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講演で笑いをとるのが苦手すぎる話

人前で話をして「笑い」が取れる人が羨ましい

人前で話すとき、何が困るって「面白いことを話してください」だと思っている。

僕は10年前から高校生や大学生にキャリア支援の講演やセミナーをしている。これまで全国各地で数千回以上の講演を行ってきた。さすがに人前で話すことへの緊張はない。

だけど…「笑いをとる」だけは十年経っても難しい。というより、無理だ。
なので、人前で笑いがとれる人には憧れている。

これって関西独特のプレッシャーなの?

関西出身というと、たまに「面白いことをいうのが当たり前」と勘違いされる。声を大にして、それは大きな誤解だと言いたい。たしかに、ノリはいい。話している人が笑ってほしい場面を理解しているので、空気が合うと盛りやがりやすい。

ただしノリがいいのと。面白い話ができるは別のものだ。

むしろ、気のせいか関西では「面白いこと」のハードルが高い。なぜか、真面目なキャリアの授業でもそれは存在する。セミナーが終わったあとにも「面白かったですね」「会場が今日は盛り上がっていましたね」など、会場の盛り上がりへのコメントを頂くことも多い。そして、上手な人は会場を巻き込んで盛り上がるのも事実だったりする。「良い内容でしたね」が当たり前で、その先に会場との一体感や盛り上がりが求められるのである。(あくまで個人的な見解です)

なので、スピーチや朝礼でジョークを言って場を笑わせられる人を見ると、めちゃくちゃ羨ましい。笑いが取りたいがそんな才能は全く無く。残念ながら笑いの才能はどっかに雲隠れしてしまっている。

自己紹介という罰ゲーム

その中でも学生時代から苦戦したのが自己紹介。あれは学生時代のときは罰ゲームだと思っていた。

自分の前の人が連続ノリのいい自己紹介をしていると冷や汗が出る。何か面白いことを言わないと場が白けてしまうと思うと、ますます焦り手汗もかいてくる。(ちなみに前の人が滑ってくれると気持ちが楽になるので性格が悪いと自分でも思う)だいたい、自分版のときにはカチコチの自己紹介をしてしまう。。。

漫画なんかで、主人公が自己紹介で滑っているシーンを見ると首がもげそうなほど共感しかない。難しいよね。自己紹介。

笑いを研究してみた

そんな「自己紹介恐怖症」や「面白いこと言わないと恐怖症」を克服するために僕が考えたのは笑いの研究をしよう!ということだった。

この段階でやり方はいろいろ間違っているのだが、当時の僕はそれに気づくことなく、暫くの間、笑いを研究する度に出ることになる。

最初は本だった。「ウケル技術」という本を買って徹的に研究した。笑いのための間のとり方、ちょっとした一発逆のセンス。本の内容を半分ぐらい暗記した。が、デートマニュアルを読んでデートをしても良いデートにはなりにくいように、頭でっかちな知識を詰め込んで笑いを取ろうとしても予想通りの結果がまっている。

当時の講演を聞いた先輩からは「松田さんのスベリ方は豪快だよね。逆に安心感あるわ」というコメントだった。

その次に、結婚式のスピーチなどの研究を始めた。周りの人に笑いが起きたときにどんなトーク展開をしているか、同じような話し方を真似すれば笑いが起きるのではないかと、リアルな笑いの研究を始めた。ちなみにテレビ番組のさんまさんの司会なども研究した。今でも当時のメモが残っているが読み返すとメモの筆圧に自分に必死さが伝わってくる。恋のから騒ぎを笑いもせずに真剣に見ている姿は今考えると不気味以外のなにものでもない。内輪ネタというのは場の空気があって成立するものなのだ。筆記試験対策講座で、「本日はお日柄もよく・・・」と始めても残念ながら笑いは取れない。

余談になるが、このとき、さんまさんやタモリさんなどの司会が上手い人の話の振り方を勉強したことは結果的に今の仕事にも役に立っている。いろいろ司会を任されることが多いけれど、まさかこんなところで役に立つとは思わなかった。

最後に考えたのが、「強烈なキャラを打ち出す」ということだった。テレビの芸人でも超ハイテンションで笑いを取る人がいる。僕らの業界にもそうした強烈な個性を打ち出している方もいたのでそれを真似しようと思ったのである。この方法は今思うとありだったと思う。ただ、結果的にこのプランは実現しなかった。「ハイテンションな松田」が恥ずかしくて踏み出せなかったのである。

我に返る

しかし、あるとき、気づく。そもそも自分がお笑い芸人ではないことに。誰が言っていたのかわからないけれど。「松田さん。その笑いを勉強するのどこへ向かっているんですか?僕らキャリアの講師ですよね??」みたいなことを言われたときに、そうだった!!とふと我に返る瞬間があった。

別にキャリアの授業で笑いをとらなる必要はない。自分はキャリアのプロとして話をしたらいい。そう思ったら変なプレッシャーも随分減った。「それって当たり前ですよね?遠回りして気づいたのそれ?」とツッコミ入りそうなんだけど、その結論にたどり着くのに3年ぐらいかかりました。はい。

自分は自分らしくが一番いい

というわけで、いろいろ回って笑いが苦手なことは何一つ克服できていないのだけど、無理に笑いを追いかけなくなってからは日常生活では困らなくなった。今は肩ひじ張るのはやめて、自分らしく自分の伝えたいことを伝えることに集中している。結果的に小さな笑いぐらいは起きるようになった。自己紹介は相変わらず苦手だし、笑いはやっぱり取れるようになりたい。

たまに、これはウケルのでは?とトライしたくなってスベったりする。
少なくともスベっても笑って受け流せる鉄の心臓だけは身についた。

もし、僕のセミナーを聞く機会があったら、「お!今日もスベってるな」と温かい目で見守ってくれるとすごく嬉しい。

著者プロフィール 松田剛典

一般社団法人キャリアラボ 代表理事 https://kokoswitch.com
株式会社みらぴか 代表取締役 https://mirapika.jp 
ツイッター:https://twitter.com/goten_m

株式会社ベネッセコーポレーションで高校生の進路選択の部署に配属。全国の高校の進路相談会の運営や入試判定業務などに携わる。人材紹介会社の大阪責任者をを経て独立。キャリア支援の仕事を始めて約20年目。複数の大学でキャリアデザイン講座の講師をしながら、北海度から九州まで全国の高校大学を訪問する実践型キャリア支援家。年間3000件前後の面談と、5000件前後のキャリア講座を運営。
2023年保護者向けオンライン相談サービス「みらぴか」をリリース
著書:「はじめての課題解決型プロジェクト」ミネルヴァ書房

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