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【駅弁と私】鬼平を演じ、味わう。

最初見たときは、名前を貸しただけの、やっぱり鉄板の国技館焼き鳥と老舗「大船軒」のサンドイッチにしておけばよかったなどと後悔の消えない旅情になってしまう残念な弁当かと思っていた。

何しろ、大御所だ。池波正太郎の鬼平である。江戸ではグルメの鬼平だ。それはもう、名前に傷がつけられるはずもない。担当した明神下みやびも覚悟を持ってレシピづくりに挑んだことだろう。

しかし、それは杞憂に終わった。

小説の表紙をもした包み紙を開くと、鬼平犯科帳の人物相関図がおまけで入っている。しかも、包み紙の裏は鬼平が活躍していた頃の江戸古地図。丁寧に主要人物の自宅位置なども記されている。

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これは、もう、車窓を眺めている場合ではないだろう。ともすれば、旅先の本屋でおもむろに文庫を買ってしまい、そのまま何故か宿に逗留しかねない。

そんな、危険な匂いのする幕開けの中、いざ、本丸の弁当は、これもなかなかなラインナップだ。
「江戸深川弁当」ということで浅蜊飯、そして煮穴子と甘めに炊いた煮物。決して華やかではないが、江戸の雰囲気を醸し出す二人の巨人を持ってきたのは、正解だろう。

浅蜊は密偵だろう。所々に散らばり、悪漢の煮穴子に目を光らせている。煮物は、脇を固める久栄さん率いる女性達だろう。そして、鬼平はその一部始終を見張り、そして味わう、俺というわけだ。
ここまで、シナリオを練ったロールプレイング弁当というのも珍しいじゃないか。気に入った。

次は「小房の粂八弁当」密偵を演じ味わってみようじゃないか。

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