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冨岡義勇は嫌われているのか? その①炭治郎編

1話から颯爽と登場し、いきなり炭治郎を罵倒したキャラクター“冨岡義勇”。

「生殺与奪の権を他人に握らせるな」からの義勇の畳み掛けるような台詞はリズムが良くて読んでいて気持ちが良いです。(内容は鋭い刃物で切り刻まれているような気分ですが)
そして鬼滅の刃の世界観を凝縮して読者にお伝えしている凄いシーンだと思います。義勇本当に凄い。

このときの義勇の顔の凄絶さといったら…。
ここまで激しく怒りをあらわにしたのはこのシーンだけではないでしょうか。あと、こんなに義勇が喋るのもこのシーンだけです。

この「急に怒る人」というイメージが強すぎただけに(個人的な意見です)のちに炭治郎の前に現れる義勇は毎回キャラが違ってびっくりします。(個人的な意見です)

急に「水柱になっていい人間じゃない」ってグチグチ悩みだしたり、実弥に「おはぎをあげようと思う」と言ってみたり

“芯が強そうなのに実はガタガタ” “他人のことはどうでもよさそうなのに実は興味を持っている”など(言い方酷い)

冨岡義勇という人物、まったく掴み所が無い!

と思いました。
やっぱり水の呼吸の使い手だからですかね?水だけに。

胡蝶しのぶには「そんなだからみんなに嫌われるんですよ」とも言われています。
冨岡義勇は本当に嫌われるほど嫌な奴なのでしょうか?
今回は那田蜘蛛山で再会するまで炭治郎は義勇をどう思っていたのかについて想像、考察していきたいと思います。

嫌われポイント1 いきなり斬りかかってくる

炭治郎は家族を殺され禰豆子は鬼になってしまい、突然現れた冨岡義勇という男に刀で斬られそうになります。
そして禰豆子を奪われ、妹の首を刎ねる、と宣言されてしまいます。

たった一人生き残った家族がまた殺されてしまうかもしれないという炭治郎の恐怖と苦しみは想像しただけで胸が潰れそうになります…。


嫌われポイント2 精神的にボロボロなのにさらに怒ってくる

炭治郎は土下座して禰豆子を殺さないでくれと懇願しましたが、義勇は追い討ちをかけるように炭治郎が妹を守れていないこと、覚悟が甘いことに対して大激怒しました。

炭治郎は発狂してもおかしくないくらい精神的に追い詰められた状態なのに、さらにえぐられるような厳しい言葉の数々。
炭治郎の心境を想うととても辛い場面です。

嫌われポイント3 禰豆子を刺す

さらに「俺もお前を尊重しない」といって“禰豆子を殺す”と脅しています。
脅すだけでなく、なんと義勇は禰豆子の肩を刀で刺しました。

ここでは義勇を「鬼」として描いていると個人的には思っています。

なぜなら炭治郎にとって禰豆子は「鬼」ではなく妹であり、「人間」だからです。
鬼滅の刃では人間を殺そうとする奴は「鬼」として描かれているのではないでしょうか。

21巻で縁壱が「自分が命より大切に思っているものでも他人は容易く踏みつけにできるのだ」と言うようにやはり、大切な人を理不尽に奪う奴は「鬼」です。

相手が「鬼」だからこそ炭治郎は殺すつもりで立ち向かったのかもしれません。

嫌われポイント4 なんか難しい事を言ってくる

「生殺与奪の権を他人に握らせるな」というセリフ、なんかカッコ良いですよね。

しかしググったり辞書で調べた人も多いのではないでしょうか。
ぼくはググりました。

それから「覚悟」も難しいです。

義勇「脆弱な覚悟では妹を守ることも治すことも 家族の仇を討つこともできない」

覚悟とは「仇を討つ」ことでしょうか?「禰豆子を人間に戻す」ことでしょうか?
多分義勇の言う覚悟の根底は「生殺与奪の権を握ることができる強者となり、鬼の命を奪う覚悟」だと思います。
仇を討つことも、禰豆子を人間に戻すことも、鬼を相手にするなら生殺与奪の権を握ることができる“強者”にならなければ成し遂げることはできません。

義勇が「鬼共がお前の意思や願いを尊重してくれると思うなよ」と言うように、鬼は炭治郎が懇願しても構わず殺しにかかってきます。
相手を殺さなければ炭治郎が、あるいは禰豆子が殺されてしまいます。

義勇は、生殺与奪の権を放棄し、戦わずに土下座していた炭治郎を変貌させました。
炭治郎は図らずも「許せないという強く純粋な怒りは手足を動かすための揺るぎない原動力になる」の言葉通り、義勇に立ち向かっています。炭治郎は禰豆子を守るために「命を奪う覚悟」をしたのだと思います。
冨岡義勇はもしかしたら恐ろしく頭の回転が早い男なのかもしれません。鬼と戦い、妹を守る「覚悟」をこのほんのわずかな時間で炭治郎から引き出したのですから。
義勇が怒らなければ炭治郎は2話のお堂で鬼にやられていたと思います。

嫌われポイント5 言葉が足りない

気絶から目を覚まし、義勇に話しかけられた炭治郎はかなり困惑したと思われます。
妹を殺すと言われたのに禰豆子は生きているし、もう襲ってこないし炭治郎からしたら義勇が“言っていること(妹を殺す)とやっていること(殺していない)がちぐはぐ”なので意味がわかりません
とにかく炭治郎への説明が足りないと思います。
あと炭治郎は義勇の心の声を知らないので、もともと殺す気がないのなら禰豆子を刺した意味もわからないですし、刺した事を許さないと思います。
しかも義勇は「鬼殺隊」のことは一切説明せずに「鱗滝左近次のところへいけ」としか言わないので、本当に「言葉が足りない」と思います。

炭治郎は義勇をどう思っているのか?

一応断っておきますがもちろん義勇は良い人です。
義勇の心の声からは優しさしか感じません。

ですが炭治郎からしてみると、義勇の第一印象は最悪だと思います。

炭治郎はその後、那田蜘蛛山で再会するまで、義勇について一切何も語りませんし思い出しません。一切です。全くです。

炭治郎は、例えば刀のことで怒る鋼鐵塚さんを思い出したりはするのですが、怒った義勇を思い出すことは絶対にありません。
つまりそういうことだと思います。(オブラート)

それから6巻で「俺は嫌われてない」と義勇が言ったときの炭治郎の表情、皆さんはどう捉えたでしょうか。

このときの炭治郎の表情の読み取りは読者に委ねられている感じもしますが、実は作者から既に提示されているとぼくは思っています。

同じく那田蜘蛛山編で母蜘蛛の首を切った後、炭治郎が伊之助と再会するシーン。
伊之助の「俺は怪我してねぇ!!」
のあと、炭治郎が「えぇっ!?」と心の中で叫んだときの表情が、

義勇が「俺は嫌われてない」と言ったあとの炭治郎の表情とほぼ同じなのです。
こちらでは炭治郎の心の声は何も書かれていませんが、本当は義勇に対して「えぇっ!?」と叫びたかったのではないかと推察します。
アニメでは「えぇっ!?」と言ってますね。

会話の流れもとても似ているので意図的ではないかと妄想しています。
「怪我が酷い→伊之助は否定→炭治郎びっくり」
「みんなに嫌われてる→義勇は否定→炭治郎びっくり(?)」

炭治郎は優しいのでそのあと冷や汗をかいて義勇の顔色を伺っていますが、炭治郎は「えぇっ!?」と叫びたかったと思いますねきっと。きっと(妄想)

おわり

義勇はなんだかんだ炭治郎を“禰豆子を人間に戻す道“へと導いてくれましたし、炭治郎にとって唯一の希望である禰豆子を殺さずに見逃してくれました。

義勇が炭治郎に“生き抜く力”を与えたのだと思います

義勇はいわば「嫌われ役を買って出る男」ですね。

「嫌われ役を買って出る」という言葉、ぼくは正直よくわかっていなかったのですが、“嫌われることを恐れず、間違っていることは間違っているとちゃんと言って良い方向へ導いてくれる人”だと解釈しています。(その人を「嫌われ役」と評価するのは第三者です)

そう解釈すると彼の名前が「義勇」なのもなんだかわかる気がします。
(義勇 ; 正義の心から発する勇気。また、みずから進んで公共のために力を尽くすこと、らしいです)

もちろん本人は自ら嫌われ役を買って出てるつもりはないので完全に“天然”です。(「俺は嫌われてない」と自分で言ってますし)

炭治郎も同じく、嫌われることを恐れず自分の意見を言う場面が多々ありますね。(柱合裁判で実弥に「柱なんてやめてしまえ!」と言ったり、宇髄に「お前を柱とは認めない!!むん!!」と言ったり…)

義勇が良い人だということは読者にはもちろん伝わっています。
ジャンプイケメンキャラランキングというものがあるらしいですが、ぼくは迷わず冨岡義勇に1票入れます。彼は根は良い人ですし、心もイケメンです。

義勇が酷いことを言っていても残酷な感じがしないのは、炭治郎の話をちゃんと聴いてくれているからだと思います。
禰豆子への気遣いも優しいです。竹を噛ませて、羽織も掛けてくれてますし。

那田蜘蛛山編以降はこのテーマで語る必要はないでしょう。

炭治郎編は以上です。

読んでいただきありがとうございました。

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