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大好きな海のまちのこと

小さい頃スイミングを習っていた。習っていただけ、50メートルも泳げたことがない、どうにも鈍くさくて自分の体の上手な動かし方をこの年になってもよくわからないまま。どこに出しても恥ずかしくない運動音痴、人と比べると不格好な動きしかできないし団体競技は皆の足を引っ張ってしまう己の不甲斐なさ、不出来さはいやいややっぱり恥ずかしい。
大体水の中にいるってそれだけで疲れるじゃないの。それからちょっとだいぶアレだったうちのクソ親父は子供らが泣きわめくのがうるさくて大嫌いなくせにビビらせて泣かせてやろうといういじめっ子だったから、私より輪をかけて水が苦手な弟とともに波が引っ被さるところに連れ出されて共々泣かされて来た。いやあ文章にすると本当にどこに出しても恥ずかしい、どうしようもないしょうもないクソ親父。悪口の捗ること。
関東に住んでいたから出かける海水浴場と言えば千葉とか茨城とか、あとは釣り好きのクソ親父に連れられて三浦とかの防波堤。小さい頃の海の色は濃淡様々な灰色だ。関東は太平洋、残念ながら青くはない。フナムシがカサカサ這う様を鮮明に覚えている。海って、山と一緒で虫がいるんだとビジュアルと相まって衝撃だった。はじめて海って自然なんだと思い知った瞬間でもある。そんなとこで泳ぐ?波がざんぶざんぶ降り掛かって上から叩きつけられるように沈みそうなのに??いろんな生き物がいっぱいいるような圧倒的な自然なのに??砂浜をほじくっている方が好きだった。幼稚園のお砂場と違って泥だんごは成形できなかったけど。

さて、時は流れて私は自他ともに認めるオタクとして成長した訳なのだが、聖地巡礼という楽しみ方が存在する。物語の舞台のモデルになったまちが存在する場合がある。そのモデルのまちに旅行に行って、作中に描かれる風景、建物の写真を撮ったり、ごはんを食べたり、まちをあげてキャンペーンやツアーを開催してくれるところもある。
鳥取県岩美町という小さなまちがあって、そのまちに住む高校生たちが水泳を通して悩んだり頑張ったり夢を見つけて未来に進んでいく、そんなアニメにどハマりした。
岩美町はまさにまちをあげて我々ファンを迎え入れてくれる、そんなところ。海も空もとってもきれいな、小さなまち。海が青くて水深の違いでその青が翠だったり碧だったりするのだと、砂浜がうっすらクリーム色の、まるで絵本で見たような色彩の浜がこの日本にあったこと、空に雲が浮かぶだけでなんだかかわいいような、そこを悠々とトンビが飛ぶ様のなんと絵になることかと、岩美町で知った。海って本当に青いんだ!!とびっくりして嬉しくなって、アニメのオープニング曲を再生した。写真は2回目に訪れた日が実はめちゃくちゃな大雨で、その次の日が薄曇り、それなのにこの透明度ってどういうこと!?と撮ったもの。コンディションが整ったらこの青どうなっちゃうの。大好きな作品の舞台になった、大好きな海のまちのこと。知れて良かった。訪れることができて良かった。実はやっぱり圧倒されるような怖いというか忌避感というかそういうのがあって、岩美町の海も泳いだことはない。いつか泳ぎに行きたいなぁ。同じファンのみんな達が岩美町の海で楽しそうに今年も遊んでいるのをニコニコ眺める。SNSの写真どうあがいてもバッチリきまる、岩美町の青はすごいんだぞ!!って誰ともなく胸を張る。ただただファンなだけ、PRとかでも何でもなくただ一個人が岩美町はすごいぞ!!って言っているだけ。海の色がきれいなのを教えてもらえて私の人生は本当にハッピーだよありがとうって、また岩美町に行くのはいつにしようかなって、今度の夏は泳ぎに行こうかな、水着着るならダイエットもしようかなって、ニコニコわくわくしちゃうよねって。晴れた穏やかな日に遊覧船にも乗ってみたい。

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