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雪人:蓋をしても消えない裏側に気づいたらコレ

【雪人:もんでんあきこ・原作:大沢在昌「北の狩人」】


歌舞伎町は怖い(らしい)ので近寄ったことない。

新宿に行っても3丁目の駅を降りてすぐの紀伊国屋書店へGO。「裏側」とか見たことがない。見ようとしたことすらない。怖い(らしい)から。

無関心とはある種の暴力かもしれない。自分が知らない世界はないものとして過ごしている。自分にとって物語は幸せになるツールなので、「ハードボイルド(暴力的・反道徳的)」なものに手を出したことはない。そういう世界は絵空事のように思っていた。

日本は安全で衛生的で、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を誰しも有しているのだと無邪気に信じている振りをしていた。

そんなわけないのに。

「雪人」は大沢在昌氏の小説「北の狩人」を原作とした、主人公雪人の人物にフォーカスしたマンガ。大沢在昌氏は言わずと知れたハードボイルド小説家。

マンガの主人公雪人は秋田から出てきた休職中の警察官。祖父はマタギ。殉職した父親の事件を調べるために新宿へ来た。

新宿は深い海みてえなもんなんだ 

表面、中ほど、深海としたに行くほど大きく獰猛な魚が上の小さい魚を常に狙っている。油断すれば喰われる。よそ者が引っ掻き回すことでせっかく分かれている魚の縄張り、秩序が壊れる。

そう、新宿にいる刑事佐江に諭される。

裏には裏の、表には表の秩序がある、と。

雪人は裏にも表にも関わりながら事件の真相を探っていく。そこには裏への区別や無意識の差別はなく、ただ純粋に人を人として見つめる。

人はだれしも表と裏、善と悪の両方をその内に抱えて生きている。自分自身で自分の一部をジャッジし否定したりもする。ましてや他人に対してはまったく無意識に否定拒絶、なかったことにしてしまうこともある。

なかったことにしても、なくなったりはしない。

マンガ雪人は、登場人物のおっちゃんたちが震えるほどカッコよくて、ヤバい。

裏と表が融合する、中庸のバランスを保つ世界

は自分の中にも、世界にも必要。

こんな世界を目指して辛抱強く種をまいたおっちゃんたちとその土壌で生きる次世代。

なんかもう色々書いたけど、つまり、読め。


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