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『聴けずのワカバ』(キャリコン資格取得編)-50

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質問は事前に20コ用意しとけ!?

「お嬢ちゃんよ、なんで質問がすっと出てこねえんだよ」

「あの、さきほどからお嬢ちゃんって言ってますけど、初対面なんで名前で呼んでもらえませんか?」

「名前?生意気だな受験生のクセに。10年早いわ。んで、ダメ出しの続きだが・・・」

「こいつは親方、いやココノエ、さんだ。受験生を差別せず、きちんと名前で呼んでもらえませんか」

「お、おっさん!」

「いちいちうるせえ野郎だな。時間がねえんだ。まずは質問に答えろ。なんで考えながら質問してるんだよ」

「いや、だって相手の話に集中して聴いてて、どの質問が最適なのか考えて質問しているだけなんですけど・・・」

「なんだその口の効き方は!受験生のクセに偉そうだな。いいんだよ、そんなこと考えなくて。それよりすぐに質問が出てこないなら、最初から用意しとけや!」

「でも、他の勉強でも同じようなこと言われて、全然うまくいかなかったんで・・・」

「うまくいかなかった?!それは自分の技術の問題だろ。人のせいにするな!」

「ココノエ、さんは人のせいにもしてませんし、彼女の技術の問題でもないですけどね」

「また、てめえか。受験生は黙って聞いてろ!」

「まあ、まあ、イチジョウさんの意見も聞いてみようじゃないか。では何が問題なのかね」

「質問を用意すること自体です」

「ん、それじゃあ質問を事前に用意しちゃダメだといいたいのかね」

「はい」

「でも勉強会では用意した方がいいと言われているが、またセオリーに逆らうつもりなのかね」

「さきほどからセオリーセオリーと言ってますが、そもそもそれは誰が決めたことでしょうか?」

「我々の先輩方から受け継がれているがね」

「ではその先輩方は誰から聞いたのですか」

「それはその前の先輩方でしょう」

「その理論なら最初に言った人間がいるはずですが、それは誰なのでしょうか」

「そんなことは我々には分からないし、知る必要もない」

「そうですか。でも有り難そうにそのセオリーを重要視し、受験生に押し付けているように感じます。根拠が明確であり、実務でも有効な技法であれば受け入れられますが、噂レベルのセオリーでは必要ないと考えています」

「てめえ、サオトメさんが大人しく聞いてりゃあ、調子に乗りやがって!」

「まあ、いいでしょう。結論の出ないセオリーの話は一旦置いておいて、改めて何故質問を用意してはダメなのか伺いましょうか」

「質問を用意することによって弊害が生まれるからです」

「弊害?」

「はい。実際にやってみると分かりますが、例えば質問を事前に20コ用意していたとします。それで面談に臨むと何が起こるかこれから説明しましょう」

「どんなことがあるのかね」

「まず頭の中で用意した質問がリストアップされています。相談者の反応によって、次の質問をそのリストの中から探します。そしてまた相談者の反応によって、次の質問を探します。それを質問がなくなるまで繰り返します」

「まあ、それがセオリーになるね」

「その時に頭の中で何が起こっていると思いますか」

「頭の中?相談者への質問を考えているんだろう」

「違います」

「違う?」

「やっていることは相談者に対する最適な質問を考えているのではなく、機械的にリストの中から順番に質問を出力しているだけです」

「出力って、それじゃあまるでロボットみたいじゃないか」

「そうなんです。事前に質問を用意したことで単なるリストとの照合作業に陥ってしまいます。そもそもキャリアコンサルティングは多種多様な相談者に対して臨機応変な応答を求められるはずです。そんな柔軟な対応を機械にはできないからこそキャリコンに価値があるのだと思います」

「・・・うーん、まあ、理解はできるがね」

「一度定着してしまった考えはすぐには変えられないと思います。ご理解いただいただけでも嬉しいです」

「なに勝手なこと言ってんだてめえ!俺のダメ出しに文句いってんじゃねえ」

「文句?意見ですよ。私はさきほど言った通り、ココノエ、さんに問題はなかった。むしろ相談者のために必死になって考え、最適な質問をしようとした姿勢は正しかったと思っている」

「お、おっさん!」

「はは、なんか知り合いだから庇っているようだが、そんな低い志じゃあ、この試験には絶対合格できねえよ」

次回の更新は10/23予定です

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