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[カーコラム] 車って、不思議だなぁ

「車を乗り換える」という行為は、なにも車好きな方に限らず、全てのクルマ所有者にとって一大イベントだ。
今回は私の妻が、車を乗り換えた時のエピソードをご紹介。

◾️妻が、ついに車を乗り換えた

はじめに述べておくと、私の妻は物持ちが良く、気に入った物は長く使い続けたいという性格の人だ。

そんな妻の愛車はダイハツのムーブカスタム(以下:ムーブ)だった。

元•愛車のムーブ

実に15年という長い時間を、このムーブと共に過ごした。

新社会人の時、一目惚れして選んだという。

運転好きなのもあり、納車後は友達や兄弟を乗せて、近場から遠くまで様々な場所にドライブに出かけた。

時にはムーブで車中泊をしながら、友達と女二人旅をした話は、今でも印象深く覚えてる。

最後の最後まで、大きな事故を経験する事もなく、沢山の思い出をムーブと共に作ってきた。

さらには、手放す直前まで妻が言い続けていた事がある。

「いまだにカッコいいと思うし、元気良く走ってくれる。全く飽きないし、ホントに気に入ってるよっ!」と。

1台の車を15年間ずっと好きであり続ける"その姿勢"は、凄いの一言。夫としてだけでなく、1人の車好きとしても、まさに尊敬に値する。

最長だと5年で車を乗り換えている私からしたら、ホント頭が上がらない思いだ。

ムーブからしても、妻は最高のオーナーだったことに違いないだろう。

では、そんな妻が"なぜ"車を乗り換える事になったのか?

◾️乗り換えの理由は、家族のため

長い時間を1台の愛車と過ごしてきた妻が、車を乗り換える事になった理由。

それは…とてもベタではあるが、「家族」のためだった。

去年の10月に第一子となる長男が無事に生まれ、3人家族となった我が家。

子供の成長は早く、親としては毎日が驚きに満ちている日々を過ごしている。

休日となれば、私のワゴン車でドライブや買い物に出かけるのも、しばしば。しかし会社員の私は、平日の日中は不在となってしまう。

ここで、私としては予想外だった状況が起こる。

妻と息子が、妻の車で2人で出かける機会が思ったより増えたのだ。

妻は現在、育休を取得しているので、常に子供と2人で家に居る状態である。外出といえば、日中に子供の日光浴も兼ねて、よく散歩に出掛けている。

しかし、食料品の買い出しなどの機会には車を使わざるを得ない。私の住む栃木県は車社会なのだから、避けようがない事態だ。ただ、それも頻繁に起こる事ではないのも理解していた。

ところが思いの外、子供と2人で妻の実家に出かける機会が増えたのである。妻の実家は、自宅から片道40キロ程の位置にあり。途中にはスピードレンジの高い環状線区間もある。

妻いわく

「息子を両親や兄弟に、沢山会わせておきたい。働き始めたら、その機会も減るから」

「息子を乗せての運転に、早く慣れておきたい」

との事。たしかに私としても異論は無く、むしろ積極的に動いてもらえるのとても助かっていた。

しかし子供を連れての車移動となると、おのずと荷物も増える。さらにありがたい事に、実家から食料品や日用品などを頂いてくるので。ムーブの中を荷物でパンパンにして帰ってくるのが、毎度の事だ。

また買い物先の駐車場では、普通ドア車では子供の乗り降り時に、やはり気を使う。休日なら私も居るから、隣のクルマにドアパンチしない様に押さえておくなどのサポートが出来るのだが。妻1人となれば、なおさら気を抜けない状況となってしまう。

さらに後々には、保育園への送迎も始まる予定だ。

この様な状況を間近で見ている私としても、

「もうちょっと負担を減らせないかな?」

「やっぱり、荷室も余裕があり、スライドドアで乗り降りも楽な車が1台欲しいよなぁ」

「…そろそろ、車を買い替えるか?」

という考えが、沸々と湧き上がってきていた。

そして、運命のゴールデンウィークを迎えるのであった。

◾️わずか4日間の物語

「キッカケってホント些細で。そして、突然訪れるもんだよなぁ」と、心底思わされる。

そして同時に、自分の計画性の無さにちょっぴり落胆していたりもする。

そんな前置きはさておき、本題に戻ろう。

「妻の新たな車を、すぐにでも購入すべきか?」

そんな考えが頭でちらつきながら、中々言い出せない日々を過ごしていた私。事態が大きく動いたのは、ゴールデンウィークだった。

私が1人で、某有名カー用品店に買い物に行った時。連休フェアという事もあり、店外スペースには「特選中古車」と称して、いつもより多数の中古車が展示されていた。

正直なところ、いつもならスルーして、さっさと店内に入ってしまうところなのだが。

カラーバス効果が働いているせいか、とある1台が私の目に飛び込んできた。その車は、以前に妻が「次に乗るとしたら〜」と話していた、まさにそれだった!

実際に展示車を見てみたところ、コンディションはとても良く。それでいて、値段も相場より安い乗り出し価格となっていて。頭の中では、勝手に数通りのシミュレーションが浮かんでいた(笑)

とはいえ、その場で購入となった訳でもなく。一通り見たら、足早にお店を後にしたのだった。

しかし、人との出会い同様。車との出会いもどこか運命的なものがある。

帰宅後に、その車の事が頭から離れない状態となってしまった。購入もしていないのに、グレードやスペックなどを自然に調べずにはいられない。魅力的な車に出会った時に、同じ様な経験をした事がある人もいるんじゃないかな?

ここまで魅せられてしまったのが、重たい一歩を踏み出す原動力になったのは当然だった。

その日の夜、意を決して妻に提案してみた。

「明日、クルマ見に行かない?」と。

妻も多少は驚いていたが。案外、私の一言待ちだったらしい。まぁ私がローンを組むのだから、そうなるか。

それからはプチ家族会議となり。それぞれの考えをすり合わせた結果、「気に入る車があったら、乗り換えよう」という結論となった。
そして翌日、家族3人で車を見に行く事になった。

前述の通り、妻が以前より好んでいた車種なのもあって、実車を見た反応は上々。
「もう8割方、決まっちゃうかな?」と思っていたのだが。

「中身も値段も良いけど、色がね〜...」と妻が一言。

実はその車、コンディションの割に値段も安いのには、当然ワケがある。元々、企業の社用車だったのだ。その為、車体色は"いかにも社用車"と言える、無機質なシルバー。

確かに妻好みの色では無い。ここに関しては、私の失敗でもあった。という事で、残念ながら商談までは至らなかった。

「また、他の車を探してみるかー」と、一度上がったテンションを落ち着かせながらの帰り道。

まだ風向きは変わってなかった。

妻が某中古車サイトを見ていて気づく。「実家の近くに、同じクルマで、好きな色のが1台がある」と。またまたドラマチックなのが、ちょうど2日後に妻の実家に遊びに行く予定となっていたのだ。その時に、ついでに見に行ってみようとお店にアポを取り。

そこに置いてあったクルマが、見事に妻の新たな車となったのだった。

ちなみに、私がカー用品店に出向いたところから始まり。妻の実家近くのお店で、商談成立となるまで。わずか4日間の出来事であった。

◾️送り人は…私

新しい車が決まり、納車となるまでの一か月間は、私も妻もムーブとの残り時間を、各々に過ごした。

と言っても、私はいつもより入念に感謝の気持ちを込めて洗車をしたぐらいで。メインは妻になるのは当然。

妻は毎週、子供を乗せてドライブに出掛け、ムーブと写真を撮るなど。愛車と残りの時間を過ごしていた。

ムーブと息子

そして迎えた別れの時。最後の運転手となったのは、私だった。

乗り換えに際して、ムーブは販売店に買い取って貰えたので、新しく購入する車と入れ替えとなった。そこで、新しい車へのチャイルドシートの取り付けなどが発生するから、私がお店に持っていった。

妻と息子に見送られながら、最後のドライブが始まった。

最後の最後まで、ムーブの調子はとても良かった。違和感やトラブルもなく、元気いっぱい走ってくれた。

妻の愛車とはいえ、道中はセンチな気分にもなる。

「付き合い始めの頃は、よく助手席に乗ってドライブ行ったよなぁ」などなど。妻ほどではないものの、ムーブとの思い出を振り返ってみたり。

妻の足となり、時には喜怒哀楽を共に過ごしてきた15年間の労を労う気持ちで一杯だった。

そんなメンタルに拍車をかけたのは、ランダム再生していたオーディオから流れてきた、この曲。

〈YouTubeより引用〉

 
なんともドラマチックな幕引きとなったもんだ。

そして無事に、お店に到着して最後のドライブを終えた。

エンジンを切る瞬間に「お疲れさん」と言葉をかけ、ハンドルを2回ポンポン叩き、ムーブとのお別れを果たしたのだった。

◾️終わりに

「車って、不思議だなぁ」と常々思っている。

"1台の機械"のはずなのに、共に移動し、共に長い時を過ごしていく中で、自分の中の一部とも喩えてしまうような感覚が、車には確実にある。

そんな関係性を築ける車が、愛車と呼べる存在であり。

そして、そう呼べる車と出会える事が、ドライバーの喜びに繋がる。(もちろん、全てのドライバー•全ての車が、そうなるとは思ってはいない)

だからこそ、手放す時には何とも言えない寂しさがある。自分で決めた事なのに。

例えば日用家電などを手放す時に、車と同じことが起こるだろうか?

全く無いとは言い切れないが。新しく購入した製品への楽しみ&期待が高く。今まで使っていた物は、どんなに長く使っていようが、すぐにお役御免になるケースがほとんどではないだろうか?

やはり車は、機械でありながら"相棒"と呼べる存在なのだろう。

メーカーも車種も年式も関係ない。ライフスタイルの一部になれる車と、より沢山出会える。そんな人生を送っていきたいものだ。
























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