フジ子ヘミング&キエフ国立フィルハーモニー交響楽団

ドラマチックでした。

以前片道3時間かけて聴きに行った、
フジ子ヘミングの生演奏が忘れられずにこの日のチケットを取りました。
加えて初めてのプロの生オケです。

入場の時に手に入れたプログラムでも、
事前にチェックしていたのは、もちろんリストのラ・カンパネラ。
フジ子ヘミングを世に知らしめた曲目。

文字通り魂を揺さぶる演奏。
心をわしづかみにされてそのまま振り回されるような気分でした。
それをまた生で聴けるなんて!
期待値も上がります。

今日はどんなステージになるだろう?と、

ときめきながら自分の席で開演を待ちました。

最初のロッシーニはオーケストラのすごさにただただ感動。
バイオリンから始まる繊細なハーモニーに最初の一音から完全に持っていかれ、
本当に蜘蛛の糸を弦に使っているのかと思うほど繊細。

一人一人がすごく上手いし、その上手い音がぴったりと重なっていて、
美しいハーモニーが作られるその原理がわかった気がしました。
曲の頭から酔える演奏をたっぷりと味わいました。

次はモーツァルトのピアノ協奏曲。
待ちわびていたフジ子ヘミングの登場ですが、
足が悪いようで、指揮者に体を支えられてゆっくりと登場しました。

やっぱりもう86歳だしなあと、
見ている側も少しの不安はあったものの、
音楽が始まるとあっというまにその不安は解消されました。

第3楽章まで、
楽しいモーツァルト
悲しいモーツァルト
セクシーなモーツァルト
荘厳なモーツァルト

いろいろなモーツァルトがよりどり詰め合わせされていて、
モーツァルトっていろんな顔をもっているんだなぁととても楽しめました。
マニアックすぎない初心者も楽しめる選曲がよかったです。

フジ子のピアノは若干のパワー不足な気もしたけど、
オーケストラもそれを支えるようにじんわりと響き、
お互い守り合う演奏でした。

そして、プログラムは目玉のラ・カンパネラ。
フジ子ヘミングの代名詞と言って良い、待ってましたな曲です。

フジ子が一言挨拶をし、「ラ・カンパネラをやります」と言った後、
弾き始めたのはショパンの「別れの曲」。

プログラムにも書いていない、特別サービスでした。
フジ子のショパンを聴けるなんて、
こんな機会はもうないかもしれないと大変得した気持ちでした。
しっとりと聴かせるいい演奏で素晴らしかった。
これが後々忘れられない演奏になるとは思いもよりませんでした。

次は本当にラ・カンパネラ。
さすがの演奏でした、
が、ミスタッチがちらほらと目立ち、
途中曲から大きく脱線してしまうようなミスもありました。
また、以前目の前にした魂を揺さぶるような迫力はもうありませんでした。

さっき聴いたはずの、別れの曲が頭の中に浮かびます。
「別れの曲、もうフジ子はすべてを理解してステージにあがっているのかもしれない」

万全の状態で九州に来ることももうもしかしたらないかもしれない。
とても寂しくなり、フジ子がステージを後にした後も涙を拭うことに集中していました。

音楽家として、最後までピアノで表現し続けること。
この日は完璧な美しい音楽ではなく、
フジ子ヘミングの生き様をコンサートを通じて感じることができました。
私の大好きなフジ子ヘミングは間違いなく魂のピアニストでした。

帰り道、
「別れの曲」はとても粋な演出のように思えてますます好きになりました。
ちょっとおぼろげなラ・カンパネラもまだまだもっと聴きたい。

これからもまだまだ応援し続けたいと
心に強く願うコンサートになりました。

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