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日本の素敵なバレエダンサー【番外編】美しいポールドブラを持つ日本人ダンサー


海外で活躍する実力を持ちながらも日本で踊ることを選択してくれたダンサーを紹介する「日本の素敵なバレエダンサー」シリーズですが、「海外」と一言で言っても教育を受けた国や、活躍した国によっても様々な特徴があると思っています。

そこで今回は海外帰りのダンサーの中でも「美しいポールドブラ」を持つと私が感じたダンサー達について、私が実際に見た感想を踏まえながら、彼らの美しさの特徴を紹介したいと思います。

🇦🇹上中佑樹さん(ウィーン国立歌劇場バレエ学校出身)

上中(かみなか)佑樹さんは、ウィーン国立歌劇場バレエ学校を卒業後、ウィーン国立歌劇場バレエ団を経て、スロバキア国立バレエ団でプリンシパルとして活躍されました。現在は東京の新国立劇場バレエ団で踊られています。
上中佑樹さんの踊りを初めて見たのは2023年の「ドンキホーテ」で、ジプシー役を踊られていましたが、なんとも情熱的でとても見応えがありました。その後12月のくるみ割り人形で、ロシアの踊りや花のワルツを踊られている上中さんを見て、その軽やかさや優雅さに心を奪われました。
激しく踊っている時ですら、なぜ上中さんが優雅に見えるのだろうかと考えたのですが、その秘密の一つがどんな時もポールドブラを柔らかく使っているからではないかと考えました。

上中さんというとダイナミックなジャンプや、フィギュアスケートのような高速で正確な回転を思い浮かべる方が多いと思います。ですが、私は個人的に上中さんの一番の凄さはジャンプをしている時に変な力みを感じさせず、どんな時も上半身やポールドブラに優雅さがあることだと思っています。

人間はジャンプをする時にどうしても力が入るため、どれだけ訓練を積んだバレエダンサーであっても、ダイナミックなジャンプを跳ぶダンサーのポールドブラは非常に力んでいて正直あまり美しくないことが多いです。これは手に力を込めることにより体のバランスをキープする人もいるため、仕方がない部分もあります。ですが上中さんは軽やかに大きく跳んでいるだけでなく、普通の人に見られるような上半身や腕の力みを観客に感じさせず、上半身やポールドブラは常に柔らかくて綺麗です。

私はアッサンブレなどの小さなジャンプを跳ぶ時でさえ手に力が入ってしまうので、上中さんがあれだけの大きな跳躍をしても、なぜ優雅な上半身とポールドブラをキープ出来るのか、正直本当に分かりません。あの優雅さと柔らかさは彼の才能と厳しい鍛錬の賜物だと思っています。
くるみのトレパックでも信じられないような大きなジャンプを跳んでいるのに、上半身やポールドブラは軽やかで、全く力を込めている様子が感じられず、翼を使いながら跳んでいるかのようでした。花のワルツでは人一倍ジャンプが高いのに、誰よりも軽やかで余裕で、それでいて優雅でした。そのジャンプは本当に一瞬だったのですが、ジャンプの力強さとは対照的にその時のポールドブラがふんわりしていて綺麗で、凄いものを見てしまったという気持ちになりました。何をしていても優雅さを表現してくれる上中さんが今後どんな踊りを見せてくれるのか、本当に楽しみです。

別件ですが、以前陸上競技のメダリストの為末大さんがバレエダンサーの着地について解説されていたことがあり、この投稿を見て上中佑樹さんのダイナミックなジャンプを思い出しました。いつか上中さんのジャンプや着地についても分析してみたいです。

上中佑樹さんの今後の出演情報
ラ・バヤデール(新国立劇場バレエ団) マグダヴェヤ役
2024年4月28日(日)18:30
2024年5月4日(土・祝)13:00 

バレエコンサート パドドゥ集(福岡市立南市民センター)
2024年8月14日(水)16:00
上中穂香さんも出演💕(姉弟揃って美男美女で羨ましい🥰)

🇷🇺直塚美穂さん(ロシア国立ワガノワバレエ学校出身)

かの有名なリュドミラ・コワリョーワ先生に師事した直塚さんはワガノワを卒業後、ミハイロフスキーやダンチェンコなどロシアの名バレエ団を経て、現在は新国立劇場バレエ団でソリストとして活躍しています。
直塚さんを初めて見たのはロシアバレエガラのローズアダージオで、一直線に上がる足はもちろん美しかったのですが、それよりも柔らかい上半身と美しいポールドブラに目を奪われました。ワガノワ出身ということもあり、伸びやかな優雅さを持つだけでなく、個人的に美しいと直感的に感じたのが、直塚さんの上半身の柔らかさと指先の美しさです。
おそらく日本では足がどれだけ上がるかなど、下半身の柔軟性ばかり重視されて、上半身や腕の動きはあまり重視されていないのかと思いますが、直塚さんは上半身を最大限使って踊られており、その柔らかさが醸し出す美しさがとても印象的でした。

ワガノワ出身だからといって全員のポールドブラに魅了されるわけではありません。私が惹かれるのはその中でも極上の美しさや優雅な動きを持ったダンサーのみです。最近だとオリガ・スミルノワやユリア・ステパノワのポールドブラに魅せられています。
直塚さんのポールドブラには彼女達に通ずる類稀なる美しさを感じるのです。特に、腕を上げるときなどは永遠に止まる事がなく、水の中でゆったりと手を動かしているような美しさと、指先から雫が滴るかのような特徴的な優雅さがあります。

間近で見た時、直塚さんのポールドブラがあまりに綺麗なので、指先や上腕の角度などを揃えて同じように動かそうとしてみた時がありましたが、どう頑張っても私は自分の腕を彼女のように柔らかく動かすことが出来ませんでした。あの柔らかな動きと優雅さは直塚さんの才能であり、努力の結晶なのだと思いました。

「ラ・バヤデール」でガムザッティに抜擢された理由は直塚さんのテクニックの強さや存在感だけではなく、全身を使った表現力の高さも確実に評価されての配役だと思います。
誰が見ても日本人離れした別格の美しさと力強さを持っているだけでなく、身体中を使って柔らかな表現も出来る直塚さんが、今後どのような踊りを見せてくれるのか、本当に楽しみです。

直塚さんの今後の出演情報

「ラ・バヤデール」主役の1人ガムザッティ役(東京:新国立劇場)
2024年4月27日(土)14:00
2024年4月28日(日)13:00
2024年5月3日(金・祝)14:00
2024年5月4日(土・祝)18:30

親子で楽しむ夏休みバレエまつり
2024年8月3日、4日 東京

バレエの妖精とプリンセス
2024年8月1日以降の全国ツアー参加

🇫🇷中島映理子さん(パリ国立高等コンセルヴァトワール出身)

オペラ座の名エトワールであったイザベル・シアラヴォラにコンセルヴァトワール(フランスの国立舞踊学校)で師事し、パリ・オペラ座バレエ団やクイーンズランドバレエ団で活躍された中島映理子さんは、現在東京バレエ団のソリストとして活躍されています。
中島さんを初めて見たのはミュージックビデオでしたが、力強くて優雅なポールドブラが印象に残りました。これまで東京バレエ団には興味がなかったのですが、元オペラ座で、これだけ美しいポールドブラを持つダンサーがいるのであればぜひ見てみたいと思い舞台を見に行きました。中島さんの腕の優雅さは周りとは比べ物にならず、1人だけ格上のゲストダンサーが踊っているようで、醸し出すオーラが段違いでした。優雅なだけでなく、力強くゴージャスで、自立した女王の動きのような印象を受けました。

中島さんのポールドブラは独特で、呼吸を入れているのか、人差し指から命を生み出すかのような動きから始まることが特徴的です。人差し指から全てが湧き上がるかのような、人差し指から物語が紡がれているような印象を受けました。
それだけでなく、他の指で布を手繰り寄せるような、柔らかいものを掴むかのような動きもされており、舞台で見て美しいと感じた中島さんのポールドブラはただ形が美しいだけでなく、指の一本一本の動かし方も工夫されているのだと感じました。

ちなみに私も中島さんの綺麗なポールドブラに憧れ、彼女と同じ動きをしてみようとしましたが、何度トライしても人差し指に力が入ってしまい攣りそうになりました。ですが中島さんの動きを見ると特に力が込められている様子は無く、一体どう指先に力を込めずにあのように動かしているのか、彼女のポールドブラの秘密がとても気になります。
指先の一本一本まで丁寧に使って役を踊りこなす中島さんがこれからどんな踊りを見せてくれるのか。今後も中島さんの舞台を見に行くのがとても楽しみです。

中島映理子さんの今後の出演情報

白鳥の湖 オデット/オディール(東京:東京文化会館)
4月27日(土)15:00
はじめての「白鳥の湖」~楽しいお話と第3幕~  オディール(東京バレエ団)
4月29日(月・祝)12:00

🇩🇪森本亮介さん(ベルリン国立バレエ学校出身)

ハンブルクバレエ学校やベルリン国立バレエ学校など、ドイツの名門バレエ学校で学ばれた森本亮介さんは、何を踊っていても品が良いのが特徴です。
世界中を見渡しても、品格を感じさせてくれるダンサーはウリヤーナ・ロパートキナやマチュー・ガニオなどごく少数です。彼らに通ずる品の良さを私は森本さんの何から感じたのだろうと考え、その一つが彼のポールドブラだと思いました。

森本さんのポールドブラは少し特殊で、例えばアラセゴンといって手を横に開く際は「横に横にもっと伸びる!」、アンオーといって頭上に手を持ってくる際は「上に上にもっと伸びる!」という感じです。初めて彼のアラセゴンやアンオーを見た時は、「人間の腕ってここまで伸びるものなのか!」と思った記憶があり、「胸からが僕の腕です」というような大きな動きが特徴です。
そして手を動かすときに、独特のタメと伸びやかさがあり、その動きがあの品格を醸し出していると考察しました。

森本さんについては実際の舞台もこのビデオも、毎回相当緊張されている印象を受けます。ですがそれでも品を感じさせてくれるので、硬くならずに踊った場合、どれだけ素晴らしい踊りを見せてくれるのかと私は期待せずにはいられません。

推測ではありますが、ハンガリーバレエ界の関係者は上品さを観客に伝えられる森本さんの才能と可能性を見出したからこそ、彼を主役に抜擢したのではないでしょうか。
大原永子さんや吉田都さん、そして熊川哲也さんが、海外で評価されたのは観客を惹きつける魅力があったからこそだと思います。だから大原さんや吉田都さんも、森本さんの観客の心を掴む才能を感じ取り、それに期待してホフマン物語の代役に抜擢したのではないでしょうか。

溢れんばかりの品の良さこそが森本さんの特徴であり、その秘密が彼の独特なポールドブラにあるのではないかと私は考えています。
欧州のバレエ団のように平均身長が高い新国立劇場バレエ団の中でも小柄な部類に入るのかもしれませんが、森本さんの踊りにはそれを忘れさせる観客を惹きつける上品さがあります。品格は目に見えませんが、魂から発せられるものであり、どこか祈りの精神にも通じる、哲学的なものだと思うのです。観客が今後もそれに触れる事ができるよう、ぜひ伸び伸びと踊り続けてほしいです。

森本亮介さんの出演情報

ラ・バヤデール 黄金の神像(ブロンズアイドル)
2024年4月28日(日)13:00 
2024年5月3日(金・祝)14:00 

新国立劇場バレエ団 on Instagram: "𝗟𝗮 𝗕𝗮𝘆𝗮𝗱𝗲𝗿𝗲 クラシックバレエでは様々なキャラクターが登場しますが、『ラ・バヤデール』の黄金の神像(ブロンズアイドル)はとりわけインパクトのあるキャラクターではないでしょうか。 全身を金色の塗料で塗ったダンサーが、舞台上で照明が当たるとキラキラと輝き、まるで本当に神像が踊っているかのようです✨ ガムザッティとソロルの婚約式に登場し、祝福の踊りを披露します。短い踊りながら、その見た目と華麗なテクニックで大きな印象を残すこと間違いなしです! 🩰 森本亮介、石山蓮、木下嘉人、奥村康祐 (登場順) #nationalballetofjapan #labayadere #ballet #balletdancer #maledancer #ラバヤデール #新国立劇場バレエ団 #新国バヤ" nationalballetjapan on April 6, 2024: "𝗟𝗮 𝗕𝗮𝘆𝗮𝗱𝗲𝗿𝗲 クラシックバレエで www.instagram.com

宝満直也さんの舞台
・2024年8月8日(木) 山梨県甲府にて 木下嘉人さん、福田圭吾さんと共演

🇯🇵おわりに

「日本の素敵なバレエダンサー」シリーズを書くきっかけとなった舞踊評論家の桜井多佳子さんも仰っているように、日本バレエ界のレベルは非常に高いです。今後も劇場に足を運び続け、素敵な日本人ダンサーを沢山見つけていきたいと思っています。これからどんなダンサーに巡り合うことができるのか、とても楽しみです。

追記:
本当は2月にアップしたかったのですが間に合わず😅
2024年は閏年だし、もし2月がもっと長ければ、3/2は2/31となっていたはずだから、良しとしよう😂



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