「中性」であること

ずっともやもやした感情があった。男の子になりたいと思っていたこともあった。それには理由があって。
ひつじが男の子だったら就職もして家族を支えることができると思っていた。
内定した会社の方針に強烈な違和感を覚えたことがはじまりだった。

日本人女性は黒髪であること
女性は子どもを産むから喫煙しないこと、など。

喫煙者で就活のために黒染めしていたひつじにとってはとても居心地が悪かった。結局、好きじゃない教授の講義を受けていなくて恐ろしいことにそれが必修だった。それが判明したのが卒業間際。そのころ既に親には言わずに精神科通院していた。
手立てを考えることを放棄した末、半年留年して9月卒業。
もちろん内定はなくなった。

その一方であの企業には就職すべきでなかったのかもしれないと考えていた。
価値観を押し付けられているような女性は、というあまりに大きな括りは理解しがたかったところもあるし女性すべてが妊娠出産を望んでいるか?という疑問も大いにあった。それに不妊に苦しむ人もいる。

それからインターネットという世界にぬるく浸かっていたのだが性別を知られたくなくて顔出ししていたのに女性だとは思われていなかった。中性ということにして一人称は僕だった。

今でこそセクシャルマイノリティについてしきりに議論が交わされるようになったものの当時の扱いはいわゆる「厨二病」

すこしインターネットから離れた頃パートナーと同棲することになった。それから意識的に女の子を装うようになっていった。とはいえ内心は女の子の格好をしているだけといった具合で違和感は多少なりとあった。
パートナーは黒髪のロングヘアが好きなようだった。
お別れしてからまず髪を切った。
ブリーチをした。
すごく自分らしくなった気がした。
フリルやピンクを着ることもやめた。
いまは着心地の良いシャツを何枚か気回してあとは黒いスキニーが定番。

中性でいていいんだ、と思ったきっかけがある。
性別を選択しなくてはならない場面で回答しない、どちらでもないという選択肢が設けられていることが増えたように思う。その度にひつじは女性を選択しなくていいんだ。とどこかで安心していた。

そしてつい先日Xジェンダーであることがわかった。簡易的な診断ではあるがすごく腑に落ちた。それから自分は中性でいていいと思えるようになった。

わたしは男性にはなれない。
女性であることに違和感がある。
どちらでもない。
このどちらでもないという概念が確立されつつあることでほんの少し自分らしさというのを取り戻した気がしている。とても遠回りした。それでも間違いじゃなかった。

ひつじは中性です。

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