人生の舵取りは自分で ~幸せに責任を持つ生き方へのシフト~
2011年からウガンダ、ケニア、コートジボワールとアフリカの国々に駐在帯同されている希映さんはCAREER MARKのインターン6期生として活動されていました。
現在は、「女性の自立をサポートしたい」という夢に向けて、キャリアコーチやポジティブ心理学コンサルタントなど多方面でご活躍されています。
そんな、希映さんが10年もの間苦しんだアイデンティティロスと、人生を大きく変えたという学びと覚悟とは?
”ありたい自分”にチューニングしている今がとても幸せ、とにこやかにお話しされる希映さんに、幸せに生きるためのヒントや女性の自立についてお話を伺いました。
夫に合わせて生きていた10年
−十数年にもなる帯同生活をされているのですね。その土地での暮らしに身をゆだねつつも、自分のやりたいことを楽しんでいらっしゃる様子をSNSなどで拝見しています。
そんな希映さんにも長い暗黒期があったということですが、当時はどのようなマインドだったのでしょうか?
−当時を振り返ると、私は”自分の人生”というのを考えてなかったな、と思います。
夫の夢は海外で仕事をすること。だから「一緒に海外へ行くものだ」というのが私の意識のデフォルトでした。
夫の人生設計に合わせて、駐在帯同生活で役に立ちそうなことを先回りして勉強したりして。着付け、いけばな、茶道、国際マナーの勉強、日本語教師の資格取得までやりました。
後から振り返って、自分の行動をどれだけ夫の軸に寄せていたかに気が付いてビックリしましたが、その時はそれが当然だと思っていたんです。
自分の中で「私は働いていないんだから家族に貢献しなければならない」みたいな意識が相当根深かったみたいです。だから、美味しい料理を作って、子育ても頑張るのが当然だって。もちろん、家族のサポートや家の切り盛りが得意で、生き生きとされている方もいらっしゃると思います。それって一つのキャリアだと思うのですが、私にはどうもしっくりきませんでした。自分は専業主婦に向いていないという思いがあるのに、専業主婦としてちゃんとしなければいけないという矛盾した気持ちをずっと抱えていて苦しかったんです。
加えて、アフリカに来た当時は小さな子どもを抱えて、人に頼ることもできず、行く場所もなく、予定のないカレンダーを見て落ち込んでもいました。無価値感というか、何者でもない自分が苦しいというか…。それでも私は「しんどい」とか「苦しい」とか口に出すことすらできず、苦しい気持ちの正体もわからずに、夜中に一人で泣くこともありました。そもそも、当時の私は気持ちや要望を夫に伝えることが苦手でしたし、自分に蓋をしながら生きていたんです。
そんな生活を10年も続けてから、やっと自分の気持ちに気がつきました。うまく思い出せないのですが、何かきっかけがあったというより、溜まっていたものがあふれ出てきたという感じです。専業主婦の駐在妻という立場を離れて、自立の道を探そうって。
−具体的にはどんなことをされたのですか?
−最初は日本語教育分野で大学院に進もうと考えていたんです。受験をする段階まで進んだのに、コロナ禍で帰国できなくなったことで受験ができなくなってしまい、悔しい思いをしました。
それでもどうにかして活路を開きたくて、日本語教師のコミュニティに入った時に”キャリアデザイン”という考え方に出会いました。日本語教師は留学生の進路相談もするので、学生の価値観や得意などを分析する手法を勉強していくんです。
その中の一つに自分の人生のビジョンを描くというものがあったのですが、「これはすごく面白い!!」とみるみるうちに夢中になりました。最初は日本語教師としてスキルアップを目指していたはずが、キャリアデザインを考える中で、自分の深掘りや強みを探すなどのほうに没頭していく自分がいました。
そうしているうちに出会ったのが”ポジティブ心理学”でした。CAREER MARKに出会ったのも丁度同じ時期です。
”スキル”としてのポジティブ心理学
−なぜポジティブ心理学に興味をもったのですか?
−ひと言で言うと、説得力があったからです。ポジティブ心理学という名前だけを聞くと”ポジティブシンキングの手法”と混同されることも多いのですが、ポジティブ心理学は「人が幸福を感じるためには、どういう行動習慣をとればいいのか」を科学的に検証し、体系的に理解していく学問なんです。
誰にでもできるちょっとした行動習慣を続けることで、幸福度だったり、マインドや体の健康だったりが明らかに変わっていくのですが、この背景にはデータがあり、効果のエビデンスが存在しています。例えば、今日起きた良いことを3つ書き出したり、コミュニケーションの方法など、”やり方”を一つずつ学んで実践します。これは生きていく上での”スキル”なのだと気が付きました。
自らが変わることで変わったもの
−ポジティブ心理学に出会う前と出会った後で、どのような変化がありましたか?
−私はこのポジティブ心理学を学んだことで色んな角度から、自分の思い込みや価値観、幸せなどの視点が変わりました。これまで、いかに我慢して生きてきたかを認識できたことで、”自分を満たす”ことをもっともっと許してあげようと思うようになりました。
少しずつではありますが、自分の心の声や違和感、ワクワクを大切にできるようになりました。そうすることで、”ありたい自分”にチューニングできるようになったんです。だから、今がとても幸せで楽しいと感じることができています。
例えば、私はボランティアをしていた時、ずっと無償で働き続けることに違和感がありました。アフリカにいると、日本ではなかなか出会わないようなNGOなどの活動をされている方々に会う機会もあります。そういう方々を見て、自分にはそんな崇高な志がないことに凹みましたし、お金に価値を見出している自分を認めたくないとも思っていました。でもそういうところも、自分の気持ちを認めてあげたい、さらけ出していきたいと思うようになったんです。多分、私はお金を感謝の一部だと捉えているから違和感があったのだとも気が付きました。
また、私自身の変化は、家族や家族同士の関係性も変えていきました。夫に何も言えなかった私が、夫から仕事のことや人間関係、コミュニケーションの方法などを相談されるようになり、「コンサルしてくれない?」とお願いされるようにまで・・・。これは以前の関係性を考えるとすごい変化なんです!
そうやって私と夫、私と子どもの関係性が変わっていったことが、夫と子どもの間にまで波及したのが興味深かったです。家族同士で、何か良いことがあった時には、積極的に報告するようになったり、みんなでそのニュースを喜んだり。家族でのお祝い事もすごく増えました。
このような家族関係だけに限らず、ポジティブ心理学に出会ってからの私は日々の選択と行動が変わり、人生が劇的に好転していることを実感しています。こんな生きた学問はあんまりないんじゃないかなと。そんな自分の人生を変えてくれた学びへの感謝から、ポジティブ心理学をより多くの方に知ってほしいという思いが強くなり、資格認定を受けて、現在は仕事としてコンサルティング業務を行うようになりました。
また、ポジティブ心理学の講師養成やコミュニティ運営にも携わっています。
今後も学びを深めながら、世界中どこにいても自分で幸せになることを発信して、”自分の幸せに責任を持てる人”が増えたら嬉しいと思っています。
人生の舵取りは自分で
−”幸せに責任を持つ”という言葉が印象的です。私の中では幸せと責任はあまりリンクしない言葉だったので・・・。
−よく、「幸せになる」って言いますけど、幸せは探しに行くものではなくて、日々の行動の中にあるものだと思っています。まずは、自分がどういう時に幸せを感じるのかを自分の中で明確にしておくことがスタート地点なんです。
例えば、自分の幸せは大きな家に住んで、毎年家族で旅行に行くことだったとします。
でも本当にそれは自分が心から望んでいることなのか、”The幸せそうな生活”のイメージに捕らわれてないか、”幸せ”という価値観について時間をかけて深堀りすることが大事だと考えています。
そして、「私はこういうことに幸せを感じるんだな」と分かったら、幸せな未来を自分に許可して、実現する覚悟を決めて進んでいく。その過程や結果が思うようにいかなかったとしても、自分が選択したこととして受け入れる。自分の人生に自分で責任を持つことが”幸せに責任を持つ”ということだと思っています。
−自分の幸せの根源を他者に依存させない、ということでしょうか?
−まさにそういうことです!自分の人生のコンパスは自分で設定しないと、そもそもどちらに進めばいいのかわからない。だから自分の幸せがわかっていなかったら、幸せになりようもないと思うんです。
私は元々、夫について行き、夫の軸に寄せて生きるのが当たり前だと思い込んでいて、最初のコンパスを設定するところから全部さじを投げていたわけです・・・。そんな状態から、自分の人生に責任を持つために、どういう人生を送りたいかを自分で考えて、小さな行動も自分で選択し、納得できるようになりました。
そしてこれは自立した生き方にもなっているんだと考えています。仕事をしている、していないかではなくて、「自らが納得して自分の人生の舵取りをしている状態」が自立なんだと今の私は思えています。
あの時の苦しさがあってこその今
最初は10年間を無駄にしたと思っていたんですけど、今になってみれば何者でもない自分が苦しかった日々が、私には必要だったと心から思います。
クライアントさんをコーチングさせていただくと、お悩みに共感できることが多いです。つらい経験をしてこなかった人としてきた人、どちらと話がしたいかというと、私だったら後者かな、と思います。だからこそ、すごくつらかった時のことや、夜1人で泣いていた時のことが全部今に繋がっているなって。
もしかすると昔の私がポジティブ心理学に出会っていても、今と同じ学びは得られなかったかもしれません。あの10年があったからこそ、自分の引き出しが増えたんだと思います。タイミングってきっとあるんでしょうね。当時の自分に「あなたはそのままで大丈夫」と声をかけたいところですが、きっと受け入れられなかったでしょうし。色々思い返すと、もがいていたことも全部含めて今となっては愛おしい。頑張って人間を生きていたなって(笑)
私が幸せであることを大切に
今、すごく思うのは、何より”私が幸せである”ことが第一だということ。これが根っこにあると、忙しいと思うことがあっても「私がやりたいと思ってやっている」って一度立ち止まれるんです。
だから、私は本当に好きでお仕事をさせていただいています。おこがましいようですけど・・・。コーチングさせていただく時に、クライアントさんがハッとされる瞬間がすごく好きです。私は人と関わることが好き。人が笑っているのを見ることや、人が夢を語っているのを聞くと、幸せを感じます。
言葉にすると綺麗ごとに聞こえるかもしれませんが、誰かが私と関わってくださって、そのことでその方の人生が幸せにより近づくのであれば、こんなに嬉しいことはないと思っています。
あとがき
何でも話したくなるような雰囲気の希映さんへのインタビューの時間は、私にとってもたくさんの気付きを得られた時間でした。紡がれた言葉の全てをお届けできないのが残念ではありますが、最後までお読みいただき、ありがとうございました!
インタビュー・文:
CAREER MARKインターン9期 ともか
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