![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/126245547/rectangle_large_type_2_5f7e917e99de707bfc6ee7db929a4c90.jpeg?width=1200)
2023年に聴いた演奏会の振り返り(TEXT by Hiroaki)
今年行った演奏会は全部で125公演(去年は129公演)。そう、あまり減ってない(ちなみにクラシック以外のライブは13回+フェス4回)。まぁそれはさておき昨年と同様にジャンルを分け、印象に残った公演をオーケストラ編10公演と室内楽・リサイタル編5公演に、今年は新たにコンチェルトのソリスト編を設けて時系列順に紹介する。そして最後に推し活の活動報告を。
オーケストラ編
1月26日 ソヒエフ/N響 ラヴェル:《ダフニスとクロエ》第1・2組曲、ドビュッシー:《海》
魔法のようなソヒエフの指揮を堪能。まるで体操のリボンのように指揮に音がまとまって高揚していく…とても不思議な感覚。実はソヒエフの実演にはこれまで意外と縁がなくて、これが3度目くらい。この月のベートーヴェン4番も超充実で、この頃からソヒエフが好きになり始める…。
1月29日 カーチュン・ウォン/日フィル ラフマニノフ:交響曲第2番
この曲を120%聴かせてしまう、ラフ2好きには堪らない最高の演奏だった。3楽章のクライマックスへの持って行き方はまるで花びらが開くような美しさ。全くだれずにこれだけ余すところなく聴かせてくれちゃ文句はありません。大号泣。
3月18日 佐藤俊介&東響 ベートーヴェン:交響曲第1番、メンデルスゾーン:弦楽のための交響曲第8番(管弦楽版)他
水谷さん最後の東響の演奏会出演……だったけど、そんな感傷に浸る間もないほど鮮烈な演奏だった。まるで声に出して会話するかのような異次元のアンサンブルに驚愕。シュポアのコンチェルトもこんなにもスタイリッシュでカッコいい曲だったのかと耳から鱗だった。
![](https://assets.st-note.com/img/1704023413977-UPNobiOX5e.jpg?width=1200)
4月16日 東京春音楽祭 プッチーニ:《トスカ》
この日はもうスカルピアを歌ったターフェルが凄いのなんのって!!!歌い始めた瞬間に会場の空気を一変させ、その圧倒的な表現力の豊かさに痺れた。あの2幕は本当に最高。しっかり悪役なのに、どこか品も感じさせる忘れられないスカルピア。今年はこの後にトスカを3回聴いたけど、スカルピアだけはこのターフェルを思い出してしまうのだった……。
5月12・14日 ノット/東響 R.シュトラウス:《エレクトラ》
昨年のサロメに続き、今年もまた一生モノの体験をしてしまった……。この単語をあんまり使うと安っぽくなってしまう。が、事実なのだ。個人的には今年のベスト。初日はミューザ2回最前列で表題役ガーキーの歌声を浴び、オケのストレートパンチを食らわせるような演奏にも打ちのめされた。そして2日目、この日の最後の初日の比ではない壮絶極まりない追い込みに魂を持って行かれそうに……(某コンマス曰く「聞いてないよ…笑」)。ノット監督のドSっぷりが遺憾なく発揮されていた。これぞまさしく異次元の音楽的高揚。サントリーだと響きの豊かさも加わり序盤から泣いていたのだった。さてばらの騎士はどうなりますかな?
![](https://assets.st-note.com/img/1704022574643-sp3fbxSx1e.jpg?width=1200)
5月29日 尾高忠明/都響 エルガー:交響曲第2番
去年ラトル/LSOで聴いて開眼したエルガー2番であるが、それと互角の充実の名演。がっつりストレートに聴かせてくれる尾高さんの指揮も最高。そして何より曲が良いのよ…。
6月24日 デュトワ/新日本フィル ベルリオーズ:幻想交響曲
デュトワマジック炸裂。新日フィルから聴いたことのないような音の引出しがどんどん出てくる。リズムのキレ、音の力感、細部の細部まですべてがニュアンス豊か。終演後は言葉を失った。これは2日間聴くべきだった。
10月28・29日 井上道義/群響 ショスタコーヴィチ:交響曲第4番
初日を高崎でも聴いたけど、特に2日目の東京公演!あまりの鮮烈さに、号泣しながら魂を持って行かれそうなくらいのめり込んで聴いた。それくらい凄かった。日本人オケ・指揮者だと真面目になりがちなショスタコーヴィチの音楽の「おもちゃ箱」の部分でちゃんとキャラクターが出ているのはさすがミッキーなんだよな……。(5月に名フィルで聴いたクセナキスも凄かったけど)
![](https://assets.st-note.com/img/1704023285511-DEgGMjx4Dh.jpg?width=1200)
11月14日 ソヒエフ/ウィーンフィル プロコフィエフ:交響曲第5番
指揮がソヒエフに変更となりこれは聴かねばと追加発売で何とか購入。聴けて本当によかった。キレも十分で重心低めの息の長いソヒエフのロシア音楽を展開しながらも、ウィーンフィル本来の美質は全く損なわないどころか最大限に引き出されたきらびやかな音に号泣。この2つが全く邪魔せずに昇華するという衝撃。聴いていて幸せなこの感覚ってもしや……はい、ここでとうとうソヒエフが私の中でノット監督に続いて2人目の推し指揮者となりました。来月のN響が楽しみすぎる。
11月23日 K.ペトレンコ/ベルリンフィル レーガー:モーツァルト変奏曲、R.シュトラウス:英雄の生涯
実はこれがベルリンフィル初実演。そして究極のレーガーとシュトラウスサウンドだったのだ!シュトラウスは開始1分で涙腺崩壊してそのまま最後まで涙垂れ流し状態……。語彙力完全喪失。近距離で聴いたのに決して喧しく鳴ることはない完璧なバランス、すべての音が有機的に結びついていく。もう一つのプログラムも凄かったけど、こちらの方が衝撃的だった。
ソリスト編
7月14日 ゲルシュタイン(ギルバート/都響) ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番
チラシに「これぞワールドクラスのラフマニノフ」とあり大きく出たなと思ったけれど、全くその通りの見事なものだった。打鍵はダイナミックだけど、繊細できらめく弱音、音楽の流れを全く失わない素晴らしいソロ。
4月27日 Pfマリー・アンジュ・グッチ(P.ヤルヴィ/N響) ラフマニノフ:パガニーニの主題による変奏曲
久々にファンになりそうなピアニストに出会った。ピアノの上で響きを作っているのが素人耳にもしっかりわかる。12変奏の揺らし方がなんとも絶妙。
4月21日 Vc上野通明(都響) ルトスワフスキ:チェロ協奏曲
6月に東響で聴いたエルガーも素晴らしかったけど、ジュネーヴのコンクールで弾いたルトスワフスキは圧倒的だった。とてつもない集中力と圧倒的な気迫で聴かせるソロに震えた。
3月28日 Vnコパチンスカヤ(都響) リゲティ:ヴァイオリン協奏曲、マカーブルの秘密
まずコパチンスカヤの弾くリゲティを日本で聴けること自体夢のような出来事である。そして演奏のなんと美しいことか!!もやは神秘的と言ってもいい。あまりの凄さにいつの間にか涙が流れていた。最後には一緒にシャウトできたのも最高にうれしい!マカーブルではコパチンスカヤ劇場開幕。こちらはコパチンスカヤの弾き振りでも良かったくらいだが……。
10月31日 Pf藤田真央(ビシュコフ/チェコフィル) ドヴォルザーク:ピアノ協奏曲
リヒテルとクライバーの録音で慣れ親しんだ曲だが、この日が初実演。美しく煌めく真央君のピアノがこの日も最高。2楽章の洗練された響きが忘れられない
室内楽・リサイタル編
2月26日 Vn小林壱成&Pf小澤佳永
ハイドン、ショスタコーヴィチ、ヘンデル、タルティーニと凝ったプログラミングとその4曲を見事に描き分けた充実の演奏会。特に自然な高揚でしっかり聴かせる悪魔のトリルの見事な事よ……。残響ゼロの環境でも全く音がきつくないというのも衝撃。これからは今まで以上に追っかけねばと強く思ったのだった。
3月21・23日 Vnコパチンスカヤ&Pfアホネン
水戸で聴いた21日は2人の方向性が一致した音楽の説得力に引き込まれていったのだが、やはりトッパンで聴いた23日の衝撃度が尋常じゃなかった。アンタイルのヴァイオリンソナタがコパチンスカヤ全開で聴いていてトランス状態になったのが忘れられない……。
9月25日 Vn庄司紗矢香、Pfグローヴナー&モディリアーニSQ ラヴェル:弦楽四重奏曲、ショーソン:コンセール
お目当てのモディリアーニSQの緻密なラヴェルに痺れた。庄司さんの技巧が前面に出ないひたすら音楽的で豊かな楽器の鳴りにも感銘。
10月10・11日 Vnファウスト、Vcゴルツ&Cembベザイデンホウト
毎度ながらファウストの無駄な力が1ミリもない弓使い、純度の高い音に感服。
11月25日 Pfレヴィット
なんと中身の濃い音楽!没入度の高い音楽から生まれる深遠な世界。この人にしかできない音楽。
推し活の活動報告
さてさて今年も推し活の方はというと、過去一番に充実していた。特に秋から年末にかけては毎週推しのどなたか一人にはお会いしたり、演奏を聴いたりできたくらい凄かった。
ノット/東響
今年は唯一新潟公演を聴けず皆勤賞ならず……。ただ先述のエレクトラもそうだけど、他にもたくさん刺激的な回があったな。ノット監督が気を発しまくっていたブルックナー1番の大熱演には涙腺大崩壊だったし、11月のリゲティ、ドビュッシー、ブーレーズ、アマンというこだわりプロにも大興奮。東響Vcセクションのメサジェスキスは最高だった!ハンマー5回で話題となったマーラー6番、グラゴルミサも印象に強く残っている。そして年末の第九も2日目のスリリングさに大興奮だったのも記憶に新しいところ。
水谷さん
水谷さんといえば今年はお城に行きましたねぇ。もうあちこちで散々しゃべっているので詳しくは書きませんが、それはもう幸せな旅行だった。音楽だけでなく、趣味を同じくする友人としてお城に飛行機まで語り合えたのだから。さらに城マニア同士でお城に行けたのも初めてだったのでそれはもう感激。それだけでなくて演奏も回数は多くないもののあちこち追っかけできた年でもあった。都響、神奈川フィル、名フィル(シェヘラザードのソロが素晴らしかった)といったゲストコンマス回以外にも大阪で聴いたブラームスのヴァイオリン協奏曲、原宿で聴いたショスタコのピアノトリオ、稲城で聴いたピアノ六重奏、八王子で聴いたくるみ割り人形などどれも思い出深い。いや、本当に凄い人。
壱成さん
壱成さんにも今年は本当にお世話になったし、よく追っかけた。追っかけすぎてとうとう舞台上まで追いかけましたからね笑。これもまたあちこちで散々話しているけれど10月にアマオケで一緒に演奏できたのは一生の思い出。それ以外に東響コンマス回以外だと時系列順に川口のヴァイオリン2本の回、宮益坂でのリサイタル、東響モーツァルトマチネ、ステラトリオ(3月と11月)、赤坂で聴いたベートーヴェンのVnソナタ、ラ・ルーチェ、板橋でフォーレの室内楽、サントリーのオルガンプロムナード、八王子のくるみ割り人形、芸劇ブランチコンサート…今年一番追いかけてますね。ただ2月に東響で弾いたシェヘラザードを聴けなかったのは痛恨の極み……。それからミューザの日のメンコンもキャンセルになってしまったのは本当に残念。あと最近ザッツの出し方がマロさんに似てきた…?
東さん
意外と今年はあまり聴けていなかった……。3月の浜離宮でのリサイタル、7月のサロンでのデュオ、11月のシャネルでのリサイタル、12月の横浜でのリサイタルの4回ですか。そして4回中3回でフランクのソナタを聴くという…もうかれこれ東さんのフランクは6回聴いたことになる。忙しそうだけど、ファンとしてはそろそろ他のレパートリーも聴いてみたいところ。そして今年はメジャーデビューもされた年。東さんは小品を聴かせるのも上手いのであのアルバムは嬉しかった。いつも頑張って舞台に近い席を取るのだけど、女性ファンが多くておじさん1人だと目立つので次からは少し離れた位置で聴こうか考え中。
総括
やっぱり好きなものだけを聴くのは楽しい。この演奏会は良い演奏になりそうとかクラオタ的な発想で演奏会を選ぶよりも、推しの演奏会を聴く方が楽しいのです。だから僕はクラオタではないのです。この感じで来年は演奏会減らせる気がする。もうさすがにお金の使い道を考えないと大変!!来年も推しをたくさん聴くぞ!!
TEXT by Hiroaki
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?