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IMJものがたり30〜39(本編)

割引あり

30 社長5年目、神戸市長選への出馬打診

2005年、IMJの社長になってから5年が経ち、私は42歳になっていた。
この年の売上は81億円だから就任時の11倍に成長したことになる。
事業セグメントもウェブ事業、モバイル事業、広告事業、エンタメ事業の4セグメントの事業基盤が整い、グループ会社も新規設立やM&Aなどで24社(子会社や持分法適用会社まで含めて)まで拡大していた。
 2006年のグループ連結売上は140億円を難なく達成しそうだし、グループ各社の事業の中期計画では3年後に売上300億円まで自然体で成長できる手応えを感じていた。

 そんな時、ある方が神戸から訪ねてきた。
「2005年10月にある神戸市長選挙に出ませんか?」
 私が昔から政治家志望であることを聞きつけ、口説きに来てくれたのだ。
17歳の頃から「いつかは神戸市長に」と思っていた私にとっては、突然の話であったがとても嬉しい話だった。
企業で働くのと違って、政治家への入り口や仕組みがまだよくわかっていなかった私にとっては、願ってもないチャンス。しかも市長選は4年に1度。一度パスすると4年先送りになる。
 正直、心が揺れた。
もともと考えていたキャリアプランは40歳までビジネス、40歳から政治の世界へ、そして60歳から教育。42歳になっている私は計画が既に2年遅れていた。
 
 しかし、IMJは伸び盛り、大きな目標に向かってひた走っている。私自身も経営者として脂がのってきており、「やれる」という実感もある。
頼もしいメンバーも集まり、こんなに楽しい環境は他にない。

 新宿のレストランで、その方と食事しながら自分の心の声に耳を傾けた。
・・・みんなと一緒にIMJをもっと大きくしたい・・・。

私は今回のお誘いに感謝しつつ、自分の気持ちを伝え、お断りをした。
「4年後の2009年までに、IMJを自分がイメージする企業にしっかり成長させますから、その時あらためて相談させてください」
と付け加えて。

エクセレントカンパニーになり、100年企業になることを考えると、私がずっと経営者をしているわけがない。逆にあまり長く居座り続けると老害にしかならない。

前にも書いたが、英国の宗教詩人による詩の一小節の
「天空に大きな円を描きなさい。その円はあなたの代で完成することはできないかもしれない。でもあなたはその円の弧になることができる。」

を実践するためにも、あと4年で区間賞を取る走りを見せて、次にバトンを繋ごうと決心した夜だった。

それから4年後の2009年5月、私はその方に会いに行った。
「あの時の約束通り、10月の神戸市長選挙に立候補しようと思っています。
お力を貸していただけませんか?」

「4年前の話を覚えていると思ってなかった。経営者としてバリバリやっているのを聞いていたから、もう無いと思っていた(笑)」

「会社関係は後継者も決めて、4月に会長になりました。いろいろ準備を進めているので、お願いします!」

「わかった。じゃ、まずは神戸のことをよく知っていて、絶対力になってくれる人を紹介する」

そうして出会ったのが、井坂信彦さんである。


31 M&A戦略(バスに乗せろ〜ビジョナリーカンパニー2〜)

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