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特集:SVB(シリコンバレー・バンク)の破綻について

 こんにちは、投資カピバラ(@Capybara_Stock)と申します。
このnoteでは、いま話題になっているSVB(シリコンバレー・バンク)の破綻について、現状判明している情報やニュースを時系列順に整理したものです。

本noteの内容は3/12(日)22:00~からのスペース「カピバラジオ #83」でも詳しく解説したいと思いますので、ぜひ聴きに来てください!(宣伝)

 追加情報があれば随時更新していきます。

本記事は全編無料でお読みいただけます。
もし本記事に価値を感じてくださった方がおられましたら
投げ銭をいただけますと大変嬉しいです。


●SVBってどんな会社?

SVBファイナンシャル・グループ(NASDAQ:SIVB)は米シリコンバレーを中心に事業を展開する銀行持ち株会社で、全米第18位、40年の歴史を持つシリコンバレー最大の銀行。主にベンチャー企業やスタートアップへの融資などを行なっており、米VCが支えるスタートアップ企業のほぼ半数、昨年株式を公開したテクノロジーおよびヘルスケア分野のVCポートフォリオ企業の44%と取引がある。
S&P500指数構成銘柄の一つでもあり、
直近3/7にはForbesのAmerica's BEST BANKSに5年連続でランクインしていた。


●何が起きた?

3/9(木)、SVBは保有する210億ドル(約2兆9000億円)相当の証券を売却したことと、財務強化のために22億5000万ドルの増資を計画していることを明らかにした。
このような事態を招いた原因は米国の大幅な金利上昇にある。
・保有していた住宅ローン担保証券(MBS)や米国債といった有価証券の下落
・利上げで金融環境が厳しくなったテック企業が預金を引き出したことで手元資金が枯渇した
 ⇨損失を抱えた証券を売らざるを得ない状況に追い込まれた。

 この事件を受け、多数のベンチャーキャピタル(VC)ファンドはポートフォリオ企業に対し、SVBへのエクスポージャーを限定し預金を引き揚げるよう提言した。SVBのグレッグ・ベッカー最高経営責任者(CEO)は取り付けを回避するため、VCを含む銀行の顧客と電話会議を開き「冷静」を呼び掛けた。
 しかし呼びかけむなしく、この日1日で420億ドルの預金が引き出される。


https://www.wsj.com/articles/silicon-valley-banks-meltdown-visualized-3da2263b?st=rnaxqxf68ph2yj0

この日、SVBの株価は-60%と大暴落した。また、時を同じくして暗号資産決済ネットワークを運用する銀行持株会社シルバーゲート・キャピタル(SI)が銀行業務を縮小し清算する計画を明らかにしていた。KBW銀行株指数は7.7%下落と約3年ぶりの大幅安になった。

余談だが、SVBのCEO,CFO,CMOは3人揃って2月に株を大量売却しており、内部では破綻懸念は高まっていたとみられる。


翌3/10、株価の下落を受け、SVBは株価の急落により増資を諦め、身売りのためのアドバイザーを雇ったとCNBCが報じた。

しかしSVBの奮闘むなしく、カリフォルニア州の金融保護当局によって閉鎖され、連邦預金保険公社(FDIC)の管理下に置かれたと、両当局が発表した。SVBは過去10年余りで最大の米銀破綻となった。

 WSJの記事によると、米国史上でもワシントン・ミューチュアル銀行に次いで2番目の規模となる。

https://www.wsj.com/articles/silicon-valley-banks-meltdown-visualized-3da2263b?st=rnaxqxf68ph2yj0

●なぜここまで大騒ぎしているのか?

・「銀行が破綻した」と聞いて投資家が連想するのは2008年のリーマン・ブラザーズの破綻に端を発するリーマンショックを置いて他ならない。規模の大きい銀行となるほどさまざまな産業の資金繰りを支援している立場となるため、一行の破綻が連鎖的な信用収縮による金融危機を招くことに繋がりかねないからである。
・特に今回のSVBの破綻は、2022年から始まったFRBによる金融引き締めの負の側面が表面化した象徴的な出来事とも言えるからであろう。

・ただし、今回の件をリーマンショックの再来と捉える見方は少ない。リーマン・ブラザーズの破綻は低所得者を対象とした高金利住宅ローン「サブプライムローン」の融資基準が緩和されてしまった中で、証券バブルが発生→地価下落と共に返済が滞る、というシステミックな問題だった。

・SVBの場合は余剰預金を住宅ローン担保証券(MBS)に投資していた結果、米国の利上げの影響で評価損が拡大したという話であり、SVBのリスク管理が甘かったことが原因だったと言える。(利上げで債券の価格が下がることは金融を学んだ人間なら常識のはずだが、なぜ損切りしなかったのか。。。)

・本来銀行には流動性カバレッジ比率などの厳しい資本規制が課せられているが、SVBは下記図のCategory IVに該当しながらも、wSTWF:加重短期ホールセール資金?が$50bに満たなかったため、規制を免れていたと見られる。


●今後の動きは?

・FDICが破綻管財人となって破産処理を進める.
 ただし業務停止となるわけではなく、持ち株会社のみを取り潰したうえで、実業務を担当する会社の譲渡先を探すまでの暫定的な措置である点に注意。
・保険対象の預金者は13日午前までに資金にアクセスできるようになるだろうと説明(保証上限は$250k(約3375万円))
 しかし、この保証上限では預金のうち90%以上は保証対象外となってしまう。

https://www.wsj.com/articles/silicon-valley-banks-meltdown-visualized-3da2263b?st=rnaxqxf68ph2yj0



大手銀行への影響は限定的と見られている。
 ⇨JPM,MSなどの大手銀行の顧客は幅広いセクターに分散しており、BSも強固であることから、致命的な影響は受けないとみられている。


・一方で預金者であったスタートアップ企業への波及が懸念されている。
 ⇨預金を一定額預け入れることがローン貸付の条件の一つに
 ⇨目先、スタートアップで従業員への給与支払いの持続が課題に
 ⇨上場企業でもロブロックス、ROKU、Unityなどが多くの資金をSVBに預金していたことが判明。
 ⇨
ステーブルコインを運営するCircleも、同社が発行したUSDコイン(USDC)の裏付けとなる準備金約400億ドルのうち、33億ドルがSVBに預けられており、米ドルとの1対1のペッグ(連動)を維持できなくなった。・また、FRBがSVBに対して緊急調査に入ったという報道も見られた。


●週末の動きは?

・米連邦預金保険公社(FDIC)は早ければ13日に顧客の保険対象外預金の一部返還を目指している。当初の支払いは保険対象外預金の50%以上の数字が水面下で検討されているという。
 ⇒やや安心材料。現在返還のために資産処分が行われている。
 ⇒全額の保証は困難とみられる。

また、同時並行でSVBの事業売却も模索されている。一部記者の情報ではブラックストーンやアポロなどが買収に興味を示しているとの情報もあるが、確定的なものはない。

今後も予想される銀行の破綻の際に預金を保護するため、FDICとFRBは預金を保護するためのファンドを設立することを目指している。

SVB破綻の影響は支店のある中国やデンマーク、ドイツ、インド、イスラエル、スウェーデンなどにも拡大しており、英国では政府による介入を求める声が強まっている。
 ⇒一方で安易な救済は不公平感を招き、業界モラルが崩れる可能性。
 ⇒2008年にはベアー・スターンズ銀行がサププライムローン問題で破綻、JPMに救済買収されたが、その半年後にはリーマンが破綻した。

・SVBにスタートアップ企業が寄託していた預金をヘッジファンドや銀行が大幅な割引価格で取得しようとしている。オークツリーなどのヘッジファンドは、額面1ドル当たり60セントから80セントのレンジで預金の買い取りを提案した。
 ⇒預金がどれだけ取り返せるか不明な中で、利用するスタートアップが出てくるかも。


●投資家はどうすべきか?

 ⇨以降の内容は3/12(日)22:00~からのスペース「カピバラジオ #83」の中でお話していきたいと思います。お楽しみに!


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