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IMJものがたり8 三木谷さんのオファーとは?

 ソニースタイルの仕事が全社売上の約半分を占める一本足打法状態(ソニーを失注すると会社に危機が訪れる)から抜けるため、第2第3のビッグ・クライアントを私たちは探していた。

 そんな時に出会ったのが楽天の三木谷さん。IMJの大株主で、TSUTAYAやTカードを展開しているCCCの増田社長が、「元は俺のパソコンの先生(笑)。今は楽天市場という面白いビジネスをしているから仲良くしといたら」と三木谷さんを紹介してくれた。10年前の楽天の連結売上高は約3000億円、ITベンチャーの旗手といった感じだったが、今や約1兆2000億円の日本を代表する企業に成長しているのだから、この間のスピードの凄さがわかる。

 その後、何度か増田さんの自宅でBBQをしたり、中目黒の楽天本社(当時)を訪問させてもらったりしている時、突然三木谷さんから「今、近くにいるのでIMJに行っていいですか?」と電話がかかってきた。

 「はい、もちろん喜んで」と返事をして10分も経たないうちに三木谷さんはやってきた。恵比寿ガーデンプレイスにあったIMJのオフィスは小綺麗ではあったが、社長室は4畳半程度。応接セットなどあるわけもなく、私の執務デスクと会議用テーブルで4人座れば窮屈な狭さだった。

 三木谷さんも「ちょっと、ついでに寄っただけなので」と雑談を10分程度しただけで帰られた。

 その時は、あまりの狭さに居心地が悪かったのかな?(笑)とも思ったが、きっとIMJの社員や社長室を確かめに来たのではないかと思う。社長室が分不相応に豪華だったり、社員の対応が悪かったりしたら、その後の話は無かったかもしれない。

 後日、三木谷さんから食事の誘いがあり、石窯ピザが美味い麻布のイタリアンレストランで、こんなオファーを受けることになる。

 「樫野さん、楽天市場を最高のWEBサイトにするために協力してほしい。ついてはIMJのエースを4人、楽天に出してほしい。楽天は1兆円企業になりますから、必ずIMJにとっても良い話になるはずです」

 私は一瞬考えた後、「わかりました」と答えた。

 三木谷さんは誰もが認める凄い経営者だが、特に私が驚いたのは、個としての優秀さやカリスマ性はもちろん、年長者に可愛がられる「人との間合いを硬軟両方できる点」が稀有なタイプだと思っていた。

 「将来は経団連の会長になるかも」と見ていたが、現在は経団連の組織に窮屈さを感じたのか、新経済連盟を立ち上げて代表理事をされている。

 三木谷さんに即答したものの、実際に誰を出すかは難しい問題だった。そこを乗り切ってくれたのが、後に新卒初の執行役員となった広田和也と制作本部長の西野さん。そこに、樽ちゃんや樋口、坂上、関根、小高、サブのような精鋭たちがアサインされていった。

 チーム西野は期待に応え、楽天はソニーに匹敵するプロジェクトになっていった。担当するメンバーは50人を超え、楽天の皆さんにも鍛えられて、IMJメンバーもどんどん成長した。

 楽天グループの様々な事業をご一緒させてもらう中で、楽天イーグルスの誕生も間近で見ることになる。ライブドアが正面から近鉄バッファローズの買収に動き、日本企業の重鎮に固くガードされていたのと対象的に、楽天は経済界の後押しも受けるような雰囲気で新球団誕生にこぎつける。三木谷さんの硬軟二刀流が本領発揮したのだろうと私は思っている。

 エース級が楽天に行く中で、IMJ本社の現場が心配になるところだが、不思議なもので孝行息子が登場し、ポッカリ空いたポジションを若手が埋めて期待以上の成長を見せてくれる。組織の不思議というか、「チャンスが人を育てる」を私は実感することに。このあたりの話も今度またゆっくりと書き残したい。


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