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上場会見:ispace(9348)、継続性ある宇宙事業

12日、ispaceが東証グロースに上場し、袴田武史CEOと野﨑順平CFOが東京証券取引所で上場会見を行った。会社の説明に関する部分を要約した。  
 

■月に1000人

 
宇宙に人間の生活圏を築くことをビジョンとして掲げる。そのために、まず地球と月の間にエコシステムを作る必要があり、これを具現化した「Moon Valley 2040」の実現を目指す。2040年以降には月に1000人が住み、1万人以上が地球と月を往復する時代を作る。 
 
月に存在する水を水素と酸素に分解してロケット燃料にすることで、宇宙にガスステーションを作り、輸送コストを下げる。これはNASA(米航空宇宙局)などの火星探査に際しても役立つ。さらに、社会の高度化に伴い衛星利用などで宇宙への依存度が高まるなか、インフラの維持・メンテナンスも課題となる。宇宙の資源活用でロケット打ち上げのコストを下げ、地球の持続可能性に貢献する。 
 

■輸送からデータまで 


月面でのミッション1を実行し、営利企業としては世界初・最短での月面着陸が可能になる予定。トラックレコードを確保し大きな競争優位性につながる。ミッション1のSuccess7に至る過程での学びを、次のミッション2や3にすぐにフィードバックして、技術の成熟性を上げる。 
 
着陸船を開発してロケットで打ち上げ、月面に荷物を降ろし、ローバー(月面探査車)を展開。月面のデータを獲得し、地球に送信して顧客に提供する。主力のペイロードビジネスでは、1キロ当たり単価の料金で荷物を月面に運ぶ。月の開発に重要になる月面データを販売するデータビジネスと、国内外の企業の協賛を受けてのマーケティングや、技術・ビジネス上の協業を行うパートナーシッププログラムも展開する。3事業で累計1億ドル以上の契約を獲得している。 
 

■政府調達も民需も

 
欧米日の宇宙機関の予算増加で月の市場が拡大。技術開発支援ではなくサービス調達が増えている。PwCによると、月全体の市場規模が2040年には1700億ドルに、小型輸送セグメントでも500億ドル以上となる成長が予想されている。市場参入のためにビジネスを築くことが重要となる。 
 
ミッション3ではNASAのサービス調達であるCLPS(Commercial Lunar Payload Service)プログラムで、Draperが請けた7300万ドルの発注のうち5500万ドル分を受注している。このミッションは月の裏側で行うため、2機 の通信衛星を打ち上げ、通信を介した様々なサービス提供が可能になる。民間企業からの需要に応え、累計で380万ドルの契約を獲得している。日米欧や中東など様々な地域の顧客と契約し、売り上げを増やしていく。 
 

■複数ミッションを同時展開 


宇宙事業には失敗のリスクがあるが、リスクを最大限に削減するビジネスモデルを開発している。従来の宇宙事業では1回のミッションが終わると次の資金調達が必要だが、このビジネスでは既に3つのミッションを同時に開発し、1つのミッションから学びを得て、次のミッションで改善できる。このことでリスクを避け、継続的な事業を実現している。 
 
また、SpaceXのFalcon9を活用した打ち上げや、アリアングループやDraperから推進系や誘導制御技術を調達するなど信頼性のあるプレーヤーと連携する。ミッション2では30キロを乗せられるシリーズ1というランダーで研究開発を行い、ミッション3では最大500キロを乗せられる着陸船を開発し、売り上げを加速させる。 
 

■見やすい売り上げ 


顧客とは打ち上げの2年前に契約して、事前にキャッシュを受け取る形で売り上げを計上する。1つの契約で複数年にわたって計上し、それがいくつかのミッションで重複するため売り上げが立ちやすい。 
 
また、データが重要なマーケットになる。月面のデータをローバーで確実に獲得し、月の周りに配備した衛星でグローバルなデータを集めてデータベース化し、ビジネスを確立する考え。 
 
[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平] 
 
※ 会見の質疑応答部分はリンク先でお読みいただけます。