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09/23 今日の掘り出し物

「最後の一杯」の扉が勢いよく開き、若い冒険者が飛び込んできた。
「サム!こっちか?」

宝石商のサムは、いつもの隅のテーブルから顔を上げた。
「おや、ティム坊や?」
ティムは胸元から小さな布袋を取り出し、サムの前に置いた。
「鑑定頼む…ダメか?飲んでるか?」

サムが袋を開けると、中から青みがかった小さなダガーが姿を現した。
常連客のジャックが、興味深そうに首を伸ばす。「へえ、珍しい色だな」
サムは眼鏡越しにダガーを細かく観察し始めた。
「ふむ...これは面白いねえ。エルフシルバーの鞘...だけかな」

「いくら出す?」ティムが期待に満ちた声で言う。
サムは慎重に言葉を選んだ。「確かに珍しい素材の組み合わせだが...」
ジャックが口を挟んだ。「でも、そんなもんじゃダメなのか?」

サムは首を振る。「どっちかと言えばこいつはアミュレットだ。素材だけじゃない。エンチャントが重要なんだ」
ティムの表情が曇る。「エンチャント...ですか?」
サムは眼鏡を上げて額に乗せ、ダガーを掲げ刃に光を当てた。すると、かすかに文様が浮かび上がる。

「おお!」ジャックが声を上げた。
サムの目が輝いた。「おそらく風のエンチャントだ。そこまで強力ではないが二つ...重なっている…詳しくは先生にでも視てもらわんとわからんが」
ティムは困惑した顔で聞いた。「高いんだろ?」

サムは笑みを浮かべた。「素材とエンチャントの相性が抜群だ。風の力で切れ味が増す上、使用者の動きも速くなる。まあ短いから武器としての実用はほぼないが…これ何階で?」

「4階だ!」
ジャックが口笛を吹いた。「へえ、運がいいな、ティム」
サムは真剣な顔でティムを見た。「気が変わらんならあとで店にこい...普通のシルバーダガーなら20ゴールドってところだが、これなら...500ゴールドは下らない」

酒場が静まり返った。「っし!」ティムは嬉しそうに飛び跳ねた。
ジャックが呆れたように言う。「500だって?冗談だろう?」
サムは首を振った。「有用なアミュレットはそんなに多くない。欲しがる奴は大勢いるさ」

ティムは幸せそうに目を輝かせた。「サム、あとで店だな」
取引が成立し、ティムが上機嫌で酒場を出た後、ジャックはサムに尋ねた。「あんなの、本当にそんなに価値があるのか?」

サムはにやりと笑った。「坊やハメても面白いことなんぞないわ。面白いのは、ティム坊やがあれをどこで見つけたかってことさ。明日は混むぞ」
ジャックは苦笑いを浮かべた。「くそ...俺も行くか」

鑑定システム

またウィザードリィの話しますが、鑑定のシステムが好きなんですよね。
モンスターの不確定名も含めて、あのじわじわと正体が明らかになっていく感じ。たまらないものがあります。最初は「謎の生物」とか「何かがいる」みたいに、本当に何もわからない。得体の知れないものに遭遇した、あのゾクゾクする感覚。それがウィザードリィの醍醐味の一つだと思う。
「ケンタウロスっぽい何か」とか「多分ゴーレム系」みたいに、少しずつ情報が鮮明になっていくと、まるで推理小説を読んでいるような感覚が味わえるんじゃないかなと思えます。まあ呪文で一発でわかるようになっちゃったりと無意味化もしますし、本家でもあまり活きてないシステムではあります。ラツマピックとかロミルワとか使わない縛りやるとそれはそれで味わい深いです。名前が確定した時の、あの安堵感と達成感。長い道のりを経て、ようやく正体を見破った喜び。ウィザードリィをプレイしたことがある人なら、きっと共感してくれるんじゃないでしょうか。まあ知ってるとやっぱり無意味化ですが。
もっと活かしたい。レッドドラゴンかと思ったらワイバーンだったり、グレーターデーモンかと思ったらデーモンロードだったり。モンスターの不確定名は、奥深さを象徴するものにできると思います。
特に序盤なら、名前が確定してないモンスターとの遭遇は本当に緊張するでしょう。「強いのかな?弱いのかな?逃げるべき?戦うべき?」と、頭の中で色んな考えが渦巻く。そうあって欲しいですね。
アイテム鑑定はガチャに似た悦楽もある。「謎の薬」や「呪われた剣」。最初は一体何なのかわからない。鑑定を進めていくと、「体力回復の薬」や「攻撃力+5の剣だけど呪われている」といった情報が明らかになる。
もちろん、鑑定をミスって危険なアイテムを使ってしまったり、逆に強力なアイテムを見逃してしまうこともあります。でも、それも面白さの一部だと思います。
鑑定システムは、あまり他のゲームにはない独特の魅力を持っています。あのシステムがあるからこそ、自然と想像させる形になっている。そう感じています。

ところで進捗が全然ない言い訳をしたほうがいいだろうか。明日書こう。

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