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CancerX Story 〜山上 睦実編〜

CancerXメンバーがリレー方式で綴る「CancerX Story」
第10回はCancerX理事の山上 睦実です。

1)私のキャンサーストーリー 

看護師になってすぐ、放射線治療室で働き始めました。
同期のほとんどが病棟に配属されるなか、地下深くの窓もない、なんとなく病院のなかでも隔絶された放射線治療室はなんとなく怖い感じのするところでした。患者さんたちも、未知の空間におそるおそる来られる方もいらっしゃいました。

はじめは怖いなと思っていましたが、放射線治療は確立されたがんの治療法の一つであり、一部のがんは治す(根治)ことができたり、痛みをとる、出血を止めるなどの効果があることが学ぶことで分かってきました。

正しい知識を持つことで、少し怖かった放射線治療室がとても素晴らしいところに変わりました。ここではがんを治そうと毎日、放射線治療に通う方たちと出会い、看護師ができることはなんだろうと考えました。この時、放射線治療を受けるがん患者さんを応援したい、という思いが私のがん看護の原点だと思っています。

そこからお仕事を続けること十何年、がん看護専門看護師を目指して入学した大学院で、元患者さんからお話を聞く授業がありました。

病院では診断前後、治療中や治療後間もなくの方にお会いする機会はあるのですが、治療をずいぶん前に終えた方に会うことはあまりありませんでした。小児の時に罹患された方、30年前に血液がんの治療を終えられた方、治療後に患者会の活動をされている方、どの方からのお話もがんを体験したからこそのその方その方それぞれのStoryがとても印象的でした。

ここで出会った患者会の方とは、今も一緒に小中高校生のがん教育の授業に同行させてもらっています。患者会の方が治療のこと、いのちのこと、つらかったこと、支えになったこと、などをお話しすると、生徒さんたちの心にぐっと響くのが伝わります。当事者が経験を語ることは、強い力があることを実感しています。

がん教育の授業から

また同じ授業で出会ったほかの方には、「がんのチーム医療を学ぶ医療者の教育プログラムにぜひとも参加してみませんか」と声をかけていただきました。私はこれが何のことかもわかりませんでしたが、「なんだかあなたに合ってると思うわ。」というその方の言葉を信じて飛び込んでみました。これが Japan Team Oncology Program:J-TOPとの出会いです。

J-TOPのワークショップに参加したことで、日本に、世界にはこんなにもがんの医療に熱意をもって取り組む医療者がいるということを知ることができました。職種を超えて、国を超えて、がん医療に日々取り組む仲間から刺激を受けています。


J-TOPでのMDアンダーソンがんセンターでの研修

2)CancerXに参加したきっかけ

 
病院で働いていますが、がん患者さんを取り巻く問題は病気のことだけではなく、病院の医療者だけが頑張っても解決できることばかりではないと感じています。

家族のこと、仕事のこと、学業のこと、介護のこと、妊娠出産のこと…解決のできない、誰にもどうしようもないこともたくさんありますが、社会の受け止める力や私たちの意識が変われば解決に近づくこともあると感じています。

CancerXはがんの社会課題の解決に向けて、いろいろなバックグラウンドの方が参加しています。医療者だけでできないことを社会の皆さんと変えられるのではないかと思い、CancerXの活動に参加しています。

がんをとりまく様々な課題、Cancer Agendaの一つ一つが達成できるようになると社会が今よりも寛容に、暮らしやすくなるのではないかと期待しています。

CancerXのメンバーと

3)今後の展望 

今は病院では緩和ケアチームのメンバーとして、活動しています。

患者さんと家族に対して、大まかには、がんの診断前・治療前の不安への対応や治療中の副作用をはじめとする症状コントロール、治療終了後には穏やかに過ごせるようなお手伝いをしています。この分野の専門家として知識・技術を磨くことはもちろん、これから出会う緩和ケアを必要とする方たちのサポーターの一人として役立つ存在になりたいと思います。

同時に大きな視野で、社会の中でがんを取り巻く状況がよりよくなるような、そんな活動やともに歩んでくださる方とのつながりをつくっていきたいと考えています。

私ができることは小さな事かもしれませんが、CancerXの多様な仲間、J-TOPの熱意あふれる医療者の皆さんとこれらの賛同してくださる方たちと力を合わせていけたらと思います。皆さんと一緒に、さらに、がんと言われても動揺しない社会を目指して!

プロフィール


山上 睦実

東京大学医学部附属病院 がん看護専門看護師
神奈川県横浜市出身。看護師として北海道大学病院、東京大学医学部附属病院で勤務。
2018年がん看護専門看護師資格取得。
現在は緩和ケアチームの看護師として、時にはがん告知前から、がん治療と並行したサポート、治療のその後をどう過ごすかを含めた支援を行う。

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