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味蕾diary 第5回 オムライス


【序文】
最近、酷い目にあった。

この寒さの続く3月の夜に
終電を無くし、降りたった栗平駅には
ネットカフェもカラオケもなく
始発を待つ羽目になったのだ。

全く全て自分の責任だった為、
ぶつけようのない怒りで途方に暮れた。

栗原駅から少し歩くと桐光学園という
全国でも有名なスポーツ進学校があった。

「こんなところにあるか。」

神奈川県民の誇りである著名人を
多く産んだ校舎が、路頭に迷った僕には
とても大きく見えた。
なんか、こういうのも良いなと
その瞬間だけ感じ、すぐに自責に戻った。

【本編】

オムライスはこの世で1番人を
可愛く見せてくれる食べ物な気がする。

以前、家族経営のカラオケ店で
アルバイトをしていた。
家族経営なので、僕はもちろん
輪に入れず、除け者にされていた。

その職場でも特に小言を言ってくる
先輩がいた。

僕が言われたことを空き時間にメモして
マニュアルを作成していたら
そんなのは辞めろと言いながら
僕の次に入ってきた新人にそれを見せながら
指導してきたような人だ。

その先輩とシフトが被ると勤務時間の前から
ストレスがかかり、この時間もお給料くれよ
と思ったくらいだ。

ある日、その先輩が休憩中に
オムライスを食べていた。

普通に。

美味しそうに。

「なんだよ、可愛いところあるじゃん…」

何故か、そう思った。
理由はわからない。
頭の良い人にこの現象を研究して
名前をつけてもらいたいくらい不思議だ。

蛙化現象の逆
オムライス現象
とでも名付けようか。

このオムライス現象の一件以降、
僕は自分の人間関係の最後の砦を
オムライスに任せている。

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