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焼肉のタレから人の優しさを学んだ話

平日夕方の駅構内。
「これからご飯に行こうよ!」
「久しぶり〜!」

学生から、社会人の仕事帰りまで
様々な年代が忙しそうに行き交う人。

パリーーンッ!
近くで何かが割れる音がした。
「やばっ!やっちまった!」

駅で焼肉のたれ(瓶)を
盛大にぶちまけてしまった。

背負っていたバックのチャックがしまってなかったみたいだ。

幸い、割ってしまったのは駅の隅で、近くに人はいなかった。

怒りや、ため息よりも先に羞恥心で
頭が埋め尽くされた。

バックに入っていた
ありったけのティッシュでふく。

一人で拭いてたら、駅員さんに清掃も
頼めない。

(なんでこんなところで‥。)
自分で自分の行いの悪さに、
情けなくなる。
というか心の中では、大号泣していた。

そんないっぱいいっぱいの中、後ろから、声が聞こえた。

「あの〜。良かったら使ってください」
20歳くらいの学生のお兄さんだった。

お兄さんは、ポケットティッシュを渡すだけでなく、なんのためらいもなく、一緒にふき始めてくれる。

そのご厚意に甘えて、駅員さんを呼びに行かせてもらった。

「今清掃業者呼ぶので、その場で待っていてください。」

駅員さんには報告できた。

お兄さんには、お礼を言い、
「自分でできることはやろう」と、
また、拭き始める。

するまた、遠くから声をかけてくれた。

「あの〜、使ってください!」
10代の女の子二人組だ。

その一言は、ハモっていた。

きっと遠くで見てて、
勇気を出して話しかけてくれたみたいだ。

もう、本当にありがたかった。

その後も、50代くらいのお母さんが、
「これ、なにかに使えるかも!使って!」
と、ポリ袋を笑顔でくれた。

ありがたい想いで、胸がいっぱいになった。

その後も、若い社会人が
「これ、使ってください」と
ウエットティッシュを丸ごとくれた。

涙は出ていなかったが、
瓶を割ってしまった自分への怒りや、
恥ずかしさ、申し訳なさは、
もうなくなっていた。

その後、駅員さんに引き継ぎ駅を後にした。

助けてくれた人たちは、損得勘定じゃなかった。
「同じ状況だったら、自分は見て見ぬ振り」をしなかっただろうか?

自問自答した時に、
正直自分は駆け寄れなかったと思う。

5分前までは。

小さな優しさは、してくれた人はすぐ忘れてしまうかもしれないけど、してもらった人は必ず残る。

そして、どこかで同じように、困っている人がいたら、「僕は、きっと助けるんだろうな」と思った。

それが、一期一会の恩返しだと思うから。
たった5分の不運が、何にも変えられない優しさに気づけた「ありがたい5分」になった。

焼肉のタレ買ってよかったな。

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