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違国日記:人とうまくいかないと感じたらコレ

【違国日記:ヤマシタトモコ】


「家族」というのは愛する理由にはならない。
「血は水より濃い」とは言う。たしかにそうだろう。他人より血のつながった血縁者の方が関係が強く深い。

でもその「強く深い」は必ずしも「愛」にベクトルが向くとは限らない。憎しみに向く場合もあれば、無関心に向く場合もある。他人なら許せることが、血が濃いからこそ許せない、ということも起こる。

主人公、朝(あさ)は中学3年生。ある日交通事故で突然両親を亡くす。葬式の日に親戚が引き取りでもめていたのを見かねて、母の妹、高代槙生(こうだいまきお)が引き取り二人暮らしが始まる。

そんな二人の物語。

槙生は小説家。人と話すもの苦手なら、生き物が同じ空間にいることも苦手。なんなら朝の母親(槙生の姉)はもっとも苦手。そのもっとも苦手な姉の子と暮らし始める。
物語を描くとき、彼女はちがう国にいく。

でも読み進めていくと、ああ人はだれしも「違国」に住んでいるのかもな、と思う。みんなだれしも自分だけの「違国」を持っていて、そこは自分を傷つけるものは何もなくて。

外に出れば沢山の言葉の槍が降ってきて、否が応でも傷つく。浅い傷でも、傷ついていないふりをしていても、傷は確実に増えていって、なんとなく体は重くなる。

そんな傷を抱えてそれぞれ「違国」に帰り、自分を癒す。

人はそうやって生きているのかもしれない。

でも、できれば。外が槍が降らない世界になればいいな、と思う。人はそれぞれ弱い部分が異なる。自分の傷つきやすい部分を自覚し、人に刃や槍を向けないように真摯に言葉を紡ぎたい、そう改めて思う物語。


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