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方程式その1「手を挙げる」


 小学校から大学まで比較的目立つ人生を送ってきた。学級委員長に部活動のキャプテン、リレーのアンカーに騎馬戦の大将、そして生徒会役員。どれも自分から立候補したことはない。いつも自然に選ばれてきた。
 

 でも、それで失敗したこともある。
 中学の野球の試合中に監督が「次、代打で出たいやついるか?」とベンチにいる僕ら全員を見渡して言った。僕は監督の目を見て、何も言わずに指名されるのを待った。
「きっと僕を指名してくれる。昨日の夜も素振りしたし、そういう努力を監督は気づいているはず」。
 しばらくの沈黙のあと、「はい!」と手が上がった。

 手を挙げたのは同級生の浜田。監督は「よし。浜田行け!」

 努力は人を裏切らない、神様はきっと見ていてくれるなんて、そんな甘いことはない。チャンスはつかみにいかなければいけないのだ。

 時が経ち、リクルートの男子だけの内定者イベント。
約350名もの元気な仲間が勢ぞろい。ステージ上から司会者が「入社式でスピーチしたいヤツ、手を挙げて」
 ほぼ全員が「はいっ」「オレオレ」「やりたい!」と一斉に手を挙げている。
 
 指名してもらうのを待っていたら、一生出番が回ってこない。とんでもない会社に入ってしまった。

 自ら手を挙げて、自分の居場所と出番を勝ち取らなければ、生き残れない。甘ちゃんスタンスで通用してきたこれまでとは、まったく違うことを僕は入社直前に突きつけられた。


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