そこらへんにいる西王母
バスの乗り口付近の一人掛け席に座っていたらだんだん混んできたのです。
とあるバス停でちょっと多めの人が乗ってきて。
おばちゃんと言いたくなる元気なおばあちゃんが二人。
「あら、座るとこないわね。いっぱいやわー」
何の他意もなくおばちゃんは言いました。
下を向いて携帯をいじっていた私は思わず立ち上がりかけたのですよ。
ちょうどおばちゃんは私の横に立ってたし。
「あ、ここ」
と口を開いた瞬間、おばちゃん
「ああ、ええのええの。ごめんね気を遣わせて。すぐ降りるんだから」
そう言って私の立つのを止めるのです。
「若い人は大変やねえ。気ぃ遣わんといけんで。ええんよ。すぐそこなんやから」
あ、いや。…ワタシモモウスコシナンデとかいうスキがありません。
おばちゃん、にこにこしながら私の前の手すりをつかむので立つこともできません。
「若い人はホント大変やね。ありがとうねえ」と笑うので思わず
「そんな変わらんですよ」と言ったら笑い話だと思ったのか、ケラケラ笑うのです。
バスの中がパアと明るくなった感じでした。
おばちゃんはとっても自然体で、全然無理してないのに、そこにいてしゃべるだけで周りの人をなんだかちょっと幸せな気持ちにしてました。
すごいよ、おばちゃん。
七十前後でしょうか。
果たして私はあと二十年経ったら、こんな能力身につくのでしょうか。
おばちゃんの歩いた後には花が咲いてる、みたいなそんな能力、どこで身に着けるのでしょうか。
いいなあ。私もあんなおばちゃんになりたいです。
おばちゃんはすぐ降りたのですが降りる際に
「気を遣わせてごめんねえ。じゃあねえ」
とにこにこ。
私が言えたのは
「お気をつけて!」が精一杯です。
「ありがとー」
軽やかにおばちゃんは去っていきました。
バスの中にはやさしい気持ちがただよっていました。
私の中の西王母って、こんなイメージです。
実はそこここにいて、あちこちで人の心や場に花を咲かせているのかもしれません。
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