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僕の前にも道はあるけど、僕の後ろにも道はできるんだなぁ、流行だもの。「TRENDY」

こんばんは、きゃらべのワタルです。
この文言で始まるのもずいぶんご無沙汰な気がしますね。お久しぶりのボドゲ紹介記事でございます。

「バンドワゴン効果」という言葉をご存知でしょうか。経済学や社会学などで登場する言葉の一つで、他の人が支持しているものほど、自分も支持したくなる心理現象のことです。行列のできたレストランを見て「このお店はきっと美味しいに違いない」と無意識に感じたり、SNSを賑やかすゲームや映画などの投稿を見て「このコンテンツはきっと面白いに違いない」と感じたりすることがまさしく「バンドワゴン効果」ということです。言葉そのものの知識がなくても感覚的に知っている方も多いのではないでしょうか。ちなみに「アンダードッグ効果」「判官びいき」といったほぼ逆の意味を持つ言葉もあります。

この「バンドワゴン効果」の考え方は投資や株の世界にも通ずるものがあるようです。「最近この銘柄は価値が上がり続けているから自分も買わなきゃ!」といった心理が働きがちなんだとかなんとか。しかしながらそう簡単には自分の思うようにいかないのが投資というもの。大半の人がこのように考える頃には実はもう次の波がやってくる前兆が見えていて、「勝ち馬に乗ったつもりが気付けば大損に!」なんてこともあるらしいです。おお、怖い怖い。

結局のところ、一番得をしているのは「バンドワゴンに乗ろうとするお客さん」なのではなく「バンドワゴンを動かす運転手さん」なのかもしれませんね。ワタシも出来ることなら運転する側になりたいものです。

前置きが長くなりましたが、今回ご紹介するゲームはそんな「バンドワゴン効果」を巧みに操ることをテーマにした『TRENDY』。流行の波を見事に乗りこなし、誰よりもイカしたヤングになることを目指すゲームです。あなたは流行の最前線を走り抜けることができるでしょうか?

それでは今回も、レッツプレイ!


どんなゲーム?

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『TRENDY』「ゲームの帝王」ライナー・クニツィアによって生み出されたカードゲームの1つです。ライナー・クニツィアは別の記事でもすでに紹介した『モダンアート』を制作したクリエイターで、「あちらが立てばこちらが立たず」のいわゆる『ジレンマ』の状態が横行するゲームを数多く作り出していることで有名ですね。


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今回の『TRENDY』はもともとは2000年に発売されたゲームでしたが、21年の時を超えて日本語版が発売される運びとなり、レトロでクラシカルなアートワークから90年代の雰囲気にインスパイアされた懐かしくも親しみやすい絵柄へと刷新されております。
ゲーム箱に描かれた平成ファッション誌のようなデザインや、説明書に書かれた「ルルブ(Rule Book)」という表記には思わずニヤリとしてしまいますね。
後程紹介しますが、ゲーム中に使うカードに描かれた絵柄も数字ごとではもちろん同じ数字内でも一つひとつが異なるという手の凝りようで、さらにさらに前述した「ルルブ」にそれぞれの解説も入っているというオマケつき。渋谷系やらアメカジやら有名デザイナーの「ナナセブンシチ」プロデュースやら、どれも粒ぞろいですね。特に「ナナセブンシチ」。一体何番のカードだというのだ・・・?

そんな目に飛び込んでくるものだけでも賑やかな『TRENDY』ですが、「簡単なルールで奥深い、でもサクッと遊べちゃう」という誰でも楽しく遊べるゲームデザインとなっております。早速当記事を読んで遊んでみましょう!


寄せては返す波の動きと、押しては引く決断の行方

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まず箱の中に入っているカードを適当にシャッフルしてプレイヤー1人に6枚ずつ配ります。はい、これで準備完了です。他のゲーム紹介記事でも何度か同じようなことを言っていますが、準備が楽チンなゲームというのはそれだけでチョベリグ(超ベリーグッド)ですね。

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そしてこの『TRENDY』はルール自体もめちゃくちゃシンプルで、自分の番がやってきたら「まず初めに手札のカード6枚から1枚を場に出し、山札から1枚補充する」を繰り返すだけ。まさにシンプルイズザベスト、非常に簡単な進行です。ちなみに出すカードにも特に制限はなく、自分の出したいカードを自由に出すことができます。

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これを繰り返し、「どれかのカードが描かれた数字分だけ枚数がそろった」タイミングで得点化を行います。例えば上の写真の状況では「4」のカードの4枚目が出てきたので、この時点で得点化が行われることになります。

具体的な処理としては「必要枚数がそろったカードだけをキープし、それ以外は捨てる」というものになります。上の写真だと「4」のカードだけを手元に残してそれ以外をポイするわけですね。そして「手元にあるカードに書かれた数字」がそのまま得点になります、これもまた潔いという意味で実にシンプル!上の写真だと「4」を1枚出していた人は4点2枚出していた人は8点、そして1枚も出していなかった人はたとえ他のカードを何枚出していようとも0点ということになります。
こ、これはチョベリブ(超ベリーブルーな気持ち)!貴重なカードたちがゴミくず以下になってしまうだなんて!

この得点のシステムが『TRENDY』というゲーム最大の特徴です。一言で言ってしまえば、この『TRENDY』自分だけでなく「ライバル達のカード」を利用して自分の得点を稼ぐことを目指すゲームということになります。自分がどれだけ並べても全く流行らずに捨てられてしまうこともあり、そうかと思えば自分がほとんど期待していなかったカードが思わぬ大流行につながることもあるというこのルール、まさに『TRENDY』という名に恥じない「流行という大きな流れを考えるゲーム」ということですね。
誰しもたった一人の力で「流行」を作ることはできず、絶対に他の人の力が必要になってきます。このゲームにおいて『自分以外のライバル達すべて』の存在はとても大きなものだと言えるでしょう。

さて、こうなると前述した「自分のカードを出す」タイミングで「いったいどのカードを出すのが正解なのか?」が気になる方がいらっしゃると思います。「流行」というものが複数の人間の思惑が絡み合うことにより生まれるものである以上、パーペキ(パーフェクトでカンペキ)な答えを常に出し続けることはなかなか難しいですが、いくつか考え方の例をご紹介しましょう。

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例えば上の写真では、5人プレイでプレイ中に「7」のカードが2枚出ている状態で自分の番が回ってきました。手札は4と6が2枚ずつ、3と7が1枚ずつです。「ちょうど「7」を持ってるから、出して7点ゲットしよーっと♪」と考えたくなりますが、ちょっと待った!このまま順調に全員が7のカードを出してまわった場合、得点化のタイミングである7枚目のカードが出されるのは2週目が始まった後、つまり1番目と2番目の人たちが2枚目の「7」を出してようやく得点化が行われることになります。するとこの人たちだけ「7」×2で14点を獲得して、あなたを含めたそれ以外の3人のプレイヤーは「7」×1で7点しか得点できないということになります。なんということでしょう、自分としては点を稼ぎに動いたつもりが、気付けばライバルとの差が広がってしまう結果となってしまいました。こんな感じで、ライバル達が打ち出した流行に飛びついて大量得点をライバルに許してしまうというケースがこのゲームではよく起こります。流行に乗り遅れるのは絶対に避けたいところではありますが、だからといって安易に迎合するというのもこのゲームでは考えものなのです。

このような場合に対する動きとしては、簡単に次の3つのパターンを挙げることができます。

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「ライバルに「7」で得点を取らせたくない!」と思った時には「3」や「4」といった「すぐに得点化させやすいカード」を出して「7」の得点化を妨害するというのが効果的です。その分自分が獲得できる点数も控えめなものになるという部分もありますが、ライバルたちの得点チャンスを潰せるのでなかなかいい仕事をしたとも言えるでしょう。

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「14点取りそうな人たちよりも、現時点で自分はたくさん点を稼いでるんだよなぁ...」と思ったときにはおとなしく「7」のカードを出して便乗するのがいいでしょう。『結局7出すんかい!』と思う方もいるかと思いますが、よく考えた上でそれでも安定択を取るということはなんだかんだ言いつつも立派な戦術です。思考に思考を重ねて最終的に勝てる見込みがあるのであれば、ライバルたちの多少のリカバリーに目を瞑ってでも自分の得点を増やすというのは決して悪い考え方ではありません。

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「ここは勝負所!「6」のカードで新しい流行を作る!」というときには思い切って「6」のカードをプレイするべし!カードの巡りが上手くいけば2枚目の「6」のカードを出して大量得点が狙えるかもしれません。まぁ、後ろの人が乗ってきてくれないとこの作戦も不発に終わってしまうので、けしかけるタイミングは慎重に選ぶ必要があるのですが...

ざっと紹介してお気づきの方もいると思いますが、「ライバルの邪魔はできるが実入りが少ない」「ライバルに点は入るが自分にも入る」「たくさん得点できるかもしれないがノッてくれないリスクもある」といった具合にあらゆる選択肢には常にリスクとリターンが同時に付いて回っているというのがわかるかと思います。この様々な『ジレンマ』の中から適切なものを選択していくことこそが『TRENDY』を制する考え方の一つであるわけです。
実際はもっといろいろな考え方もあるでしょうし、運の良し悪しで得点しやすい・しにくいが変わることもあるというのもご愛嬌ですが、あくまで考え方の一つということで覚えていただければ幸いです。

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話をルール説明の方に戻しましょう。得点化を行い場がリフレッシュされたら、先ほどと同じようにまたカードを出していきます。これを繰り返していくとやがて山札が無くなってしまいますが、この状態で得点化をあと1回行ったら1ラウンドが終了となります。この時点で得点が100点以上の人がいたら全員の中で一番得点した人が勝ち!まだ100点以上の人がいなかった時にはもう一度6枚の手札を配るところに戻って次のラウンドを始めます。

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また、カードの中には通常のものとは異なる2種類の役物カードが紛れています。
「ダブルトレンドカード」1枚出すだけで2枚分のカウントを進めることができるカードです。上のような状況だとまだ4枚目であるにもかかわらず「5」のカードは「5枚分」出されているということになるのでこの時点で得点計算を行うことになります。得点の時にはあくまで1枚として数えることになるので10点ではなく5点になりますが、それを差し引いてもライバル達の予定を崩すことができる強いカードですね。

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「アウトカード」出した瞬間に場に出ている該当カードを流すことのできるカードです。上のような状況だと「6」があと一枚で揃う局面でしたが「6のアウトカード」が出されてしまったため場の「6」のカードは「6のアウトカード」と一緒にすべてゴミ箱行きになってしまいました。相手の得点チャンスを潰すことができるので強力なカードではありますが、自分の得点を増やす動きではないのがポイントです。また、一度流した後にまた同じ数字を揃えられることもありますのでその点にもご注意ください。
ちなみに役物カードはどちらも「各数字ごとに1枚ずつ」入っています。ついでに言うと通常のカードは「数字を2倍して1を足した枚数だけ」入っています。ゲームはじめに除外されるカードなどは無いので、「どんなカードが何枚ぐらい出たか?」をなんとなく覚えておくとゲームの後半に役立つ情報となるかもしれませんね!

以上がこの『TRENDY』というゲームの全進行になります。いやぁ、何度も書きましたがホントにシンプルです。トントン拍子でゲームが進行してだいたい20~30分ぐらいで終わるような設計になっているので、「もう一回やろうぜ!」と誘うのもいいかもしれませんね。

途中でも説明した通り、このゲームにおいてはよほどのことが無い限り自分が得点した時には他にも得点している人がいる可能性が高いです。「何も考えずに他の人に便乗しているばかりではライバル達よりもリードすることは難しい」ということをしっかり覚えておきましょう。
どんなカード、どんなジレンマを選ぶのはプレイヤーであるあなた自身。その判断材料は「場に出ているカード・すでに流れたカード」「ライバル達が獲得した得点」「プレイヤーの傾向」「その場の雰囲気」などなど目に見える形・見えない形でたくさん転がっています。変化し続ける「TREND」をその目で見極め、常に最良の一手を繰り出していきましょう!

相場は生き物である
敬意には大いなる祝福を
油断には手痛い反撃を

さいごに

『TRENDY』、いかがだったでしょうか。他人の得点も利用しながら自分の得点を目指すという『ジレンマ』「テンポよく!簡単なルールで!」遊べる作品となっております。
毎度お馴染みですが、今回紹介した『TRENDY』もきゃらべの店頭でも販売しております。興味がある方はぜひお手に取ってみてはいかがでしょうか。


それでは今宵はこの辺で、失礼。


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