をきちんと仕入れておく必要があります。
 会社の中長期ビジョンや当面の経営計画を上司から聞かねばなりません。
 そういったことに応えられない上司なら早めに変えてもらった方がよいかもしれません。
 一杯おごってくれるということだけでお付き合いしていると、自分の将来についての大切な情報を受け取り損ねるかもしれません。
 いろんな情報収集をし、自分で考えた上で、面接に望むことになります。

 会社の方、具体的には管理職の方も準備しておく必要があります。
 たとえば中長期ビジョンや当面の経営計画などは聞かれる前に示しておきたいですね。
 また部下にはどうなって欲しいかをイメージしておく必要があります。
 彼らは彼らなりに考えてくるでしょうけれど、上司としてどうなって欲しいのかも考えておかないと人材配置が上手くできなくなってしまいます。
 この部下のイメージも短期と中長期の両方が必要です。
 短期の目標こそ目標設定面接で決定しなければならないことだからです。

 両者が準備をした後に目標設定面接が始まります。
 互いにやりたいこと、やって欲しいことがあるのですから、そう簡単に話は進まないかもしれません。
 ただ、前回のめるまがで紹介した面接と同様に、ここでものを言うのが、この面接までの間に上司と部下の間でどれくらい問題意識の共有化が進められているかということ、つまりこれ以前にきちんと面接をしているかどうかということです。

 急に面と向かって、今後のキャリアにも人事考課にも影響することを、なごやかな雰囲気の中で決めたいというのは調子がよすぎます。
 このときぐらいは真剣に話してよいはずです。
 曖昧にすませておくことはお互いにとってよい結果を生みません。
 だからこそ、毎月の面接である程度話をしておくのです。
 相手がどんなことを考えているのか、どんなキャリア・ゴールをイメージしているのかも知っていれば、話は違ってきます。

 目標による管理を「上司と部下で面接をして目標を作り、その目標の達成度を人事考課に使うこと」と考えていると、この目標設定面接はとてもつらいものになります。
 上司は、どうやって部下にノルマを押しつけようか、納得させようかと考えますし、部下は難しそうにみえて実は簡単な目標をいかに設定するかに注力するようになります。
 翌期のことを考えて、受注量をセーブしたり、前倒し発注してもらったりするということが起きるのも当然のことです。
 こうしたことも毎月きちんと面接をしていればおおよそは防げるのですけれど・・

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?