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もしも「NFT×ファンタジースポーツのある日本プロ野球の世界」で、佐々木朗希の完全試合、19奪三振、13者連続奪三振の投球があったなら

佐々木朗希投手に関してなにかひとつ書いておこうと思いましたが、このテーマが良さそうなので妄想記事をざっとまとめておきます。

前提

もしもsorareの世界が日本プロ野球を対象に実施されていたら」を考える

↑の記事でも少し触れましたが、SXSWでもスポーツセッションのスポンサーになっていたsorareの世界が日本にあったときに、どうなるかを考えます。

1_佐々木朗希投手のデジタルカードの値段が急騰する

MLBを例にすると、野球のファンタジースポーツでは、投手は奪三振数や失点、投球回数などの数で競います。

一般的なMLBの米Yahooでのファンタジーの内容やルールは以下のようなものです。なお、このYahooのファンタジーはNFTではないので、有限のデジタルカードがあるわけではなく、参加する際にデジタルカードを購入するという好意は必要ないです。

もともとローテーションに入っている投手であり、若く将来有望な選手、奪三振も多くとるタイプの選手なので、もしsorareのような世界があったならば今日の試合の前の時点で投手として最上級の価格帯にはいたと思いますが、今日の投球で日本プロ野球界で唯一無二の投手であることが完全に認知され、価格の急騰が想定されます。

https://www.soraredata.com/ より。伊東純也(KRCヘンク)選手の過去3ヶ月の「レアカード」の取引価格推移

例えばサッカー日本代表で活躍している伊東純也選手のように、価格は右肩上がりながら活躍したタイミングでさらに急騰するという、そんな状況が起こるでしょう。

グラフが山になっている2月初旬はちょうど日本代表がワールドカップに出場するための大一番で伊東選手が1ゴール1アシストを決めた後であり「日本代表の大黒柱は伊東純也である」という認知が割と一般に広まったタイミングでした。

2_デジタルカードの取引量が上がることにより、リーグや選手にお金が分配される

一般的にNFT化されたデジタルカードを取引すると、手数料がかかります。そしてその手数料は出店元に一部還元されるはずです。おそらく佐々木朗希投手のカードは取引量が増加するでしょうから、その取引に関わる手数料はゲームを開いている人、さらにその権利元(リーグや選手)に還元されると思われます。

ちなみにsorareの場合はこの取引の手数料が現時点ではデジタルカードを持っている人にはかからない状況となっており、sorare側が負担しているようです(この仕組の詳細はよくわかりません)。

3_佐々木朗希投手のデジタルカードホルダーが「いつ売ればよいか?」の分析を始める

https://www.soraredata.com/ より。伊東純也(KRCヘンク)選手の過去3ヶ月の「レアカード」の取引価格推移【再掲】

こちらの伊東選手のチャートを再掲します。

普通ではあり得ない活躍をしたタイミングでは瞬間的に価格が伸びるものの

・その活躍が継続的に続くとは限らないこと
・運営側デジタルカードの供給量を増やす

などの影響によって、このチャートのように価格高騰がバブルで終わることもあります。

デジタルカードのゲーム上での保持者であるということそのものに価値を感じている人ならともかく、ファンタジースポーツで使える、もしくは取引可能な資産(のようなものとして)カードに価値を感じている人からすると、市場価格が落ちてくる前にカードを売ろうとし、情報の分析を始めるでしょう。

4_一部、デジタルカードのゲームの世界に没頭しすぎる人も生まれる

まあこれは、お金やお金に近いものが動くどの世界でも起こりうることかなと思います。

5_権利関係、法務関係がすべて整備されている世界の中で考えるなら、スポーツのデータ活用の需要が上がり、スポーツ観戦やチームのファン以外からもお金が入る仕組みではある

SAJ2022でもNFTと法務に関するテーマでセッションを行いましたが、今書いているような世界観は、いまの日本のプロ野球ではすぐには実現できないと思います。

SAJ2022HPより引用(画像をクリックするとHPに飛びます)

法務の問題の整理は↑のページが詳しいです。

また、法務の問題だけではなく、NFTの権利の問題も整理する必要があります。まあ、デジタルカードであれば「誰の」カードかが一目瞭然なので、NFT化した映像よりは選手本人の権利として整理しやすそうですが。

このあたりの権利を整理して、統一基準ができ、法務上も問題ない、社会通念上もサービスとして問題ないという世界の中で、sorare的なサービスがプロ野球でも行われていたならば、今日の試合で動くお金はスタジアムに足を運んだスポーツ観戦者、DAZN等での観戦者、マリーンズファンにとどまらないことが想定されます。

佐々木朗希投手が成し遂げた記録、そのデジタルデータ(試合のスタッツやデジタルカード)に対して様々なお金が動くことになると思うのですが、これを善しとするのか、しないのか、どう落とし所をつくるのか、がいま日本で議論され初めているポイントと認識しています。

事実、海外のサービスであるsorareはJリーグも対象にしているわけですし、日本が全く無視できる話ではない状況です。

NBA Top Shot のサービスにおいては、Dapper Labs 社とユーザーとの間、及びユーザー相互間に、財物の「得喪を争う」関係が生じておらず、「財物を賭けその得喪を争うこと」には該当しないため、少なくとも上記(1)記載のサービス内容と実質的に同等の内容と評価できる限り、NBA Top Shot と類似するサービスを日本国内で提供した場合に賭博罪は成立しない(すなわち、NBA Top Shot のようなサービスは賭博に該当しない事業形態である)と解することも十分に合理的であるものと考えられます。

NFTを用いたランダム型販売と二次流通市場の併設に関する賭博罪の成否 - NFTホワイトペーパー(案)を踏まえて - (2022年4月1日号)より一部引用

上記のリンクに記載されている内容を見ると「NBA Top Shot」のサービスについては日本でも賭博罪には当たらないという見解が示されています。

Top Shotはファンタジースポーツではないので、「偶然の勝敗により財物や財産上の利益の得喪を争う行為」が生じるサービスではないと思われます。

この概念からすると、今日の佐々木投手の投球1球1球の映像をNFT化するという試みなどはすぐにでも生み出されると思います。
(ただ、個人的にはその映像NFTは使用価値が不明確かつ、鑑賞用アートとしての使用価値も不明確なため、永続的な価値をどの程度もたせ続けることができるか疑問を持っています)

一方でsorareは「財物や財産上の利益の得喪を争う行為」は存在するサービスとみなされる可能性が高いと思いますので、米国でも議論されていたベッティングとファンタジー(デイリーファンタジー)の違いとしての「偶然の勝敗により」なのか否かの話に今後はなってくるのかなと思っています。

ファンタジーとベッティング論争のあたりは鈴木友也さんの記事を追っていくと良いかなと思います。

プロ野球の歴史が変わった試合であるからこそ、今後のスポーツ産業の広がりを建設的に議論する上でのひとつの例としたい

以上、色々と脱線しながら書いてみましたが、個人的な執筆のモチベーションとしてはこの見出しにつきます。

おそらくこの試合はロッテファン、プロ野球ファン、スポーツファンだけでなく、日本中の誰もが気にせざるを得ない話題だからこそ、多角的に、かつ建設的な議論の題材となることを願っています。

今回のテーマに限らず、選手のパフォーマンスを中長期的に育成する話と、甲子園で勝つためのチームを作る話のコンフリクトの領域でも大事な例ですし。

パフォーマンス周りの話は誰か他の方が記載すると思いますので、自分は今日ファンタジー関連の記事を書いてみました。

なにかの議論のきっかけになれば幸いです。

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