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私が特に女子長距離を応援する理由⑥

ちょっとお久しぶりになりました。

本当ならトラックシーズン幕開けの高揚感とともにこの記事を書いていたはずなのですが・・。

まぁ、それを今言っても仕方ないので、過去の思い出に浸りたいと思います。

今回も特に誰も興味のない内容だとは思いますが、よろしくお願いします。


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2015年2月21日(土)

もうすっかり女子長距離にどっぷりとハマり、順調に(?)twitter上でもタチの悪いファンとして定着していっていた時期だっただろうと思う。

私は海の中道海浜公園へと足を運んだ。

そう。「第29回福岡国際クロスカントリー大会」の観戦だ。

1月の選抜女子駅伝北九州大会で生観戦デビューは果たしていたが、明確に特定の選手を追い求めて満を持して観戦に臨んだのはこれが最初。私にとっても非常に思い出深い大会として心に残っている。

いろんなカテゴリーのレースがあるのにシニア女子6km(当時)のみを目的として向かったのは今となってはもったいない話だが、それでもすごくワクワクして適度に緊張しつつ車を走らせたものだ。

カラリと快晴というわけでもなくそこそこの曇天だったと記憶するが、海からの風も強いロケーションでの2月の大会にしてはたいして寒くなかったようにも記憶する。ちょこちょこ道を間違えたりもして、お目当てのレースの開始時刻に結構ギリギリでたどり着いた。

ちょっとした小走りでコースに向かうと、もうスタート地点に選手たちが続々と並び始めるくらいのタイミング。杜の都に始まり、クイーンズ→富士山→皇后盃(都道府県)とテレビで観てきた有名選手たちの姿もちらほら。このときは世界クロカンの代表選考も兼ねていたので、それなりに有力選手も揃っていた。嬉しすぎる光景にスタート前からすっかり興奮状態だが、そんな中に私のいちばんのお目当ての選手の姿はなぜかない。そのお目当ての彼女は、ユニフォームに着替えることもなくコース外にたたずんでいた。


その彼女とは、 林田みさき さん(豊田自動織機)である。


クイーンズ駅伝や皇后盃での力走を見て心に刺さりまくった選手であり、私にとっての陸上ファン創成期であるこの頃に親切に接していただいた恩人のような存在だ。

とにかく、彼女には一度お会いしたかった。生でレースを拝見したかった。

しかし、彼女は走らない・・・。


もちろんそれでもレースは始まる

このときはまだこのコースの全長が何kmで何周回るとかコースの形状とか全然知らなかったので、群衆の動きに合わせて適当に移動しての観戦。「あれ?林田さん、どうして??」という引っかかりを持ちながらではあるが、ひとまず私は観戦に集中した。

まぁ~とりあえず、選手との距離が近すぎてビックリ!

駅伝のときも目の前を選手が通過していった印象だが、まだ歩道上からちょっと距離を挟んだ車道を選手は走っていく。しかしこのクロカンは、ロープ1本隔てただけでまさに目の前を続々と選手たちが通過していく。どんどん激しくなっていく選手たちの息づかいなんかも、耳元でささやかれているかのごとくハッキリと聞こえてくる。一般的な激しい息づかいの形容としてはハァハァとかゼェゼェとかいった擬音語が使われるのだろうが、とてもそんなおとなしい言葉では表現できない、うめき声のような悲痛な声の方が圧倒的に多い。

「こんな苦しい思いして、それでも誇りを持って情熱注いでるこの子たちは本当にカッコいいな~」。素直にそう思える。

そして選手たちが近づいてくるときの足音も独特で、ゴロゴロゴロゴロ・・・と地響きを立てる雰囲気は競馬場に近いものがあるとも感じた。

意外と早い6km。そして気付いた課題。

そしてこのとき強く感じたのは、声援を送るタイミングの難しさ。

通り過ぎていく選手たちを見ては「あ!〇〇さんだ!」と認識できる選手もそこそこいたのだが、気付いたときにはもう遅い。後追いで「ファイトー!」と叫んでもいいのだが、後続もどんどん気になるのでなんとなくタイミングを逸したままレースは進んでいく。そしてまだこの頃は各チームのHPの写真でしか容姿を認識していない選手がほとんどだったので、「〇〇さん出てるはずなんだけど・・・(走って)いた??」みたいなケースも非情に多かった。

そうこうしているうちに、本当にあっという間にレースは終わった。荘司麻衣さん(中京大)が海外の強豪選手たちをも抑えて優勝するという見事なレースだったが、正直このときの私は結果云々より、一度にたくさんの選手を見た興奮でわけがわからなくなっていたと思う。

そして何より、課題が多く残った。まだまだ知らない(パッと見ただけで認識できる)選手が多すぎるという勉強(リサーチ)不足も痛感したし、先述した声援のタイミングも含めて観戦のコツがまったくわかっていない自分へのイライラと失望に襲われた。

陸上は、思っているより何倍も奥が深く繊細なスポーツだ。

単純にお気に入りの選手を見つけてワーワー応援するのももちろん楽しいのだが、もっともっと楽しめる可能性の幅も感じたし、それを発信して伝えていける立場になりたいともあらためて思わされた。

そういう意味で、この年の福岡クロカンは私の中での陸上の観戦意識を少し高い位置に押し上げてくれた大会だったとも言えるだろう。

いよいよ運命の(?)ご対面

レースが終わり、課題に頭を悩ませながらも私は探した。林田みさきさんを。

探し回っているうちに福内櫻子さん(大東文化大)や森田香織さん詩織さん(パナソニック)らとすれ違って「お疲れさまでした~」と控えめに声をかけたりはしたが、そこで立ち止まって会話したりすることも我慢。さらにはふと気付けば目の前に増田明美さんが居たりもしたが、それもスルーしてとにかく林田さんを探した。

そして、見つけた。同僚の福田有以さんがファンに声掛けられて写真撮影に応じていて、林田さんがシャッター切ってあげてるところだったと思う。

不思議なもので、いざ見つけたら見つけたで「やっぱり私のような気持ち悪いおじさんが話しかけるのはマズいのではないか?」と急に弱気になったりもしたのだが、おそるおそる声を掛けてみた。

「あの、twitterでいつもお世話になっております。キャプテンと申します。」

こんな感じのご挨拶の言葉を発しただけなのに、ありえないくらい噛んだのを思い出す(笑)

「あっ!いつも応援ありがとうございます!」

思っていたとおりの、礼儀正しい受け答えで彼女は返してくれた。そこからの会話は極度に緊張していたこともありあまり覚えていないのだが、この日の欠場にいたった経緯とかそういうことをそれとなく話しただけだったと思う。しかし、それでも私にとっては大きな一歩。初めて選手に話しかけることができ、変質者と思われて通報されることもなく無事に話し終えることができた(笑)

だから大好き林田みさき

そもそも、なぜ私はこれほど林田さんに思い入れがあるのだろう。その理由としては、洗練された走りだし容姿がキレイだというのはもちろんある。だがそれ以上に、彼女の人柄にとにかく魅了された。

林田さんとの最初のつながりは、この連載の第3回で登場した「彼女」を通してだった。「彼女」を心から慕うかわいい妹分のような存在であった林田さんにも、私がtwitterで少しずつ絡むようになったのがキッカケだ。無論、林田さんにとっては巻き込み事故のようなものでしかなかっただろうが(笑)

林田さんはとにかく礼儀正しく、しっかりした女性だ。このクロカンの当時はまだ、19歳になりたてくらい。しかし、きちんとした大人の対応ができる選手だった。まだtwitter上で活字のやりとりをしているだけのときでも、林田さんはちゃんとこっちの目を見て話してくれてると実感できていたくらいだ。そして実際にお会いしてみると、やはりそのとおり。しっかりしていた。しかし反面、慕っている親しい先輩と絡むときにはちょっとやんちゃというか、甘えたような一面を見せることもある。このへんの小さなギャップにも、おじさんは弱い笑。そして何より、走っているときはカッコいい。

彼女には、応援したくなる要素が詰まっているのだ。

「みんなを応援してますよ」とは言っても、内心やっぱり礼儀正しい子の方がかわいい。真剣に応援して真剣にお礼が返ってくると、より感情移入して応援したくなるものだ。こっちから挨拶して仕方なく形だけ返してくる雰囲気の子よりは、向こうから笑顔で元気に挨拶してきてくれる子の方に気持ちは傾く。

結局この後林田さんのレースを直接応援する機会は少ないながらも何度かあったが、彼女はいつでも私を見かけると自ら挨拶してくれたし、レース後は私を探して「声援聞こえました。ありがとうございました。」とお礼を言いに来てくれた。

林田さんを応援するようになってから、「陸上選手を応援する」という括り全体が楽しくなっていったのも事実。いわゆる「今どきの若者」みたいなものに対して世間一般で描かれるようなイメージとはまったく違う林田さんの人柄が、女子長距離全体のイメージを上げた部分も少なからずあるようには感じる。

もちろん、林田さん以外にもいつも礼儀正しく接してくれる選手はたくさんいる。そういう選手、そういう若者に出会えることも陸上観戦の楽しみの一つだ。そういう楽しみに気づかせてくれた林田さんには本当に感謝している。


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第6回は以上です。

林田みさきさんは、この2020年3月をもって引退されました。

本当にショックでさみしいかぎりですが、今までたくさんありがとうという感謝の気持ちの方が大きいです。

彼女なら今後の人生も必ず立派に進んでいくだろうという確信はありますが、これからも1人の女性としての彼女を心から応援していきたいと思います。

今まで本当にお疲れさまでした。そして本当に本当にありがとうございました。


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