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『余命一年、男をかう』30年かかったんですね。

吉川トリコさんには、もう会えないだろうな。

最新作『余命一年、男をかう』。

講談社も映画仕立てのPVを作って本気で売る気だし

作品も、無理な話と思われそうだけど、「男をかう」という行為に向かう感情がごく自然で、すぐドラマ化されそうな面白さがある。

この作品、余命一年と医師に告げられた(無理やり、聞きだした)40歳独身女性の会社員(華々しい会社員ではなく、淡々と事務を執る会社員)唯が、30歳のピンク髪のホスト瀬名を「かう」(買う、飼う)物語。

ちなみにドラマ化の場合のキャストですが

30歳のピンク髪のホスト瀬名は、わたしの好みだと綾野剛さんですが、若く見えるけれどもう彼も39歳。この作品、2020年、2021年が描かれていて臨場感があるので、できるだけ登場人物の年齢にあったキャストの方がふさわしいと思うんですよね。そうなると、ピンク髪にひっぱられちゃってるんですがEXITの兼近さんがちょうど30歳。ちゃらいのもできるけど、ちゃらいだけじゃない人なので、ピッタリな気がします。

この主人公の40歳の会社員唯ですが、江口のりこさん、どうでしょう。今41歳。演技力もあるし。よく女優さんがモテない役や人から蔑にされる役をやって「その美貌でそんな目にあう訳ないじゃん」という気持ちになりますが、江口さんはもちろん素敵なんだけど、そういう気持ちを起こさせない稀有な女優さん。華々しいことが起こるわけでもなく、淡々と会社員生活を送る(でも、たいていの人はそう)唯にピッタリな気がします。


まあ、この小説、確実にドラマ化され、本もヒットして、これで、トリコさんは手の届かない人(元々届いてないのですが)になってしまうのだろうな。

トリコさんには数年前に猫町読書会のイベントでお会いしたことがあり、勝手に身近に感じていたのですよね。

こんなtweetをされるのも、今回が最後かもしれない。

そう考えると自宅から往復3時間かけてもトリコさんに会いに行かざるおえなかった。

真夏の土曜日の午後、喫茶店アミーゴに辿り着き一息ついていると、カンカン帽で颯爽と現れてたトリコさん。恐る恐る声をかけると、サインばかりかお忙しいだろうに私の与太話にまでお付き合い下さった。

この写真に写っているのは実は私。

ほんとに良い記念になりました。

本題の『余命一年、男をかう』ですが、男性が女性を「かう」小説は沢山あるし、現実的にもそちらを見聞きすることが多い。

ぱっと思いつく小説だと、文豪谷崎純一郎の『痴人の愛』はナオミちゃんを「買って」きて「飼う」話だし、ノーベル賞作家の川端康成の『雪国』のヒロイン駒子さんは芸者さん(はなから「買う」関係)。

でも、その逆は私が寡聞にして知らないだけかもしれませんが、思いつきません。

30年前の私の大学生時代「フェミニズム」というものが擡頭してきた時期で、男女平等であらねば、と思っていました。けれど、就職したら女性だけはお茶くみをし、灰皿を洗わなきゃならない、その上、私は容姿に恵まれてないので「ブスが入ってきた」という扱いを受けなきゃならなかった。同期の男性は容姿の美醜で優劣をつけられることはなかったのですけどね。

その頃のルサンチマンは、もう解消されてはいるのですが、当時は辛かった。大学生時代に男女平等であらねばと思っていただけに。

で、思いついたのは

「全部、逆にしてみたらいいじゃん」

というものでした。

そう、小説では女性が男性を「かう」(買う、飼う)、男性も女性と同様にお茶くみする、容姿で判断される、それならいいわ。いつそうなるんだろう。

『余命一年、男をかう』

男性を「かう」(買う、飼う)まで、30年かかったんですね。


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