見出し画像

[ランドクルーザー・GRスポーツ]国産オールラウンダーSUVの歴史に、新たに強く刻まれるだろう1台

「クルーザーって、こんなイージーに運転出来るんだっけ?しかも、楽しい!」

オンロードはもちろん、高いオフロード走破性も全世界から支持を受けているトヨタ・ランドクルーザーシリーズが、今年で生誕70周年を迎えた。

このアニバーサリーイヤーに、およそ14年ぶりのフルモデルチェンジが行われ、新たに300系と呼ばれるモデルが登場。

筆者が注目したのは、ランドクルーザーシリーズとして初めて設定されたグレード「GRスポーツ」。

GRとはTOYOTA GAZOO RACINGがモータースポーツに参戦して得られたノウハウを、市販車に注ぎ込む事により開発された車両に付けられる。いわばメーカー内のスポーツカーブランドの位置付けとなる。

新登場のランドクルーザー・GRスポーツは、長年参戦しているダカールラリーからのフィードバックを行って作り上げたと語られている。

「ランドクルーザー×GR」は、どんな化学反応をユーザーに見せつけてくれるのか?
GRスポーツ・ガソリンモデルの試乗レポートをお届けする。

試乗協力店・GR Garage 宇都宮 つくるま工房
https://www.corolla-tochigi.co.jp/file/special/33201/386/gr_garage_utsunomiya_tsukurumakobo/

■フラッグシップSUVたる佇まい


試乗協力店に到着すると、ランドクルーザー・GRスポーツ(以下:ランクルGR)が店頭で待ち構えていた。

画像1

画像7

トヨタのフラッグシップSUVとしての堂々たる佇まい。全長4965mm×全幅1990mm×全高1925mmのビックサイズは、流石「ランドクルーザー=陸の巡洋艦」という車名が表す通りの風格と言える。

そのボディサイズに圧倒されると同時に「この大きさだと、街中は運転しづらそうだなぁ...」と一抹の不安を覚えてしまったのだが。

その不安は、実際に運転すると共に拭い去られる事になる。

ここで、今回の試乗目的を先に述べておこう。ランクルGRにてオンロードを走る上で気になっていた、ドライブモードセレクトによる乗り味の違いを体感したく試乗に出向いたのだ。ランクルGRには、各シチュエーションにおいて手動で切り替えられる5つのドライブモードセレクトが搭載されている。

各モードの内訳は、以下の画像をご覧いただきたい。

画像2

〈引用:トヨタ自動車(株)〉

今回は街中で使用頻度の高いであろうNORMAL・COMFORT。そしてもっともスポーツ走行にベクトルを振ったSPORTS+を試す事にした。各モードでどんなランクルGRを体感できるのか、乗り出し前から楽しみであった。

■予想外の"運転しやすさ"

いざ試乗開始。ちなみに過去モデルも含めて、人生初のランドクルーザーの運転だ。最初はデフォルトであるNORMALモードで走り出した。

市街地コースに合流して早々、最初の驚きが訪れる。

車内の静粛性が、かなり高いっ!
ロードノイズはおろか、エンジン音もあまり聞こえない。前述した車格&3.5Lエンジンを搭載している車とは思えない、澄んだ静けさ漂う上質な車内空間が展開されていた。

それもそのはず。今回の300系では静粛性アップが徹底的に図られている。遮音材・吸音材の最適配置や、風切り音対策で各パーツ形状の外形最適化。

そしてエンジン車では、エンジン音&吸排気によるこもり音を制御音声で打ち消すアクティブノイズコントロールまで採用されている。

複数人で搭乗した際も、雑音がうるさくて大声で会話する様な場面は、ほぼ無いだろう。また、アウトドアな趣味をお持ちのファミリー層にも十分オススメ出来る。

そして運転席に座ると、ボンネット及びフェンダーが視界下部に入り込む事により、走行中のフロント&サイドの車両サイズ感は掴みやすい構造となっている。よって冒頭に触れたボディサイズによる不安はすぐに解消され、むしろ快適とも言える運転フィールだ。

画像3

2眼メーターは視認性も良く、センター部は液晶のマルチインフォメーションディスプレイとなる

そして筆者の中で一番印象に残ったのは、車格から想像出来ない"軽やかな乗り味"

特に驚いたの、その軽快なハンドリング。トヨタ車初搭載となるアクチュエーター付きパワーステアリング&新設計されたプラットフォームの効果は絶大で、およそ2.6トンを運転しているとは思えないステアリングフィールを有していた。

画像4

質感が高く、操作性も良いハンドル

足回りもかなりフラット感が強く、無駄なバイブレーションなども少ない。おまけに発進&加速もスムーズにこなす為、全てが”標準”となるNORMALモードにて街中というシチュエーションでも不満なく運転できた。

この時点で、予想外の"運転しやすさ"を感じていた。

■ 走り好きも唸るアグレッシブさ


試乗コース中盤に差し掛かり、コーナーが点在する区間に突入したところでドライブモードをSPORTS+に入れた。
その瞬間、それまで大人しく息を潜めていた3.5L・V6ツインターボエンジンの力強い唸り音が車内に響き始めた。そして加速フィールがトルクフルなレスポンスに変化。一般道の速度域においても、アクセルを踏み込めばクルマがグイグイと前進していく、アクティブな加速を体感!

画像5

最高馬力:415PS/最大トルク650N•mの強心臓

また、同時にステアリング&サスペンションもスポーツ制御へと切り替わったのだが、これがまた秀逸な作り込みだった。
それまで軽快だったハンドルが明らかに重さを増し、ダイレクトなステアリングフィールになった。

重くなったとはいえ、不快感は無い。むしろ筆者同様、ワインディング路を好む走り好きのドライバーからしたら、これぐらいのダイレクト感がある方が気に入るかもしれない。

スピードを上げながら連続するコーナー区間に入ると、ランクルGRはこれまた予想外な動きを見せる。

約2メートル近い全高の車とは思えない、車体のロール(傾き)も少ないフラットな車体姿勢のまま、地を這う様なオン・ザ・レールなコーナーリング。
前述したダイレクトなハンドリングも相まって、まさかの"コーナーリングが楽しめるクルマ"となっているのに、目を丸くしてしまった。

このコーナーリングを実現している理由の一つとして、GR専用装備となるE-KDSSが上げられる。
詳細は以下の画像を参照してほしいのだが、簡単に説明すると前後の足回りに装備されている各スタビライザーを、状況に応じて電子制御する事により、いかなる路面状況でもフラット感を保とうとするメカニズムである。

画像6

〈引用:トヨタ自動車(株)〉

SPORTS+モードはGRらしくスポーツ走行性能を引き上げた、ワインディング路も十分楽しめるであろう仕上がりとなっていたのが、筆者個人としてもプラス要素と捉えたい。

そしてコースも終盤になり、COMFORTモードを試す。
注目点としては全モード内で唯一、足回りが”滑らかな乗り心地”と記載されている事だ。

実際に試してみると、NORMALモードに比べて乗り心地の感触が違うのが分かった。

足回りのスムーズさに関してはどちらも共通であるものの。顕著に違いが感じられるのは段差上を通過する際。大きめの段差だと、NORMALモードではそれなりの突き上げ入力が車内に入ってきていたのだか。COMFORTモードでは、全体的に柔軟性が増した事により、段差上を走行してもショックをうまくいなしてくれていた。

まとめるなら、NORMALモードは剛性感のあるキチッとした乗り味。

対してCOMFORTモードは柔らかさのあるフワフワ感のあるフィーリング。と言った具合だろう。

今回の試したモードを総括するなら、1人での街中はNORMAL。買い物など、家族を乗せるシーンではCOMFORT。そして、峠などのワインディング路ではSPORTS+。という使用イメージを描く事が出来た。

■SUVでも際立つGRらしさ


外観においてはGRらしく”走り”を意識し、オフロードでの走破性を視野に入れた造形となっている。特に注目したいのはフロントセクション。

画像9

画像8


色分けされたロアーガードが組み込まれた専用バンパー&ハニカムメッシュグリルがスポーティーさを醸し出す。そしてグリルには往年のランクルファンは唸るだろう、アルファベットの「TOYOTA」ロゴ。
このアルファベットロゴの影響力は大きく、最新のデザインの中にどこかクラシカルな雰囲気も感じるのは確かだ。
その他の外装部は、フロント同様に色分けされたリアバンパー。ブラック塗装されたミラー・ホイールアーチ・バックドア下端デカール。そしてマットグレー塗装の18インチホイールという具合だ。
他グレードに比べメッキパーツを減らし、随所にブラックを使用する事で全体的にシンプル且つマッシブな仕上がりなのが、他車種でも見受けられる”GRらしさ“とも言える。

内装に関しては、レイアウト&シート形状自体は他グレードと同様となるのだが。ランクルGRではハンドル・モニターのスタート画面・ヘッドレストにGRロゴが加わる。
ロゴマークの追加だけでも、スポーティーさを感じてしまう。

画像11

画像12

画像15

そして、内装色はGR専用ブラック・GR専用ブラック&ダークレッドのパターンが用意されている。

試乗車はブラックで、落ち着いた雰囲気だったのだが。GRのブランドカラーに沿ったであろうブラック&ダークレッドも、上質ながらもアクティブさ漂う雰囲気となるイメージだ。(ちなみに、グレード内で唯一のツートンカラーである。)

画像13

渋みのあるダークレッドが、良いアクセントだ〈引用:トヨタ自動車(株)〉

室内の広さは言うまでもないだろう。十分な室内空間&ラゲッジ容量だ。

画像14

3列目を倒すと広大なラゲッジを確保出来る

最後に注目したいのは、今回のランドクルーザーシリーズより、エンジンスタートスイッチが指紋認証式になった事だ。(トヨタ車で初搭載)

画像16

この採用はランドクルーザーの盗難率が高い事に対する、メーカーとしての対応策なのだろう。

■新たな歴史に刻まれるのに十分な仕上がり

ビックサイズSUVというだけで、勝手にイメージしてしまっていた様々な偏見を、見事に覆してくれたランクルGR。

これほど運転しやすい&運転が楽しいクルマだったとは!

時にはアクティブに。時にはファミリードライブに。多種多様なシチュエーションにも対応でき、且つ車格からは想像出来ない軽快さも持ち合わせている。GRにいたっては、コーナーリングも楽しい。

最新のオールラウンダーとして、是非オススメの1台と言えるでしょう。

70年続いたランドクルーザーの歴史に、新たに強く刻まれるのにふさわしい出来栄えだったなと、筆者は思っています。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?