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IMJものがたり9 競合他社が嫌がる市場は、社員もやるのを嫌がったが・・・

 2000年頃はITバブルが軽く崩壊していたが、ウェブサイト構築のニーズは右肩上がりで増加していた。競合他社と新規大型ウェブサイト構築の獲得に凌ぎを削るようになる。

 しかし、私の頭の中には、「いつまでも新規構築ラッシュが続くのだろうか?」という不安があった。折しもマンションデベロッパーやゼネコン各社が不況にあえぐ姿が活字を賑わせ、業態変換にもがいている。

 ウェブ構築だけでなく、構築後の管理運用を継続的に行うことで会社業績も安定し、成功ノウハウも貯まる。一見地味だが、この「サイト運用」という事業こそネット時代のインフラであり、その事業軸を確立したいと考えた。幸い、同業他社はサイト運用は新規構築に比べると売上規模が小さいので、積極的に獲りに来る気配が無い。ライバルがいないうちに、このマーケットを占有しようと計画したが、ライバル他社と同様にIMJ社内も腰を引き気味なのだ。なぜなら現場も大型で利益率の高い新規構築案件をやりたいわけで、その方が個々人の目標も達成し、給与も上がるようになっていたからだ。

 多くのメンバーが消極的な中、男気を見せてくれたのが殿水さんを中心とするチーム。クライアントは某大手アパレルのECサイト。リアル店舗の補完的サイトと位置付ける企業が多い中、その企業は明確に「リアル店舗と並ぶ1店舗で、そのうちリアル店舗を超える存在になる」と明確な指針を持っていたし、事実、すぐその指針通りにECサイトの売上は急拡大して行った。

 それに合わせて、人事評価制度も運用業務などの経営課題への貢献度を加味し、報酬の面でも応えるように制度設計した。

 アパレル商品は、色、素材感、大きさなど、PC画面を通して表現するのが難しく、下手なサイトを作ると返品の山になる。さらには24時間365日オープンの店なので、決済、物流、トラブル対応など気が休まることがない。日商1億円のEC サイトが落ちた場合、その逸失利益をどう補償するのかと言った責任分担や保険など、Eコマースサイトの発展期においてはまだまだ未整備な事だらけだった。

 メールの誤配信で1通につき500円のお詫び料を支払う企業が出てきた時には、「100万通の販促メールを誤配信したら、一発で5億円の損害賠償を請求される?」なんてリスクをクライアントと詰める日々が続いた。

 後に、この運用業務を主とする事業部を大塚さん(現役員)がまとめ、IMJの一つの柱になっていき、株式上場にむけて売上は倍々で伸びていくことになる。

 余談になるが、私の社長就任パーティには株主のソニーや楽天、USEN、ぴあ、アミューズなど錚々たる顔ぶれの皆さんに集まっていただき、司会はフジテレビの元アナウンサー近藤サトさんという華やかさ。当時はIT系経営者と女子アナの結婚の噂が多かったので、管理本部マネジャーの初山さんからは「樫野さん、お願いですからフライデーに載らないでくださいよ」と釘を刺されていた(笑)。

 そのパーティの来賓者へのお土産に選んだのが、上記の某アパレルメーカーの大ヒットフリース。「某」と付けているのは、そのEC サイトをIMJが運用していることは口外しないでくださいと言われていたからだ。

 ところが、パーティ終了後、その顧客から呼び出された。「あんなにフリースを配布したら仕事しているのがバレるでしょ」と大目玉。今となっては、菓子折を持って先方常務のところにお詫びに行ったのも良い思い出である(笑)。




 


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