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【詩】世界の剥離

並行世界のように桜は咲いた
花のひとつずつに小宇宙
群がりつつ枝分かれする小世界
その世界のひとつずつが
いとなんでいる小さな生成と消滅
すずなりの有と無は瞬いて白く白く
枝をのばした
この世の裂目は
大きな桜の木になった

世界を侵食するように桜は咲いた
この世を包括する空の碧を
歪めて
生成される空白が花を象る
宇宙のなかへ咲くもうひとつの宇宙
誘爆しあい
激しく泡立つ
白い世界の集まりは
渦をまいてこの世界にあらわれた

さらさらと空間から剥離する
この世へちりぢりに砕け落ちる
ひとひらずつに
世界は世界が世界と
崩れ去ってしまう
わたしのかつていた
世界だったのかもしれないし
わたしがいたとしても
ありえた世界だったの
かもしれないし
いま此処にいるわたしと
触れあうことのない
別の宇宙で花ひらいて消えた
無数の世界たちを
踏みしだいて歩くわたしに
ふる
世界の欠片


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