516 「森の芸術祭」で盛り上がる津山を歩く。
岡山県北部のまち、津山市を旅しています。
今回津山を訪ねたのはこの時期に開催していた「森の芸術祭 晴れの国・岡山」に参加するためでした。津山市を始め、奈義町や真庭市など美作地方の各所に設けられた施設に展示された芸術作品を鑑賞することができます。私が訪ねたのは11月23日。芸術祭は24日まででしたので滑り込みセーフでした。実は津山を訪ねたのはこれで4度目なのですが、いつも泊まるだけだったり乗り換えのために駅を利用するのみにとどまっていました。芸術作品を見がてら、生まれて初めて津山の街並みを見て歩くのも楽しみにしてきました。
津山駅から北西に20分ほど歩いた場所にある城西浪漫館。すぐ隣に中島病院がありますがもとはこの中島病院の本館でした。大正6年の完成で正面にドームを配した屋根や細かい装飾が特徴の洋風建築です。この建物も芸術祭のパビリオンのひとつになっています。
部屋に入ればなかなかシュールな光景が目に入ります。部屋の中に苔が生え、植物が生い茂っている光景。なかなかお目にかかることはできません。もちろんこれは芸術作品です。
芸術作品の間にもとの病院時代に使われていた調度品や暖炉などが置かれています。これが作品と妙にマッチして芸術作品の一部を構成しているかのようでした。
続いて向かったのは作州民芸館。この地方の民芸品の紹介やお土産品などを売っているところです。明治42年に土居銀行として建てられたものであり、中は今も銀行の名残が多く残っています。平成9年に国の登録有形文化財に登録されました。この時代に建てられた銀行って洋風建築で重厚感のあるものが多いですよね。
ここにも多くの作品が展示されていましたが、最も目をひいたのがサウジアラビアの芸術家ムハンナド・ショノ氏の《意味を失うことについて》。金属で作られた四つ足の生き物のような機械が砂の上をランダムに動くことによって砂に模様を作っていきます。せっかく作った模様もまた次に同じ場所を歩くことによって新たな模様に書き換えられてゆく、そんな様を無常のもととして描いた作品です。
こちらには芸術作品と合わせて民芸品の展示がありました。鳥取県倉吉から伝わり広まったとされる作州絣(かすり)。日常使用のものが多いことから派手さはなく、白と紺を基調としています。ただ紋様は伝統工芸品でありながらも幾何学的で近代的な部分も感じさせます。今着用してもとてもおしゃれに見えると思いますね。
作州工芸館を出ると東に歩を進めます。津山城の南にはかつてホテルだった場所に空き地がありますが、ここには卓球台があって子供たちが卓球に夢中になっていました。いつもここにあるのかと思いきや、これも今回の芸術祭で展示された芸術作品だそう。地元の職人と共同で製作された卓球台をここに置くことで市民が集い新たなコミュニケーションを生む場となることを期待して作られました。
最後にご紹介するのは津山城の中にある竹を組んだこの作品。次回ご紹介しようと思っている津山城は石垣が高いことで有名な城ですが、その高さにひけをとらない竹で編まれた巨大な球体が目をひきます。中に入ることもでき、下から覗けば竹が縦横無尽に向かって伸びる姿を眺めることができて躍動感を感じさせる作品です。
明治から大正にかけて建てられたモダンな建物が残るまち、津山。美作地域の中心都市として発展を遂げてきたことを感じ取ることができました。その街を華やかに彩った芸術祭は先月盛況のうちに終了してしまいましたが、またこういったイベントを開いてもらって芸術作品とともに、津山の町も深く知ってもらいたいと思いました。