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IMJものがたり45 50億円の「のれん代」とセカンドベスト


大株主の了解を取り付けて、X社との経営統合の話を進めることになった。
 事業計画のすり合わせ、シナジーを生み出す方法、組織融合の仕方、社名など、協議すべき事項は山ほどある。

 それぞれの社員の気持ちも考え、いきなり合併してひとつの企業になるのではなく、ホールディングカンパニーを設立し、その傘下に統合前の2つの会社がぶら下がる形にしようと考える。これまでの業界でのポジションやブランドを考えると、社名はしばらく残した方が営業的にも得策だろうという判断だ。
 
かつて、銀行業界が再編で合併を繰り返し、名前がコロコロ変わり、いくつもの銀行名がくっついたような長い社名になったかと思えば、しばらくしてシンプルな銀行名に変わるのを目にしてきたが、その大変さを我が身のこととして感じた。
 
頭取人事も中心になった銀行がずっと頭取を出している合併もあれば、出身銀行それぞれから交互に頭取を出し合う場合もあるように、我々の場合は合併当初は先方社長が会長、私が社長。融合が進めば、私が会長になり、先方の後継者が社長に就き、その後は実力次第の人事にしていく方針で一致していた。

 そして、お互いの取締役が顔を揃えた会食をセッティング。
 最初はお見合いのようにぎこちなかったが、酒が入るとともに打ち解けていき、ケミストリーも合っていきそうな気がする。

 ところがここで大きな問題が持ち上がる。
 お互いの時価総額が、純資産に比べて大きかったため(PBRで約10倍前後)、経営統合すると、時価総額と純資産との差額を「のれん代」として償却していかないといけないことが判明。

 監査法人や顧問弁護士にいろいろ相談するものの回避する手立てがなく、今後5年間は「のれん代」を30億円〜50億円程度計上することになり、そうすると合併会社の経常利益も5年間赤字が続いてしまう計算だ。

 将来に向けての大きな再編につながり、事業を育てる意味では間違っていないと思うものの、目先の業績結果に嫌気がさし、株主が離れ、株価低下を招く恐れは充分ある。
 現在のような株式市場で、赤字でも株式上場し、将来の成長期待で株価が形成されている相場ならまだしも、リーマンショックで株式市場が冷えているこの時期にとても株価を支える自信は持てなかった。
 
 そして数ヶ月後、私たちは経営統合を断念した。

 今思っても、やりきりたかった出来事のひとつ、未練が残る思い出である。

 ただ、実は断念を決めることができたのには、理由があった。
 別のY社との経営統合を私は計画していたからだ。

 一番ベストな仕上がりは、IMJとX社、Y社の3社統合で一気に業界シェアを上げていく戦略だったが、のれん代問題でX社との経営統合は断念。

しかし、Y社ならリカバーできる程度ののれん代なので、こちらは実現可能と踏んでいた。しかも、現場は既に協業を重ね、信頼関係も構築できている。

 こうして、セカンドベストな道であるY社との経営統合に私は傾注していくことになる。

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リクルート、福岡ドーム、メディアファクトリーを経て、映画プロデューサー、ベンチャー経営者、政治家、作家に。