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Ⅻ)キャリア理論をキャリコンの現場でどう使う?~その3~

キャリアコンサルタントの松岡澄江です。
キャリアコンサルタントをめざす方や資格を取得したばかりの方の参考になればと、自分の経験や考えたことなどを綴っています。
(こちらのマガジンでまとめて読めます↓)

今月は、キャリアコンサルタントになるために学んだ「キャリア理論」を、キャリアコンサルティングの現場でどう使っているかをご紹介しています。その1は、私も大好きなプランドハプンスタンスやキャリアの大家、スーパーの理論に触れました。その2は、転機についての2つの理論の活用をご紹介しました。

今回は、軸や価値観を見出すアプローチを考えます。

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キャリア・アンカーは仕事経験が長い人向け

軸や価値観を考えるには、なんといってもエドガー・シャイン「キャリア・アンカー」が有名です。

アンカーとは、船をつなぎ留めておく「錨(いかり)」のこと。キャリア・アンカーは人生においての価値観や軸、自分がゆずれないもの、動機となるものといった表現で説明しています。本書の中にも、価値観などをよく理解できるようになるまでには、「10年ないしはそれ以上の仕事経験が必要」とあります。研修等で取り上げるなら、中堅社員、管理職、ミドルシニアなどある程度仕事経験が長い人を対象にした方が理解してもらいやすいと思います。

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実際にアンカーのチェックをする時に注意していることがいくつかあります。
1.40の質問は私が読み上げてます
直感で判断してもらいたいので、質問は読み上げるようにしています。人により判断に時間差がありますから、少しゆっくりめに読んでいます。また、日本語訳の特徴なのか表現が少しまどろっこしい部分があります。でも変更することはできないのであらかじめ「少し日本語として不自然な部分もありますので、わからなかったら後で聞いてください」とお伝えするようにしています。

2.可能なものには評価を極端にすること
40の質問文ですが、なんとも表現が激しいものがいくつかあります。「~でなければそんな組織はやめてしまう」とか「~を求めている」とか「~をめざす」という意思が明確な語尾で表現されています。中庸を好む日本人の気質が出てしまうと、評価が3や4等に集まってしまう等の「中心化傾向」となりそうだと感じています。どちらともいえないという評価はもちろんあると思いますが、そう思う、そう思わない等、自分が明確に意思を持っているものは、評価を極端につけてもらうとアンカーもわかりやすいようです。

3.3位まで考えてもらう
シャインによれば、アンカーは「一つのよりどころ」で「変わらない」とのことですが、1位と2位が同数ということもよくあるので、3位まで順位をつけてもらい、それぞれのアンカーの特徴を確認しています。このアセスメントが発表された当時よりも、時代の変化が激しいですし、仕事に対する価値観の多様化や、仕事そのものが複雑化しています。そういう意味でも少し幅を持ってみてもらってもいいのではないかと考えています。

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結果よりどうしてそう思うのかが大事

私自身は、アセスメントで出た結果は単なる結果であり、その人を決定づけるものではないと思っています。そのせいか、いろんなアセスメントを実施しましたが、すぐ忘れてしまうんですよね。高いお金を払ったのにもったいない!と思うこともあったりします。

さて、それなのになんでアセスメントやチェックをするのか?ですが、結果をきっかけにして自分のこれまでを考えてもらうために実施しています。

アンカーを出してもらうと・・・
「納得できる」という方もいれば「そうなのかなぁ~」という方もいるし、「なんでこれが出たんだろう?」という方もいます。

・結果が納得できるなら
 なんで納得できるのかを語っていただきます。
・結果に疑問を持つなら
 疑問を持つ理由や、自分が認識している自分を語ってもらいます。
・結果に反対意見があるなら
 どうしてそれが出てきたのか?考えてもらいます。

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アセスメントがその人の軸を決定するのではなく、アセスメントによって浮き彫りになったことは、自分の中の何を表しているのか?何の経験からそれが軸となってきたのかを考えてもらうのが重要です。

その上で、「やっぱりこっちかも」もありだと思います。キャリコンも、「アンカーは変わらないから」とか「二つはあり得ないから」と意固地にならず、「どうしてそう思うんでしょう?」「ご自身はどう思いますか?」と促していくことが大事だと思っています。

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若い人の価値観や軸はどう見る?

ではまだ仕事経験が浅い若い世代には、どうやって価値観や軸を考えてもらうのか?。アセスメントが使えるのであれば、ホランドの職業興味をベースにしたCPS-Jもいいかもしれませんね。

10~20代の価値観や軸は、変化する可能性も高いので、私はアセスメントではなくペアインタビュー等で考えてもらっています。

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1.子どもの頃の夢
2.入社時の志望動機
3.仕事でうれしかった経験
4.仕事上で大事にしていること


ペアインタビューで話してもらうと、いろんなキーワードが出てきます。そのキーワードから、自分の軸となるものを考え、文章化してもらっています。「仕事経験が長くなったり、環境の変化があるとまた変わるかもしれません。何年後かにもう一度自分で考えてみると、成長が見えてくると思いますよ」と、定期的に自己チェックすることをお伝えしています。

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研修などでお互いのアンカーや軸、価値観を他者と共有してもらうと、「自分と人は違う」ことを実感してもらえます。私たちは、どこかで『みんなも自分と同じように思っている』と思い込んでいる部分があるのですが、こういったワークを通して、同じ組織にいても、同じ仕事をしていても、同じ年代でも、軸や価値観が違うということが手に取るようにわかります。人との違いがわかると、「自分」が際立ってきます。そこから、自分とは?という問いに発展していくことが大事だなと思います。


・著書紹介


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