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【駅弁と私】「つとぶ」の立ち位置。

定期的な投稿なんて、やっぱり無理だわ。
もう、気の向いたときにサラサラ書く随筆感覚がいいな。

駅弁が好きだ。
お酒とともに、遠くに向かう列車に乗り込む駅で、乗り込む列車の車窓から見える景色と、目的地への期待を高める大事なパートナーなのは間違いない。

今までは、駅弁とは、列車に乗り込むときにしか買ってはいけない、自宅で食べるなど言語道断なマイルールもあったが、今はもうそんな気負いもなく週末の夕食などでもテーブルにのぼってきている。

今回紹介する弁松は、駅弁ではない。ではないのだが、実に駅弁感満載な折り詰め弁当なのだ。

名前は、日本橋弁松総本店。江戸から続く、老舗の仕出し弁当屋だ。

今回は、並六という弁松では一番スタンダードな弁当だ。なぜ、「六」なのかは分からない。
まずは、弁当の箱だ。発泡スチロールじゃない。経木だ。これが素晴らしい。老舗のプライドを見る感じだ。季節限定のホタテ炊き込みご飯の香りが違ってくる。
特徴は、おかずの甘辛さ。今どきではあまり見かけない、醤油と砂糖の濃い味わいが好みを分けるかもしれない。
しかし、おかずとご飯との相性はいい。煮物は蓮の歯ごたえがいい。カジキも冷めていてもふっくらしている。甘めの卵焼き、蒲鉾も醤油の辛さをリセットするにはうってつけのホッとする味わいだ。そして、豆きんとんをデザートに、お茶をすするのもいい。個人的には豆きんとんと“ふくよかな”白ワインなんかも合うのではないかと思っている。
これで一通り食べたかなと思うと、箱の隅に申し訳無さそうに佇んでいる変わった形の食べ物がある。「つとぶ」だ。

「つとぶ」は「ちくわぶ」の兄弟みたいなもので、生麩をすだれに巻いて蒸したものである。だが、食感は生麩のようにムニュムニュして、個人的には好みだ。素直に美味い。だが、野菜の煮物に追いやられて隅っこの扱いだ。隅っこ暮らしだ。
なんとかこの美味しい「つとぶ」の存在感を高めてやりたい。そう思った時期もあったが、最近は【これでいいのかもしれない】と思う。
一通り食べてふと気づく「つとぶ」の存在。
「そこにいたのか。よしよし、それじゃ、こっちにおいでなさい。今は君だけだ。」

そういう立ち位置のおかずがあっても、それはそれで豆きんとん並みのデザートではないだろうか。

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