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276 甘木鉄道で福岡の小京都・秋月へ

今年6月の九州旅行では福岡県の中部、朝倉市にやってきました。
50ン年生きてきて、初めて訪問する町です。

この町に来たのはこの町に小京都とよばれる町並みがあると聞いたから。

まずは西鉄甘木線で西鉄甘木駅にやってきました。

上の地図の赤い点線が市境。市境の右側が朝倉市です。市の西端に線路が二本伸びており、北側が甘木鉄道、南から延びているのが西鉄甘木線です。両社の駅は同じ場所にあるように見えますが、数百メートル離れています。

拡大するとこのように両駅が離れているのがわかります。

西鉄の方は上の写真のような1面2線の簡素なホームと小さな駅舎がある駅。久留米、大牟田方面からはこちらの利用が便利です。

一方、甘木鉄道の駅舎はなかなか立派な造り。西鉄の駅前にはなかったロータリーも設けられています。甘木鉄道はかつて国鉄甘木線であり、当時の甘木市としてはこちらの方が市のメイン玄関という位置づけであったことが窺えます。国鉄の第1次特定地方交通線として早期に廃止対象となり福岡県も存続を求めなかった路線ですが、沿線の市町やキリンビールが出資して第三セクターを設立して甘木鉄道として今日でも運行を続けています。

甘木市の中心部に位置する元国鉄の終着駅ということもあってか駅構内は西鉄に比べると随分広いなと感じます。留置線や車庫などもある甘木鉄道の中枢となる駅です。

駅名にJR九州感がありますが、JR九州になったことはありません。国鉄時代に三セク化されています。

甘木鉄道の車両はすべて違う塗装になっているのが特徴です。

今日はどの色が来るのか、楽しみになりますね。

不採算路線として国鉄から早々と切り離されてしまいましたが、福岡からは大回りになる西鉄よりも早く甘木に行くことができること、小郡で西鉄とのアクセスを改善したこと、大板井で高速バスとの連絡をできるようにしたことなどで利便性が高まり、2005年まで黒字を計上する三セクの優等生と呼ばれる存在でした。燃料の高騰などで現在は苦しんでいますがそれでも検討している部類に入ります。国鉄の努力不足も感じますね。

そんな甘木鉄道の駅舎の前からバスに乗り、福岡の小京都と呼ばれる秋月に向かいます。バスの写真がありません。その代わり駅前にあるちょっとシュールな子供たちの顔の描かれた物体をご覧ください。

甘木鉄道の甘木駅前のバス停からバスに乗り、20分ほどで秋月に到着します。

秋月バス停は風情漂う木造の待合所があります。1981年、フーテンの寅さんがこの地を訪れたそうです。

ここにはかつて福岡藩の支藩である秋月藩がありました。城を中心に街が昔ながらの姿をとどめており国の重要伝統的建造物保存地区に選定されています。

こちらは城跡の前に延びる「杉の馬場」と呼ばれる通りです。かつては両側に杉が生い茂り、武士が馬術の腕を磨いていたといいます。江戸中期には杉は伐採されてしまい、明治期に桜が植えられて今のような通りになったそうです。

しばらく歩いていくと城跡らしい石垣が見えるようになります。

こちらが城の正門につながる坂で通称、瓦坂とよばれています。

土砂の流入を防ぐためにこのように瓦を敷き詰めていました。今もその痕跡が残ります。

こちらは県指定有形文化財の「長屋門」。秋月城はほぼすべて取り壊されてしまっているのですが、江戸末期に建てられた奥御殿に至るこの長屋門だけが現在も城があったときと同じ場所に遺されています。

隣の垂裕神社の前にある黒門は瓦坂の奥に建っていたものを移築してきたものです。垂裕神社は秋月の藩主であった秋月黒田家の藩祖黒田長興を祀る神社であり、彼を偲ぶ意味もあり移築されてきたようです。

さて、篤い中を歩いてきたので疲れました。杉の馬場の奥にあるお茶屋で休憩しましょう。

疲れたときには糖分が欲しい。ということで何十年ぶりかでりんご飴を買いました。でっかいりんご1個まるまるのりんご飴。飴をごりごりと歯で噛み砕きながらいただきます。こんな大きいのではなく、小さく刻んだりんごをカップに入れたものもありました。

少し西に歩き武家屋敷のある通りを歩くと石垣の美しい風情漂う通りがありました。

こちらは武家屋敷久野邸という施設なんですが、残念ながら5分前に閉園。当時の武家の生活を知る貴重な施設となっています。

◆秋月武家屋敷久野邸
住所:
0946-25-0697
営業時間: 10:00-17:00(月曜日は休業)
連絡先: 〒838-0001 福岡県朝倉市秋月83
駐車場: 最寄りの駐車場

かつて時を告げる鐘のあった小高い丘に登り秋月の町を眺めます。山に抱かれたこの地に礎を築いた秋月城のもとで栄えた城下町は今はひっそりと眠りながらも所々でかつての繁栄の面影を見せてくれています。

バスの走る国道322号沿いは蔵が立ち並びます。この辺りは観光ガイドなどにはあまり書かれていないのですが、秋月の町の中で一番小京都を感じられる場所だと思います。

国道を甘木方面に向かっていくと目鏡橋(めがね橋)に到着しました。こちらも県指定有形文化財。残念ながらめがねには見えませんが、長崎の石工が作ったことからその名がついたといわれています。木造の端が度々洪水で流されてしまっていたことに頭をお悩ませていた秋月藩が架橋した渾身の作で、1810年の完成後今も崩落することなく川に架かっています。洪水が多い今日、この工法には学ぶところも多いのではないでしょうか。

かつて城下町として栄えた秋月。今は静かで大きな目玉となる観光スポットがあるわけではないですが、ゆっくりと歴史の香り漂う街を歩くだけでも楽しいものです。是非一度甘木鉄道と路線バスを乗り継いで、秋月にお越しください。


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