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CA-闘いの歴史

2020年10月に日本航空はそれまで使っていたお客様への英語の呼びかけ、”Ladies and Gentlemen”をやめ、”All passengers”、”Everyone”に改めた。日本語の呼びかけは元々『皆様』と、性別に関しニュートラルであったため変化はないが、これを国内で最初に実施したのが古巣の日本航空であったのが正直意外であり、誇らしかった。

昭和63年バブル入社の私が採用試験を受ける際は、募集要項に『スチュワーデス』という文字があった。ほかにも要項には身長制限があり、『容姿端麗』という言葉まで書かれていたと記憶している。この『容姿端麗』という言葉は何も航空業界だけで使われていたわけではなく、当時は広く馴染みのある言葉であった。身長158cm以上という根拠を尋ねたことがある。機内はスペースが限られているため、いろいろな物が高い位置に収納されているので設けているということだった。

かつての歴史をたどれば、国内外を問わず、体重制限や体重オーバー、年齢による解雇や地上勤務命令、妊娠が発覚したら退職等、CAの歴史に闘いはつきない。最近でもコロナを理由に解雇されたCAが提訴している。

私が入社した33年前は、一定期間の地上研修を終えスチュワーデス訓練所に入る前に髪の毛を切らなくてはならなかった。その長さのきまりは実に細かく、ワンレン・ボディコン最盛期においてベリーショートか刈り上げギリギリのおかっぱのどちらかを選ばぶようなものだった。私よりもっと前に入社した先輩は契約している美容室に全員行き、用意された3種類のモデル写真からどれか選ばなければならなかったと聞いている。甲乙つけるのが難しいくらい、どれも時代にはそぐわなかったらしい。

髪の毛を切らなければならない理由も聞いたことがある。新人は慣れない仕事で、ベテランと違い髪の毛を綺麗にまとめるのは難しいから、とか、あまり説得力のないものであった。一説には新人と一目みてわかるようにこのようなきまりがあったとも言われていた。地上研修が終わりを迎える頃、潔くベリーショートにしたものの、同僚らの絶賛とは裏腹に本人を含め、旧友や家族の落胆は非常に大きく、それ以来、ショートにはしていない。訓練を終えて、髪の毛が伸びるまでの長かったこと、毎日泣きながら育毛剤をつけて一日も早く元に戻れる努力をしたことを今でも覚えている。思うような長さになったころには、一通り仕事を覚え休暇を使って旅行にも行けるようになっていた。

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また、訓練所に通うときはパンツルックはご法度。訓練所を出た後も救難訓練や研修の際もパンツルック禁止令は続いた。こちらに関しては、当時、「パンツは履かない」人であったためどうでもよかったので、理由は聞いていない。

世はDiversity &Inclusionの時代。ここまで来る間にも外国人乗務員の採用や女性パイロットの登場、数々の規則の見直しと、企業の方針も変わっていった。こんな体験を味わってきたからこそ、冒頭のアナウンスの改定に驚いたのだ。世の中が変われば法律も規則も変わっていかなければならない。その意気込みが古巣に見られたのがやはり嬉しかった。


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