雇用施策と労働力
弊社更新講習の講師、中村先生に「雇用施策と労働力」について、コラムをお書き頂きました！
雇用施策と労働力
皆様、ご無沙汰しております。３月になりました。ようやく春の兆しも感じられるのですが、コロナの終息の先行き不透明感が続いています。
今回は国の政策と労働力転換について少し書いてみます。資料はネットに幾らでもありますが、時代の変遷をキャリアコンサルタントに読み解いてくれるものは少ないかも知れません。
私が小学生低学年の頃、学校のストーブはダルマ型の石炭ストーブでした。つまりまだ日本のエネルギー資源は石炭があったのですが、炭鉱離職者臨時措置法は昭和３４年に制定されています。言うまでもなく炭鉱が多かったのは九州の福岡県地方で、その一端は五木寛之の「青春の門」の初期に描かれています。
この「石炭から石油へ」の時代にこの法律の対象になったのが炭鉱離職者です。「キャリアコンサルティング その理論と実際」（いわゆるバイブル本）の木村周先生は、労働省（当時）に入省後に４年、炭鉱離職者に対しての就職指導（黒手帳と呼ばれた援護措置対象者向けの支援）をされていたそうです。いずれにしても炭鉱離職者は日本のエネルギー転換政策の際に別の分野への転職をするような雇用流動化政策の流れの中にあった訳です。
また、もう知らない方もおおいでしょうが、緊急失業対策法というものもありました。これは国の施策として戦後の失業者の救済措置で都道府県が仕事を発注し職業安定所が紹介行為を行うというものでした。この事業には私も実は数年関わったことがありますが現在は廃止されています。経過は複雑で難しく、国の人口の多数が関係した訳でもないので詳細は割愛します。
昭和４１年制定の雇用対策法（現在の労働施策総合推進法）は国の中核的な雇用の方向を決める性格があり５ヶ年計画で制定されていました。現在の労働施策総合推進法は別名パワハラ防止法という名称から推察できるように、雇用の流動化は官から民へと委譲されているように見えます。
大きな転換になったのはやはり労働者派遣法（１９８６年）でしょう。私は既に勤務していましたが、派遣業の実態に法整備が追い付いていなかったように記憶しています。ですが印象に残っているのは派遣法ではなく、同時に可決成立した改正労働基準法です。それまでは（是非はともかく）母性保護の観点から女性の深夜労働は原則禁止でしたが、労働者派遣法の成立と同時に禁止部分は削除されました。後から思えば、これはつまり女性の労働力を必要としているという意味があったのでしょう。いずれにせよ派遣社員はもはや当たり前の時代となり、テレビドラマにもなるようになりました。
ここでお伝えしたいのは、雇用施策に関する法律はその背景に国の重要な施策の転換が伴う（ことが多い）、という事です。もちろん障害者雇用促進法のように別の背景を持つものもあるので一概に言うことはできません。
今般のコロナ禍で、何らかの施策が打ち出されるのか、オンラインでの仕事がどのように進んでいき、どのような方向へ行くのかはまだ手探りのようです。色々な意味で注目しておきたいところです。
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