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505 オクシズの森でウィスキーを嗜む。

みなさんはウィスキー工場の見学というとどこを思い浮かべるでしょうか。余市のニッカウヰスキーの工場や大阪のサントリー山崎工場なんかを想像する方が多いと思います。昨年、わたしも北海道余市町の工場に見学に行きました。早く予約しないとすぐに満席になってしまう人気ぶりです。

そんな人気の高いウィスキーの工場見学ですが、実は静岡市内にもウィスキー工場を見学できる場所があるのをご存じでしたか?「静岡にウィスキー工場なんてあったっけ?」そう思う方も多いと思います。わたしも静岡にすむまで知りませんでした。

その工場は静岡駅からバスに揺られて1時間の山の中、「オクシズ」と呼ばれるエリアにありました。

上助(かみすけ)バス停からのどかな山の中を15分ほどあるいていくと、

ありました!これが静岡発のウィスキー「ガイアフローウィスキー」の工場です。ガイアフローウィスキーは社長の中村さんが一念発起してウィスキーの製造を決意して2016年からこの地で製造を始めたまだ歴史の浅い会社です。生産量も大手ほど多くはありませんが、静岡産の杉を樽に使うなど地域に根付いたウィスキーの生産にこだわって業績を伸ばしています。

ここではほぼ毎日工場見学会を行っており、参加することにしました。見学時間は1時間で料金は1100円。試飲会は別途料金がかかります。車で来るほうが早いですが、それだと試飲ができません。しっかり試飲するためにバスで来ました。えへ。

麦芽の分別から粉砕、発酵、蒸留に至るまで順を追って丁寧に説明を頂きました。静岡ではこれまで大麦の生産はほとんどされていませんでしたが、ガイアフローができたことで農家と提携を結び、地元産の大麦の生産もしていただけるようになったそうです。今は外国産が多いですがいつか静岡産の大麦で作られたウィスキーが飲める日を楽しみにしています。

発酵場に並べられた樽たちは静岡産の杉でつくられたもの。
ただいま乳酸菌がおいしいウィスキーを作っています。

発酵場ではいままさに乳酸菌が麦汁を発行させている様子をのぞかせてくれます。ヨーグルトのような発行した匂いもリアルに嗅ぐことができます。他のウィスキー工場でこんな間近で樽をのぞかせてもらったことはありません。小規模だからこそなせる業でしょう。

発酵槽は静岡産の杉を使っていると書きましたが、オレゴンパインも使っています。何度も使っているうちに槽につく酵母菌や乳酸菌の量は差がつくそうでそれが味の違いにも結び付きます。まだガイアフローはできたばかりの会社でこれから年を追うごとに味の変化も見られるそうで、その変化具合も楽しみなところです。

洗浄中の水を張った樽が水鏡となってオクシズの山々を美しく映していました。

麦芽を粉砕するモルトミルの機械はメルシャンの軽井沢蒸留所が閉鎖されるときにオークションで落札したものだそう。同工場のウィスキーは工場閉鎖後に海外から高い評価を受けることとなり、それを譲り受けたガイアフローにも今海外から熱い視線が注がれているそうです。ちなみにガイアフローはのちに出てくるポットスティルも一つ譲り受けています。

蒸留エリアに来ました。ガイアフローでは4基のポットスティルのうちメルシャンから受け入れたポットスティルでは蒸気による間接過熱を行っていますが、それ以外では薪による直火での蒸留を行っています。200年前と変わらない製法で社長が余市の石炭による加熱や、スコットランドで見た伝統的な製法を見て自らも取り入れることを決断したそうです。

薪は静岡産で間伐材を使用。

見学会のクライマックスは外へ。こちらは後で帰りに撮ったものですが安倍川の支流・中河内川。ガイアフローのウィスキーは南アルプスに端を発して流れるこの川の伏流水を井戸からくみ上げて使っています。軟水が主流の日本の水の中では硬度が高めでウィスキーの味に重厚感が増すといいます。

最後に案内されたのは貯蔵庫。樽の種類は、バーボンウイスキーの熟成に一度使われた古樽が多く使われます。3年以上寝かせてようやくガイアフローウィスキーは完成品となります。

ガイアフローでは蒸留や加熱の仕方の異なるウィスキーをの中から好みの樽を選んで樽ごと購入する「プライベートカスク」という制度があります。
樽オーナーになって自分だけの好みのウィスキーを作ることも可能。なお、気になるお値段ですが、英国産大麦使用の50リットル樽で378,000円(税別)、180リットル樽で1,830,000円(税別)だそうです(2024年11月現在)。

見学会が終わり、いよいよ試飲タイムとなりました。帰りのバスが来るまで1時間、ガイアフローウィスキーを堪能することができます。商品によってお値段は1杯200円から1000円ほどです。

試飲ではロックやソーダ割といった飲み方はできず、中河内川の伏流水をくみ上げた水で水割りのみ楽しめます。試しに原酒を口に含んでみましたが高いものでアルコール度数は60°超。喉が焼けそうでした。

先ほど見学したポットスティルを眺めながら、プライベートカスク用の商品や薪直火で蒸留したウィスキーなど3杯をいただきました。スモーキーさの中にどこかフルーティーな味わい。鼻に心地よい香りが抜けていきます。

バスの時間が近づいたのでほろ酔い気分で建物の外に出ます。帰りのバスは路線が異なり「奥の原上」というバス停。建物の目の前にありました。静岡発のオリジナルウィスキー、ガイアフロー。これから知名度をもっともっと上げてもらって日本中、いや世界中にその名を轟かせてもらいたいと思いました。


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ミヤコカエデ(Miyako Kaede)
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