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キミもまだ赤ちゃんみたいなもんだよ

保育園にお迎えにいき、近所を一緒に歩く。
2歳になった娘は、最近になって手を繋いで歩けることが増えてきた。
それこそ3ヶ月前くらいは、抱っこしては暴れ、置くと走ってどこかへ消えてしまう、そんなあまりにも自由な、不安定な存在であった。
今も衝動的に走り出したり思い通りに行かないと座り込みストライキが始まりはするが、明らかに少しは落ち着きを感じる。これも成長なのかなーなんて思う。

この日、セブンイレブンに寄りたい!アンパンマンチョコを買いたい!な娘は、セブンイレブンを通り過ぎた私に明らかに腹を立てており、
お店まで戻ろうかと手を引っ張り合う格好になった。

「おみせやさんいきたいよぉ!」

民家の前、道幅は狭いが交通量のそれなりにある道路でこれはかなり危険。
スクっと抱き抱え、「ごめんね、今日はお家に帰って、おうちのゼリー(一口サイズ)食べようか!」と伝えたが、ご自慢の健脚で腹回りをドスドスと蹴り上げて暴れている。

そんな攻防の中、なんとか気をそらしたい…と、うん??
目に入ったのは民家の軒下にある電球傘の、ツバメの巣。
角度的にはかなり見上げることになるが、ツバメの赤ちゃんがピィピィないて、口をぱくぱくしている様子が見える。
慣れっこなのか、優しい家主さんの手によって巣の下には糞対策の新聞紙が、四隅の重石と共に置かれていた。

-娘ちゃん、見て、ツバメの巣があるよ!

暴れている娘に声をかけると、「あぁん?」と怪訝な顔をしながらも指差した方を見てくれた。

娘「…?」
-ほら、あの茶色いのの中に、なんか動いてるでしょ?あれはツバメの赤ちゃんで、あれはツバメのおうちなんだよ。

わかったのかなんなのか分からない絶妙の表情で、巣を見つめている。

そこへタイミングよく親ツバメがやってきて、赤ちゃんツバメ達は大興奮!口をぱくぱくして、10秒ほどのご飯タイムとなった。

娘「!!!」

ハッとした顔で、私の顔と巣を交互に見ている。
なんだこれは、解説しろ、とでも言いたげ。

-あ、ほら、おかあさんツバメ(お父さんかもしれないけど)さんが、ご飯を持ってきたんだよ、ほら食べてる食べてる
娘「おなかすいたよぉーって?」
-そうそう。あ、いっちゃった。

2人でしばらく見ていた。
相変わらず交通量は多い油断ならない道だけど、もう娘は暴れなかったので、抱っこを解いて、手を繋いだ。

娘「おなかすいたよぉー、おかあさんごはんほしいよぉー」
ツバメの赤ちゃんの口パクにアテレコするように、娘がピヨピヨ言っている。

そうこうしているうちに、また親ツバメがやってきて、巣は再び大興奮となった。

-赤ちゃんはまだ自分でご飯を取ってこられないから、あーやって食べさせてもらうんだね。
娘「…。○○(娘)ちゃんは、おねーさんのおはし(=矯正箸)つかってるよ」
-そうだね、もうお姉さんみたいに食べてるもんね。
娘「うん。ばいばーいとりさーん、またあしたねー、いっぱいたべてねーー」

何かに納得したかのように、娘は家に向かって歩き出した。
もうセブンイレブンでチョコを買うことは忘れているようだった。


家に帰っても、旦那に、「あかちゃんごはんたべてた」と報告していたし、
ごはんは“おねーさんのおはし”で、いつも以上に食べていたし、
寝る前の今日どんなことがあったか話す時間にも「あかちゃんおかあさんからごはんもらってた。げんきかなぁ」と言っていた。



赤ちゃん、という存在。
それは道ですれ違うベビーカーを見る様子だったり、保育園の一つ下の学年のお友達のことを「あかちゃん」として扱う様子だったり、いろんなところから滲んでいるけれど、
一貫して“か弱くて守りたい、大切にしたい存在”なんだと、娘なりに理解しているようだ。
そしてハッキリと、“自分はそっち側ではない”ということも同時に思っているようで、なんだか頼もしい感じがした。
(自分が少し前まで赤ちゃんだったなんて、微塵も思っていないようなムーブだった)


私にとって娘は、この先ずっと「か弱くて守りたい、大切にしたい存在」であることは間違いない。
その娘が踏み出した「脱・赤ちゃん」をとても嬉しく、しかし少し寂しく思ったことを、
ここに残しておくこととする。

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