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277 三重・東紀州 世界遺産の奇岩をめぐる

わたしは単身赴任で三重県に住んでいます。
いつ単身赴任が解除されるのかわからないので、三重に派遣されているうちにできるだけいろんなところに行こうと思っています。

伊勢や鳥羽、伊賀方面にはすでに出かけているのですが、三重の最南部、東紀州にはなかなか行く機会がありませんでした。

しかし、今回この地域を走る特急「南紀」が新型のHC85系に置き換わるというイベントが発生。息子がこれに乗り、私は紀伊勝浦駅に車で迎えに行き、そこから一緒に旅行をするということになりました。紀勢本線で何度か通り過ぎたことはありますが、人生初の東紀州旅行を敢行することとなりました。

東紀州ってどこ?

さて、先ほどから東紀州といっていますが、それってそもそもどこなんでしょうか。


俳句のくに三重HPより

三重県は紀伊半島の東部にある南北に長い県で、旧伊勢、志摩、伊賀と紀伊の一部からなります。紀伊というと和歌山のイメージがありますが、三重県の南部も紀伊だったんですね。その紀伊の三重県部分を東紀州といいます。上の地図の紀北町、尾鷲市、熊野市、御浜町、紀宝町の5つの市町からなります。大紀町は「紀」の字がつくのに伊勢国です。紛らわしい…。同じ三重県なんですが、四日市や津の人から見ても東紀州はとっても遠い異国の地。このエリアに行くのは大旅行というイメージがあります。

おどろおどろしい鬼の住む城・鬼ヶ城

そんな人里離れた異国の地と思われるエリアですが、四日市からは車で2時間。今は自動車道も整備されたため意外に早くいくことができます。

熊野市随一の景勝地として知られるのが「鬼ヶ城」。

赤鬼と青鬼が並んで仲良くお出迎えしてくれます。

この日は小雨のぱらつくあいにくの天気。九州では水害も発生した日で、こちらも若干海が荒れています。

少し進むと「鬼ヶ城」の看板の向こうに鬼の横顔のような奇岩が見えます。この辺りは荒波に削られた岩が隆起して切り立った崖になっています。その崖沿いに遊歩道ができておりこの地域きっての景勝地となっているのです。2004年に世界遺産となった「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成遺産の一つとなっています。

徐々に近づいていきます。まさに鬼が住んでいそうな城の入り口といった印象です。

リアルに鬼の形相。


鬼ヶ城を潜ると千畳敷と呼ばれる場所が大きくえぐられた岩の下に広がります。下に立っている人の大きさと比べるとそのスケールの大きさがわかると思います。

この先も断崖絶壁に沿って遊歩道が続きますが眼下に熊野灘が見えて結構怖いです。

雨の日は特に滑るので歩行注意です。

かつて海からしかたどり着けなかったこの場所には実際に鬼が住むといわれ大変に恐れられていました。桓武天皇の命を受けた坂上田村麻呂が討伐を行い平定したという伝説が残されています。

この地域には数々の鬼伝説があり、現在も尾鷲市に九鬼、三木里、二木島といった「き」=「鬼」に通じる地名が残ります。この地域は奈良時代には軍事上の弱点とされており、大和政権はこの地域に「鬼」のつく地名をつけて心理的に近づけないようにしていたと言われています。この鬼ヶ城のエピソードも地形を逆手に取った寓話を造り、心理的な結界を生み出したかったものと思われます。

にしてもなかなかおどろおどろしい奇岩が海沿いに続きます。

この辺りは切り立った崖のすぐそばに遊歩道があります。「猿戻」と呼ばれる場所で、猿さえも引き返していく危険な場所です。

この先も遊歩道は続き40分ほどで踏破できるようですが、雨で滑りやすくなっていることや息子の迎えの時間も近くなってきたこともあって引き返しました。鬼が住むというのにふさわしいスリルいっぱいの景勝地でした。

日本最古の神社「花の窟」

さて、鬼ヶ城からさらに車を南に走らせると「花の窟」と呼ばれる場所があります。なんて読む?はなの…あな?いやいやいやいや。

こちらは「花窟(はなのいわや)神社」。日本書紀にも記載のある日本最古の神社といわれています。こちらも世界遺産の構成遺産のひとつです。

「日本最古」と謳う幟の間を潜り抜けます。

こちらの門をくぐるとご神体とご対面。そのご神体がこの神社最大の特徴です。

この神社に拝殿や神殿はありません。あるのは45mの巨岩とその前に造られる小さなお参りをする場所のみ。ここにまつられているのは伊弉冊尊(イザナミノミコト)。日本列島を造り、日本の基礎となる様々な神々を生み出した神々の母です。その伊弉冊尊が火の神軻遇突智尊(カグツチノミコト)を生んだときに火傷を負いそれがもとで死に至り、葬られたのがこの場所であるという伝説が残ります。花の窟は伊弉冊尊の墓所なのです。

息子と七里御浜を歩く。

志摩から続くリアス式海岸で奇岩の多い東紀州。でもそのすぐ南にはこのようなながらかな海岸線をもった七里御浜が広がります。熊野古道が脚光を浴びるこの地域ですが、実は古道以外にもみどころが豊富にあります。この先は和歌山県にはいり、那智の滝などの有名な観光地もあります。アクセスしやすい場所とは言えませんが来る価値はあると思います。特急も新しくなりましたのでこの機会にぜひお越しください。

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